Watson & Sonsi “Real Love” 武道館の夜に生まれた必然のコラボレーション

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ラッパー・WatsonとSonsiによるダブルネームシングル「Real Love」が、2026年4月22日(水)にリリースされた。たった一つのシングルに、現在の日本語ラップシーンが持つ熱量のすべてが凝縮されているような作品だ。デビューからわずか数年でシーンを塗り替えてきた26歳のWatsonと、2025年のオーディション番組から彗星のごとく現れた21歳のSonsi──世代もバックグラウンドも異なる二人が、あの武道館の夜に繋がり、この曲へとたどり着いた。その経緯と楽曲の持つ意味を、できる限り丁寧に掘り下げていきたい。

Watsonとは何者か

2000年生まれ、徳島県小松島市出身のラッパー。等身大でユーモアあふれる独特なリリックと特徴的な声質、フロウで注目を浴び、一気にスターの座へ駆け上がる。Koshyをプロデューサーに迎えた1stアルバム「Soul Quake」を2023年12月にリリースし、翌2024年11月に2ndアルバム「Soul Quake 2」を発表した。

Watsonは東京でも大阪でもない徳島から、独自のスタイルで日本語ラップの文体そのものに影響を与え、「Watson系」という系譜を生み出し、わずか5年で武道館に到達した。その道のりは、日本語ラップにおける「地方」の意味を根本から書き換えるものだ。

そして2026年2月25日に、Soul Quakeシリーズの最終章となる3rdアルバム『Soul Quake 3』をリリース。シリーズ完結と銘打ちながら、日本武道館の単独公演「Watson BUDOKAN」をその直後の3月9日に控えていた。会場にはeyden、ralph、JUMADIBA、BIM、IO、T-Pablow、¥ellow Bucks、SEEDA、ANARCHYら日本語ラップシーンを代表するゲストが集結した。

Sonsiとは何者か

鹿児島県鹿屋市在住、2004年生まれのラッパー。ABEMAのオーディション番組「RAPSTAR 2025」でファイナリストに選ばれたことで一躍脚光を浴び、本格的に活動を開始した。

彼のラップを語るうえで欠かせないのが、95歳のおばあちゃんとの二人暮らしという境遇だ。「BBA in da house 後ろは襖」というリリックで多くのリスナーの心を掴んだ彼は、自身の持つ病気をラップの力でポジティブに面白おかしく表現するスタイルで、視聴者の涙を誘った。

きれいな言葉を使わず、むしろ汚い言葉を使って、とても美しく表現する──それがSonsiのラップの核心だ。おばあちゃんのことを「BBA」「メイド兼家主」と呼び、生まれた町を「うんこ臭い町」と表現しながら、その愛情の深さを滲ませるリリックには、言葉の力を信じ切った者だけが放てる瞬発力がある。

RAPSTAR 2025では惜しくも優勝を逃したものの、ファイナリストとして確固たる存在感を示し、シーンへの正式なデビューを果たした。

武道館という「現場」から生まれた曲

この楽曲を語るうえで、最も重要なエピソードがある。本楽曲は、Watsonの武道館公演の中で唯一のシークレットゲストとなったSonsiとの共作曲として生まれた。

超満員の観衆を前にした武道館のステージで、突然Sonsiが登場する──その瞬間の衝撃は、その場にいたファンにとって忘れがたいものだったはずだ。WatsonがSonsiをシークレットに選んだことは、単なるサプライズ演出ではない。Watsonは「上の世代に認められた若手」ではなく、「同世代・次世代のハブとして機能するアーティスト」であることを示してきた人物だ。その文脈で見れば、RAPSTAR 2025から登場した最も注目すべき新星・Sonsiをシークレットゲストに据えたことは、必然の選択と言えるだろう。

楽曲の構造と制作陣

作詞はWatson・Sonsi、作曲はKoshy・g06beatsが担当している。プロデュースは両者にとってお馴染みの存在・Koshyが手がけている。

KoshyはWatsonのSoul Quakeシリーズ全作を手がけてきた盟友であり、Sonsiとも既に接点を持つプロデューサーだ。二人のラッパーをつなぐ共通項がKoshyであったという事実は、この楽曲の自然な成立を支えている。「Real Love」という楽曲が武道館という場で初めて披露され、その後シングルとして正式リリースされるまでの流れに、この関係性が深く関わっている。

本楽曲はWatsonの最新アルバム『Soul Quake 3』の収録曲「Real Love」のリミックス作品であり、鹿児島から現れたニュースター・Sonsiが、Watsonの深い懐の中で存分に魅力を発揮したコラボレーション楽曲となっている。

『Soul Quake 3』のラストトラックのタイトルが「Real Love」であることは、アルバム全体の文脈において極めて示唆的だ。アルバムの最後を飾る楽曲が「Real Love」であり、その曲がSonsiを加えてリミックスとして再び世に放たれるという構造は、Watsonというアーティストが持つ物語への意識の高さを示している。

MVと映像表現

合わせて公開されたMVは、Watsonとも親交の深い鬼才・堀田英仁が担当。堀田ワールド炸裂の衝撃作となっている。Director of Photographyはスウェーデン出身のPetter Jensenが務めた。

堀田英仁の映像は、一筋縄ではいかない実験的な視覚言語で知られる。「Real Love」というタイトルが持つ温度感と、堀田が生み出す独特の質感がどう噛み合っているか──そこもこのMVを観る際の注目点の一つだ。

この曲が示すもの

「Real Love」は単なるコラボシングルではない。徳島から武道館まで駆け上がったWatsonと、鹿児島からRAPSTARのステージを経てシーンに飛び込んだSonsiという、二つの「地方」の物語が交差した地点に生まれた楽曲だ。

東京でも大阪でもない場所から、日本語ラップの重心が移動しつつある。その最も鮮明な証拠の一つが、この「Real Love」という2分ちょっとの楽曲の中に宿っている。Watsonが武道館で手を伸ばし、Sonsiがそれに応えた──そのシンプルな事実の重さを、この曲はそのまま音にしたような作品だ。

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