東京アンダーグラウンドHIPHOPシーンを長年支えてきたMCが、2025年に放った渾身の一撃。2025年リリースのアルバム『Return of the Boom Bap』に収録されたタイトルトラック「Return of the Boom Bap」は、DJ PATRAのプロダクションに乗ったMEGA-Gの宣言であり、今この時代に「本物のブーム・バップ」を鳴らし続けることへの覚悟が込められた曲だ。
MEGA-Gという男
MEGA-G(メガジー、1981年5月14日生まれ)は、東京都大田区出身の日本語ラップMC。MICROPHONE PAGERで日本語ラップのファンになりラッパーを志し、その後ZEEBRA率いるUBGなどと関わりながら下積みをこなしてきた。
2004年にはJUSWANNAを結成。以来、ソロとグループを行き来しながら東京のアンダーグラウンドHIPHOPシーンに根を張り続けてきた。自らを「ゲスナー城南支部」「絶滅危惧種」と称し、TOKYO UNDERGROUND HIPHOPをその身で体現している。 X
彼のキャリアは単なるラップだけに留まらない。日本のヒップホップアーティストとしては初めてファンド方式で制作資金を募りアルバムを完成させたり、日本人MCとして初めてロイス・ダ・ファイブ・ナインとコラボするなど、常に独自の道を切り開いてきた。そのスタンスは一貫している——商業的な成功よりも、ヒップホップの本質に対する誠実さを優先することだ。
ヒップホップを深く愛し、ヒップホップカルチャーの現状に対して確固とした意見と優れた批判精神を持つ1981年生まれのラッパー。——それがMEGA-Gの本質だ。
アルバム『Return of the Boom Bap』
2025年リリースのこのアルバムは全10曲、約36分。プロデューサー陣が豪華だ。DJ PATRA、I-DeA、DJ RUFF、DJ BAKU、DJ SEIJI、BOMB WALKER、DJ SCRATCH NICE、CUT MASTAA KATOという顔ぶれが並ぶ。日本のアンダーグラウンドHIPHOPを知る者なら、このラインナップがどれほどのものかはすぐにわかるはずだ。
タイトルはKRS-Oneが1993年にリリースしたソロデビュー作と同名だ。KRS-OneのそのアルバムはDJ Premierらとともに制作された、ブーム・バップ復権の象徴的な作品であり、The Source誌の100 Best Rap Albumsにも選出された歴史的名盤だ。同じ名を冠することで、MEGA-GはKRS-Oneへのリスペクトと、今この時代にも本物のHIPHOPを鳴らし続けるという宣誓を重ね合わせた。
DJ PATRAというビートメイカー
このタイトル曲のビートを手掛けたのが岐阜を拠点に活動するDJでビートメイカーのDJ PATRAだ。
DJ PATRAはMEGA-Gのアルバムでトラック3「Return of the Boom Bap」とトラック5「Back to the grill freestyle」の2曲を提供している。タイトルやジャケットからも分かるようにヒップホップ愛に満ちた1枚だと絶賛している。
DJ PATRAはビートメイカーとしてだけでなく、口喧嘩祭×戦極といった日本を代表するMCバトルイベントのバトルDJとしても活躍しており、DJ CUTMASTAA KATOとともにその場を仕切る存在として知られている。口喧嘩祭で流れるPATRAのビートはすべてオリジナルだ。バトルの現場で鍛え上げられたビートは、ビートの強度と凄みが違う。MCが乗ることを前提に作られたビートとはそういうものだ。
曲について
リリックを見ると、この曲が単なる懐古趣味ではないことがよくわかる。「質より量ならKidsより 大人のDopeは高く付く見積もり」「Fakeには席はねえぞ / このChainとSkillメッキじゃねえぞ」「このGameはやっぱ適者生存 / It’s the return of the real boombap / 引っ提げ2、3歩先 / 進んで黙らす聞かん坊達 / PATRA、MEGA-G / We run on the streetz」——これはフリースタイルでも自慢でもなく、長年の経験と信念から出てきた言葉だ。
「大人のDopeは高く付く」という一節が特に刺さる。時間をかけて積み上げてきたものの重さ、それを軽々と語ることへの拒絶が、この一行に凝縮されている。
MVはZAN-ZOHが監督を務め、映像的にも作品の世界観を支えている。
なぜ今、これが必要か
日本語ラップのシーンがかつてないほど多様化し、ポップになり、可視化されている今だからこそ、MEGA-GとDJ PATRAがやっていることの意味は大きい。ブーム・バップは「古いもの」として消費されることも多いが、この曲にあるのはそういう懐かしさではない。それは今もこのサウンドを信じている人間の、静かで確固たる主張だ。
「Return of the Boom Bap」——帰ってきたのは音楽スタイルだけじゃない。本物がここにいる、という宣言だ。



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