G.CUE, DJ RYOW – FACE 2 FACE feat. NANJAMAN | NEOWNパフォーマンスビデオ ――「現場」という名の聖地に捧げる一曲

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2026年、名古屋ヒップホップシーンを長年牽引し続けてきたベテランMC・G.CUEが、DJ RYOWとタッグを組み、9年ぶりとなるアルバム『斧音菊(YOKIOTOKIKU)』を2026年2月18日にリリースした。そのアルバムの核心を成す収録曲のひとつが、今回取り上げる「FACE 2 FACE feat. NANJAMAN」だ。NEOWNパフォーマンスビデオとして公開されたこの楽曲は、単なるミュージックビデオを超えた、現場の空気そのものを映像に封じ込めた作品となっている。

まず、この楽曲を生み出したアーティストたちの背景を押さえておきたい。G.CUE(ジー・キュー)は1976年8月14日生まれ、名古屋出身のヒップホップMC。1994年から名古屋の伝説的グループ「DIAMOND CREW」や「G-MENACE」「W.C.C. / G.T.P.」「PHOBIA OF THUG」などで活動し、西海岸スタイルのギャングスタ・ラップを日本に広めたパイオニアの一人だ。2009年、GANXTA CUEからG.CUEに改名し、その後もシーンの活性化を目的とした大型イベント「大九祭」の主催やアパレルブランドのプロデュースなど、音楽にとどまらない幅広い活動を展開してきた。名古屋シーンの”兄貴”として多くの後輩ラッパーたちに影響を与えてきた人物であり、その存在感は30年以上のキャリアが証明している。

プロデュースを担うDJ RYOWは、名古屋を拠点に活動するヒップホップDJ・プロデューサーで、岐阜県大垣市出身。M.O.S.A.D.率いるBALLERSの一員として本格的にキャリアをスタートさせ、現在は国内ヒップホップシーン屈指の存在として重要なポジションを担っている。25年以上のキャリアで培った確かな選曲センスとミックススキルには定評があり、国内はもとよりアメリカを含む海外でのDJプレイも幾度となく経験してきた。G.CUEが17歳の頃にバイトしていたショップ「ペンタゴン」には、AK-69が後輩として、DJ RYOWが客として通っていた。つまりこの二者の関係は30年近い歴史を持つ。名古屋という土地が育んだ長年の信頼関係が、このアルバムの根底に流れているのだ。

そしてフィーチャリングアーティストとして参加しているNANJAMAN(ナンジャマン)は、日本を代表するレゲエアーティスト。大阪府出身で、18歳の時に横浜に移り、現在は湘南在住。日本のレゲエシーンを創成期から支え、全国のサウンドマンやアーティストから今でも絶大な支持を受け、そのリリックとライブのインパクトからジャンルを越えてヒップホップ界からもリスペクトされている。1988年に初めてジャマイカに行き、本場のDeeJay Styleに影響を受けて歌い始め、以来20数年間、常にシーンの最前線に立ち続けてきた。曲中でNANJAMAN自身が「ジャマイカのDee-Jayはマイクは神の杖やと思えや」と語るように、その言霊への信仰はジャマイカ仕込みの本物だ。

本曲「FACE 2 FACE」が訴えるテーマは明快だ。「ヘッドフォンで聞いても聞こえない、YouTubeで見てても見えはしない」という書き出しが示す通り、この曲は現代のデジタル消費文化に対する真っ向からの異議申し立てである。スマホを手放せず下を向いて歩く人々、メールで「さーせん」と謝る文化、出会いも別れもモニター越しに済ませようとする時代――G.CUEはその光景を「ほんと怖くなる、大丈夫?」と率直に嘆く。

しかし、この曲は単なる説教ではない。代わりに提示されるのは、ビンのビールを注ぎ合い、愚痴をつまみに乾杯するリアルな人間関係だ。「久しぶりだな、元気してっか? ツラ見りゃ分かるぜ」という一節には、テキストでは絶対に伝わらない温度感がある。顔と顔を突き合わせた瞬間にしか生まれない絆――それこそがこの曲の核心であり、タイトル「FACE 2 FACE」の意味するところだ。

アルバムタイトルにも深い仕掛けが施されている。アルバム名『斧音菊』は「ヨキオトキク」(良き音を聴く)、リード曲「斧琴菊」は「ヨキコトキク」(良き事を聴く)と読む。「音」と「琴」の一文字違いで異なる意味を持たせた言葉遊びであり、「菊」は名古屋の市花でもある。このタイトルには052(名古屋)への愛着が込められていると読むのが自然だろう。

アルバムは全7曲収録で、プロデュースはDJ RYOW & SPACE DUST CLUB、レコーディングは鷹の目(studio NEST)、ミックス&マスタリングはL’s Story、アートディレクションはNONKEY、フォトグラフィーはTOPMANが担当している。それぞれの役割を担う人物たちが長年の絆でつながっているという事実も、この曲のテーマと見事にリンクしている。

「FACE 2 FACE」の最後でG.CUEとNANJAMANはこう締めくくる。「052 & 045 G.CUE LONGSIDE NANJAMAN」と。名古屋の市外局番052と、横浜の045――ジャンルも拠点も異なる二人のMCが、現場という一点で交差する。HIPHOPとREGGAEが、リアルを共有する者同士として拳を合わせた瞬間だ。

『斧音菊』は東海エリアのヒップホップシーンを牽引するG.CUEとDJ RYOW & SPACE DUST CLUBによるプロジェクトとして、重厚なビート、揺るぎない言葉、美学が交差する全7曲を収録している。CDは2026年6月3日に全国流通が解禁される予定だ。

スクリーン越しに何もかもが完結するように見える現代において、「それでも現場に来い」と言い切れるアーティストがいる。その声は確かに、画面の外に轟かす。

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