2026年4月17日、YZERRが新曲「MONEY RAIN feat. YTG」をリリースした。オフィシャルビデオも同時公開され、公開からわずか数日でSNSを中心に大きな話題を呼んでいる。タイトルの通り、金を雨のように降らせる豪快なフレックスと、地に足のついたリアルなマインドセットが同居する一曲だ。
まずYZERR(ワイザー)というアーティストについて改めて振り返っておきたい。1995年生まれ、川崎市出身。 中学時代に地元の同級生と結成した8MCヒップホップクルー「BAD HOP」のフロントマンを務め、数々のヒット曲を生み出してきた。2024年2月、HIPHOPアーティスト初となる東京ドーム公演「BAD HOP THE FINAL at TOKYO DOME」にてBAD HOPを解散。5万人を動員したその夜は日本ヒップホップ史に刻まれる一夜となり、幕を閉じた後もYZERRへの注目は衰えるどころか増すばかりだった。
解散後はアーティスト・プロデューサー・起業家として歩みを進め、2025年2月には初のソロアルバム「Dark Hero」をリリース。BAD HOP時代から培ってきた独自のスタイルをソロ作品として昇華させ、日本のヒップホップシーンにおいて引き続き先頭を走り続けている。またYZERRは国内唯一の総合ヒップホップメディア『FORCE MAGAZINE』を立ち上げ、2025年10月には横浜アリーナにて国内外のトップアーティストが集結する大型フェス「FORCE Festival 2025」を主催。ラッパーとしての枠を超え、シーン全体を引っ張るオーガナイザーとしての顔も確立しつつある。そんなYZERRが2026年に放つ最新曲「MONEY RAIN」は、彼の今の充実した姿をそのままビートに乗せたような一曲だ。
この曲でフィーチャーされているのが、YTG(ワイティージー)だ。奄美大島出身、東京在住のラッパーで、JNKMNやゆるふわギャングも所属する謎の音楽集団・JODYのメンバーでもある。譜割り通りにはいかない独特のリズム感が特徴的だ。気だるく、ささやくようなラップでありながら独特のGrooveを生み出すそのスタイルは、アンダーグラウンドシーンで多くのリスナーを魅了してきた。2023年5月には待望の1stアルバム『FAR EASTERN BAT』をリリース。YENTOWNに所属するDJ JAMが全13曲中半分以上をプロデュースし、ダークかつサイバーなサウンドで統一された作品となった。その後も精力的にリリースを続け、2024年にはTim PepperoniらとのコラボEP『730』を発表するなど、着実にキャリアを積み上げてきたラッパーだ。
「MONEY RAIN」の歌詞を読むと、まず目に飛び込んでくるのが「金を稼ぎ 全て遊び」というフックだ。これはYZERRが長年かけて体現してきた生き様そのものと言っていい。「派手目な見た目 出どころはJapan / キラキラ下げてる光ってるCuban chain / 会いに行くChinese Hanedaで飛ぶJet / 済ませるBusiness 向かっているATL」というラインには、日本を拠点にしながら世界規模で動く自分自身の姿が描かれている。ATL(アトランタ)はアメリカのヒップホップ文化の聖地ともいえる都市であり、そこへビジネスで向かうという描写は、YZERRがただのラッパーではなく実際に国際的なビジネスを展開するアーティストであることを示唆している。
「まともに生きれん俺らの運命 / 会社ならクビでも首なら重てえ」というラインは、一般的な社会の枠組みに収まらないという自覚と自負を端的に表現している。「海賊」という言葉を使ってその独自のスタンスを表現し、既存のシステムへの反骨心をユーモラスかつ力強く打ち出している。「下から上 i’m came from not」という一節もYZERRらしい。川崎のゲットーから這い上がってきたというバックグラウンドを持つ彼にとって、サクセスストーリーは単なる自慢話ではなく、実体験に根ざしたリアルなドキュメントなのだ。BAD HOPの東京ドーム公演ではステージ上でリリックをアップデートし、口座残高を10桁に更新してみせるほど、彼のサクセスは現在進行形で続いている。
YTGのバースでは、彼ならではの独特なリズムと言葉選びが炸裂する。規則的な譜割りにとらわれない変幻自在のフローは、YZERR主体のトラックに絶妙な異化効果をもたらしている。YZERRがビッグネームとして確固たる地位を持つ一方、YTGはアンダーグラウンドから丁寧にキャリアを積み上げてきた存在だ。この二人の組み合わせは、日本語ラップシーンのメインストリームとアンダーグラウンドが交差する点として非常に意義深い。YZERRがこのタイミングでYTGをフィーチャーに選んだことは、彼のシーン全体を見渡す広い視野と、実力ある才能を積極的に引き上げようとする姿勢の表れともとれる。
サウンド面においても「MONEY RAIN」は現在の日本語ラップシーンのトレンドを押さえつつ、YZERRならではの洗練さがある。重厚な低音と煌びやかな上物が組み合わさったトラックは、タイトルが示す「マネーレイン」のイメージを音で体現しているようだ。全国を回り、パーティを開き、朝6時までPlayして、スタジオに戻ってRecordingをするというライフスタイルが歌詞の中にリアルに描かれており、聴く者を有無を言わさずそのworld観に引き込む。
「MONEY RAIN feat. YTG」は単なるフレックスソングにとどまらない。川崎の底辺から這い上がり、東京ドームを埋め、今や国際的なビジネスも動かすYZERRが、アンダーグラウンドから独自の道を歩むYTGと共に「稼いだ金は全部遊びに変える」という哲学を高らかに宣言した一曲だ。日本語ラップがさらに進化していく2026年において、この曲は早くもその象徴的な存在感を放っている。YZERRの次の一手と、YTGの今後の活躍からますます目が離せない。



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