2026年4月15日、新鋭R&Bシンガー・Nephew(ネフュー)がニューシングル「Big City feat. AKLO & WILYWNKA(Prod. JIGG)」をToy’s Factoryよりリリースした。本作は来月リリース予定の1stフルアルバムからの先行曲にしてリードトラックであり、客演にラッパーのAKLOとWILYWNKAを迎え、プロデュースはJIGGが担当している。上京、新生活、そして挑戦という普遍的なテーマを現代のヒップホップソウルに落とし込んだこの曲は、今の日本の音楽シーンにおいて際立って重要な一枚と言える。
まず、Nephew(ネフュー)というアーティストについて知っておきたい。ちょっと鼻にかかった清涼感あふれるハイトーンな歌声と、次世代メロディ・メーカーの誕生を予感させるセンス溢れる美メロがシグネチャーなR&Bシンガーだ。ブルックリンにある伝説的なヒップホップ・クルー「Zulu Nation」のJazzy Jayが運営するミュージックハウスの一部屋でルームシェア生活を送っている。そのミュージックハウスは、Jazzy Jayの息子であるPhony PPLのメンバーMaffYuu Byasら、NYCでの音楽活動を志す若手のラッパー、DJ、シンガー達が共同生活し切磋琢磨する音楽版「トキワ荘」となっており、Nephewの音楽スタイルのベースとなっている。
この「ミュージックハウス」の主・DJ Jazzy Jayという人物がまた凄い。70年代後半にAfrika Bambaataaのもとでキャリアをスタートさせ、Zulu Nationのオリジナルメンバーでもある。1984年頃にはRick Rubinと出会い、後にDef Jam Recordingsとなるレーベルの礎を築くことに貢献した人物でもあり、Diamond D、Fat Joe、Brand Nubian、A Tribe Called Questといったレジェンドたちを育てたスタジオを主宰している。そんなヒップホップの生きる歴史の懐に飛び込んでいるNephewが、どれほど本物の音楽環境で研磨されてきたか、想像するだけで鳥肌が立つ。
2023年にPhony PPLのMaffYuu Byasがプロデュースした1stシングル「nYc」でデビュー後、2023年12月にはMixTape『RNB ERA』をサプライズリリース。そして2024年には、WILYWNKAのアルバム「90’s Baby」収録曲「Gorgeous feat. ¥ellow Bucks & Nephew」に客演参加し、シーンで注目を集めた。つまり今回の「Big City」は、NephewとWILYWNKAにとって二度目の共演となるのだ。前作での相性の良さがこのコラボを再び引き寄せたと考えると、両者の間に確かな音楽的共鳴があることが伝わってくる。
客演のAKLO(アクロ)は、日本語ラップシーンを長年にわたって牽引してきたベテランだ。東京生まれ、メキシコシティー育ち、日本人の母とメキシコ人の父を持つハーフ・メキシカンとして、2012年にリリースしたデビュー作「THE PACKAGE」はiTunes総合チャートで初登場1位を獲得。その年のiTunes「ベスト・ニュー・アーティスト」に選出され、シングル曲「Red Pill」がMTV VMAJにノミネートされるなど、一躍注目アーティストとなった。英語・日本語・スペイン語を操るトリリンガルのMCとして、そのフロウと言語感覚はシーンで唯一無二の存在感を放ち続けている。ソロ活動のみならず、アニメ「呪術廻戦」のエンディングテーマ「LOST IN PARADISE」にも参加するなど、幅広い層へのリーチを持つAKLOが、Nephewというニューカマーのリードトラックに名を連ねていることは、この曲の持つポテンシャルを証明していると言えるだろう。
もう一人の客演であるWILYWNKA(ウィリーウォンカ)は、1997年生まれ、大阪出身のヒップホップ・アーティストだ。リリックの完成度やフローなど、その卓越したスキルが日本のヒップホップ界で話題を呼び、シーンを代表するラッパーやプロデューサーから注目されている。2018年に「1% ONEPERCENT」とソロ契約を結び、ソロデビューアルバム「SACULA」を発表。変態紳士クラブのメンバーとしても活動し、2020年にリリースしたシングル「YOKAZE」が3億回再生を突破する大ヒットとなった。2024年5月には4thアルバム「90’s Baby」をリリースし、全国5都市でのZEPPツアーも成功させた。ラッパーとしての実力はもちろん、Levi’s、adidas、DIESELなどのブランドのモデルとしても活動する次世代アイコンだ。その独自のグルーヴ感と都市的なリリックは、「Big City」というテーマと見事にシンクロしている。
プロデュースを担当したJIGGもまた、日本のヒップホップシーンにおいては欠かせない存在だ。手がけた楽曲に織り込んだプロデューサータグ「JIGGのビートが聴きたいな」でおなじみのプロデューサーで、15歳の時に映画『JUICE』を通じてヒップホップ・R&Bと出会い、2005年から音楽制作を始めた。アンダーグラウンドからメインストリームまで多数の作品を手掛けており、クラブの現場で体得したノリと鳴り、海外シーンのトレンドを日本においてローカライズするセンスとスキルを注ぎ込んだ楽曲は、幅広いリスナーを魅了する普遍的な輝きを帯びている。KOHHやBAD HOP、AKLO、ちゃんみな、JP THE WAVY、HANAなど、名だたるアーティストのビートを手がけてきたJIGGが、今回Nephewというニューフェイスの重要曲に選ばれたことは、Nephewの音楽的なビジョンの確かさを示している。
「Big City」という曲のテーマは、Nephew、AKLO、WILYWNKAの3者が、それぞれの視点から都市でサバイブするリアリティを描き出し、上京・新生活・挑戦という新たな一歩を踏み出すすべての人に向けたメッセージを内包した、エモーショナルなアンセムに仕上がっている。大都市という場所は夢を抱えて飛び込む者に対して、眩しく輝きながらも容赦なく牙を剥く。そのリアリティをNephewの浮遊感あふれる歌声と、AKLOの洗練されたリリック、WILYWNKAのグルーヴ溢れるラップが三位一体で表現しているのだ。
現代的にアップデートされた「ヒップホップソウル」というサウンドアプローチも注目に値する。90年代に花開いたヒップホップソウル──メアリー・J・ブライジやTLCが体現したあの豊かな感触を、JIGGのプロデュースで令和の感覚に翻訳したこのサウンドは、R&Bとヒップホップのリスナー双方を引き込む吸引力がある。Nephewのハイトーンボイスはそのサウンドの上で最大限に映え、まるでニューヨークの夜の摩天楼を思わせる景色を音で描き出す。
NYのブルックリンで本物のヒップホップの薫陶を受けながら育ったNephewが、日本のシーンで確固たる地位を持つAKLOとWILYWNKA、そしてJIGGという最強の布陣を引き連れて放つ1stアルバムの先行曲。この曲は単なるシングルリリースにとどまらず、Nephewというアーティストの「本格始動」を告げる狼煙だ。5月リリース予定の1stフルアルバムへの期待は、この「Big City」を聴いた後では抑えようがない。



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