OZROSAURUS「2years」- ハマの大怪獣が娘に捧げる愛の結晶
はじめに – レジェンドの新たな挑戦
2023年6月4日、日本のヒップホップシーンに君臨し続ける”ハマの大怪獣”ことOZROSAURUSが、新曲「2years」をリリースした。この楽曲は、1996年の結成以来27年間にわたって日本のヒップホップシーンを牽引してきたOZROSAURUSにとって、新たな境地を示す重要な作品となっている。タイトルが示すように、2歳になった娘への愛を歌ったこの楽曲は、MACCHOの人生における新たな章の始まりを象徴している。
楽曲概要
基本情報
- リリース日: 2023年6月4日(日)
- 形態: デジタル配信シングル
- レーベル: All My Homies(ZORN主宰)
- 収録時間: 3分20秒
- サウンドプロデュース: GUNHEAD(メンバー)
- 作詞: MACCHO
- ミックス&マスタリング: Hayabusa
スタッフクレジット
- ミュージックビデオ監督: 山田健人(映像作家)
- 撮影監督: 川上智之
- アートワーク: 川上智之(前作「Legend」に続いて担当)
楽曲の核心 – 父親MACCHOの心境
「2years」は、OZROSAURUSのMCであるMACCHOが、2歳になった娘に向けて書き下ろした楽曲である。これまで横浜のストリートから生まれた力強いメッセージや、社会への鋭い洞察を歌詞に込めてきたMACCHOが、父親としての愛情を率直に表現した作品として注目を集めている。
この楽曲について、音楽メディア「スラムフッドスター」では「ラッパーだからこそ伝えられる言葉がある」として、2歳になる娘に捧げられた作品であることが言及されている。MACCHOにとって娘の存在は、これまでの人生観や価値観に新たな次元をもたらしたに違いない。
OZROSAURUS の現在の構成とGUNHEADの役割
現在のOZROSAURUSは、2015年から6人組のバンド編成となっており、各メンバーが異なるバンドから集結した豪華な布陣となっている。「2years」でサウンドプロデュースを担当したGUNHEADは、HABANERO POSSEのトラックメイカーとして知られ、2015年にOZROSAURUSに加入した重要なメンバーの一人である。
現在のメンバー構成
- MACCHO: MC(1978年4月8日生まれ)
- DJ SN-Z: DJ
- 武史: ベース(山嵐)
- Bunta: ドラムス(TOTALFAT)
- YD: ギター(Crystal Lake)
- GUNHEAD: トラックメイク(HABANERO POSSE)
この多様なバックグラウンドを持つメンバーたちが集まることで、従来のヒップホップユニットとは一線を画す音楽性を実現している。GUNHEADによるプロデュースワークは、MACCHOの内省的な歌詞に完璧にマッチしたサウンドを提供している。
ミュージックビデオの芸術性 – 山田健人の演出
「2years」のミュージックビデオは、日本を代表する映像作家の一人である山田健人が監督を務めた。山田健人は、Suchmos、宇多田ヒカル、yahyel、菅田将暉など数多くのトップアーティストのミュージックビデオを手がけ、その革新的な映像表現で高い評価を得ている映像作家である。
山田健人の経歴
- 本名: 山田健人(やまだ けんと)
- 生年月日: 1992年4月23日
- 通称: dutch_tokyo(ダッチ トーキョー)
- 学歴: 慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大学院メディアデザイン研究科中退
- 特徴: 独学でプログラミングとモーショングラフィックを習得
山田健人の映像は、楽曲の持つ感情的な深みを視覚的に表現することに長けており、「2years」においてもMACCHOの父親としての愛情を繊細かつ力強く描き出している。撮影監督を川上智之が務めることで、映像のクオリティはさらに向上している。
アートワークの統一性 – 川上智之の世界観
「2years」のアートワークは、前作「Legend」に続いて写真家・撮影監督の川上智之が手掛けている。この継続性により、OZROSAURUSの最新期の作品群に一貫した視覚的アイデンティティが生まれている。川上智之は撮影監督としてミュージックビデオにも参加しており、楽曲の世界観を多角的に表現する重要な役割を果たしている。
音楽的進化 – バンドサウンドとの融合
2015年にバンド編成となって以降、OZROSAURUSの音楽性は大きく発展している。従来のヒップホップサウンドにロック、メタル、レゲエなどの要素が融合され、より多層的で豊かな音楽表現が可能になった。
「2years」においても、GUNHEADのプロデュースによってヒップホップの基本構造を保ちながら、バンドメンバーたちの楽器演奏が加わることで、従来のラップソングとは異なる温かみのあるサウンドが実現されている。
現代の父親ラッパーとしての新境地
日本のヒップホップシーンにおいて、父親としての体験を歌った楽曲は決して多くない。MACCHOのようなベテランラッパーが、自身の父親としての体験を率直に歌うことは、日本のヒップホップシーンに新たな表現の可能性を提示している。
「2years」は、厳しいストリートの現実を歌ってきたラッパーが、家庭という最も身近で大切な場所での体験を歌うことで、ヒップホップの表現領域を拡張した作品として評価できる。これは、MACCHOの人間的な成長と、アーティストとしての新たな挑戦を示している。
ZORNとAll My Homiesレーベルとの関係
「2years」は、ZORNが主宰するレーベル「All My Homies」からリリースされている。このレーベルとの関係は、OZROSAURUSにとって新たな創作環境を提供している。ZORNとMACCHOは長年にわたって日本のヒップホップシーンで活動しており、両者の関係は単なるビジネスパートナーシップを超えた深いリスペクトに基づいている。
ZORNが主宰するレーベルからのリリースにより、OZROSAURUSは従来とは異なる制作環境とプロモーション戦略を得ることができ、「2years」のような内省的な楽曲をより適切な形で世に送り出すことが可能になった。
楽曲の技術的側面
プロダクションの特徴 「2years」のサウンドプロダクションは、GUNHEADの手によるものだが、ミックスとマスタリングはHayabusaが担当している。この組み合わせにより、楽曲全体に統一感のあるサウンドが実現されている。
構成とアレンジメント 楽曲の長さは3分20秒と、ラップソングとしては標準的な長さだが、その中に父親としての複雑な感情が巧妙に織り込まれている。バンド編成のメンバーが参加することで、従来のヒップホップトラックとは異なる有機的なサウンドが生まれている。
日本のヒップホップシーンへの影響
「2years」のようなパーソナルで家族愛を歌った楽曲は、日本のヒップホップシーンに新たな表現の方向性を示している。従来のヒップホップが持つ「硬派」なイメージに、より人間的で親しみやすい側面を加えることで、ヒップホップというジャンルの幅を広げる役割を果たしている。
特に、MACCHOのような長年シーンを牽引してきたベテランラッパーがこのような楽曲を発表することで、若い世代のラッパーたちにも新たなインスピレーションを提供している可能性が高い。
メディアとファンからの反響
「2years」のリリースに際して、各音楽メディアからは「ラッパーだからこそ伝えられる言葉がある」として、MACCHOの新たな境地を評価する声が多く聞かれた。また、長年のファンからは、MACCHOの人間的な成長を感じられる楽曲として温かく受け入れられている。
ソーシャルメディア上でも、多くのヒップホップファンが「2years」に対してポジティブな反応を示しており、特に同世代の父親たちからの共感が多く寄せられている。
OZROSAURUSの現在地点
「2years」のリリースは、OZROSAURUSが現在どのような地点に立っているかを象徴的に示している。1996年の結成から27年が経過し、メンバーの人生も大きく変化している。MACCHOの父親としての体験は、グループ全体の音楽性にも新たな深みをもたらしている。
2023年にリリースされた10年ぶりのアルバム『NOT LEGEND』に収録された「2years」は、OZROSAURUSが単なる過去の栄光に頼るのではなく、現在の自分たちの等身大の姿を音楽に込めていることを証明している。
楽曲の普遍性と時代性
「2years」が持つメッセージは、特定の世代や環境を超えた普遍性を持っている。父親としての愛情、家族への思い、そして子どもの成長への驚きと喜びは、多くの人々が共感できる感情である。
同時に、現代の日本社会における子育ての現実や、働く父親の心境なども含まれており、2023年という時代を反映した楽曲でもある。MACCHOが45歳で経験する父親業は、同世代の多くの男性にとって身近な体験として響くだろう。
音楽業界における意義
日本の音楽業界において、ベテランアーティストが新たな人生の局面を音楽に反映させることの重要性は高い。「2years」は、長年活動を続けるアーティストが如何にして自己革新を図り、新たな表現領域を開拓できるかを示す模範的な作品となっている。
特に、ヒップホップというジャンルにおいて、個人的な体験をどのように普遍的なメッセージに昇華させるかという課題に対する一つの回答として、「2years」は重要な意義を持っている。
結論
OZROSAURUS の「2years」は、日本のヒップホップシーンにおける重要な作品の一つである。27年間のキャリアを持つMACCHOが、父親としての新たな体験を率直に歌った本楽曲は、ヒップホップというジャンルの表現領域を拡張し、より多くの人々に共感されるメッセージを提供している。
山田健人による映像作品、GUNHEADによるサウンドプロデュース、そして川上智之によるアートワークなど、すべての要素が高いクオリティで統合され、完成度の高い作品となっている。
「2years」は、OZROSAURUSの過去の栄光に新たな輝きを加えると同時に、彼らの未来への可能性を示唆する重要な楽曲として、長く記憶されるに違いない。ハマの大怪獣が父親として歌う愛の歌は、日本のヒップホップシーンに新たな次元を開いた記念すべき作品なのである。
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