Awich – Wax On Wax Off -Japan Remix- feat. R-指定, NENE, 鎮座DOPENESS & C.O.S.A. (Prod. RZA) (360 RA)

JAPANESE

はじめに

2026年1月、日本のヒップホップシーンに歴史的な楽曲が登場した。Awichによる「Wax On Wax Off -Japan Remix- feat. R-指定, NENE, 鎮座DOPENESS & C.O.S.A.」は、Wu-Tang ClanのRZA全面プロデュースによるアルバム『Okinawan Wuman』の最終トラックとして収録された、日本語ラップの新たなマイルストーンである。

楽曲の背景

アルバム『Okinawan Wuman』について

『Okinawan Wuman』は、2025年11月21日にリリースされたAwichの5thアルバムで、伝説的プロデューサーRZAが日本人ラッパーのアルバムを全編プロデュースした史上初の作品となった。全13曲で構成され、Joey Bada$$、A$AP Ferg、Lupe Fiasco、Westside Gunnといった豪華なゲストが参加している。

Awichは本作について「RZAという師と共に、沖縄の魂とヒップホップの精神を結び、世界へ向かう私の旅路を形にできたことをラッパーとして誇りに思います」とコメント。沖縄という文化の交差点で育った自身のアイデンティティと、アメリカのヒップホップへの敬意が融合した作品となっている。

オリジナル版からJapan Remixへ

「Wax On Wax Off」のオリジナルバージョンは、A$AP FergとLupe Fiascoをフィーチャーした楽曲で、梶芽衣子の「ジーンズぶるうす」をサンプリングしたビートが印象的な一曲だった。映画『ベスト・キッド』へのオマージュを含みながら、自己鍛錬と成長をテーマにした力強いメッセージが込められている。

そしてアルバムの最終トラックとして制作されたのが、このJapan Remixである。Awichは海外のスターを招くのではなく、日本のヒップホップシーンを代表する実力派アーティストたちと共にこの楽曲を再構築することを選んだ。

参加アーティスト紹介

R-指定(Creepy Nuts)

ヒップホップユニットCreepy NutsのMCとして知られるR-指定は、日本語ラップシーンにおけるリリック・技術の最高峰として知られる。フリースタイルバトルでの圧倒的な実績と、巧みな言葉遊びと深い洞察を兼ね備えたスタイルで、現在の日本のヒップホップシーンを牽引している。

NENE(ゆるふわギャング)

ゆるふわギャングのメンバーであるNENEは、独特なフロウと存在感で注目を集めるラッパー。新世代のエネルギーと個性を体現する彼女の参加は、楽曲に多様性と現代性をもたらしている。

鎮座DOPENESS

独特なフローとカルト的な人気を誇る鎮座DOPENESSは、日本のアンダーグラウンド・ヒップホップシーンにおける重要な存在。実験的なアプローチと深い音楽性で知られ、この楽曲に独自の色彩を加えている。

C.O.S.A.

愛知県知立市出身のラッパーC.O.S.A.は、確かなスキルと個性的なスタイルで支持を集めるアーティスト。地方シーンから全国へと活躍の場を広げる彼の参加は、日本全国のヒップホップシーンの多様性を象徴している。

楽曲の特徴

RZAのプロダクション

Wu-Tang Clanの音楽的中核を担ってきたRZAのプロダクションは、重厚なブームバップサウンドと東洋的な美学の融合が特徴。彼が長年追求してきた武術映画や東洋哲学への敬意が、沖縄をルーツに持つAwichとの共同作業において完璧に結実している。

「自己鍛錬」というテーマ

各アーティストが自身の「美学」や「鍛錬」をリアリティのある言葉で描き出しているのが本楽曲の核心だ。映画『ベスト・キッド』で印象的だった「ワックス・オン、ワックス・オフ」という反復動作が武術の基礎を築くように、それぞれのアーティストが積み重ねてきた努力と成長の物語が交差する。

ミュージックビデオ

監督は堀田英仁が担当し、オリジナル版に引き続き映像を手掛けている。Awichを含む出演者それぞれのリリックやキャラクターに呼応する形で、自己鍛錬をテーマにした映像表現が展開される。

特筆すべきは、日本の映画監督・黒澤明のリズミカルなストーリーテリングへのオマージュが感じられる演出だ。古典的な日本映画の美学と現代のヒップホップ文化が交差する映像は、楽曲のメッセージを視覚的に補強している。

さらに、ミュージックビデオのエンドクレジット後には、古い武術映画のように、RZAとAwichが次回作のヒントを落とすシーンが用意されているという粋な演出も施されている。

360 Reality Audio版について

本楽曲は、通常のステレオ版に加えて「360 Reality Audio(360 RA)」バージョンでもリリースされている。

360 Reality Audioとは

360 Reality Audioは、ソニーが開発した立体音響技術で、MPEG-H 3D Audioをベースとしている。従来のステレオやサラウンドとは異なり、音一つひとつに位置情報を付加して球状の360度空間に配置する「オブジェクトベース」の技術を採用している。

通常のステレオ再生では音が頭の中で鳴っているように感じられるのに対し、360 Reality Audioではヘッドホンで聴いても頭の外から立体的に音が聴こえる「頭外定位」を実現。まるでライブ会場やスタジオの中心にいるかのような没入感を体験できる。

本楽曲における360 RAの効果

複数のラッパーがマイクリレーを繰り広げる本楽曲において、360 Reality Audioは各アーティストの声を立体的な空間に配置することで、それぞれの個性とメッセージをより明確に際立たせる。RZAの重厚なプロダクションと各楽器の配置も、全天球の音場の中で臨場感豊かに再現される。

対応する音楽ストリーミングサービス(Amazon Music、Deezer、TIDALなど)と、スマートフォン、そして手持ちのヘッドホンがあれば、誰でもこの革新的な音響体験を楽しむことができる。

日本のヒップホップシーンにおける意義

グローバルとローカルの架け橋

Awichがこのリミックスで体現したのは、グローバルな成功を収めながらも、自身のルーツと日本のシーンへの深い愛情を忘れない姿勢だ。海外のメガスターではなく、日本のトップMCたちを招いたことは、日本語ラップの価値を世界に示す重要な選択だった。

世代とスタイルの融合

R-指定、NENE、鎮座DOPENESS、C.O.S.A.という異なる世代とスタイルを持つアーティストたちが一つの楽曲で共演することで、日本のヒップホップシーンの多様性と奥深さが鮮明に示された。それぞれが独自のアプローチで「鍛錬」というテーマに向き合い、自身の美学を表現している。

NYブームバップと日本語ラップの完璧な融合

RZAが作り上げたNYの伝統的なブームバップサウンドと、日本語ラップの多彩な表現力が見事に融合した本作は、文化的境界を超えたヒップホップの普遍性を証明している。異なる言語、異なる文化背景を持ちながらも、ヒップホップという共通言語を通じて一つの作品を創り上げることができるという事実は、音楽の持つ力を改めて示している。

まとめ

「Wax On Wax Off -Japan Remix-」は、2026年の日本のヒップホップシーンにおける最重要楽曲の一つと言えるだろう。RZAという伝説的プロデューサーの手腕、Awichのビジョン、そして日本を代表するラッパー陣の実力が結実した本作は、日本のヒップホップが世界基準のクオリティと独自性を兼ね備えていることを鮮やかに示した。

新年の幕開けにふさわしい、自己鍛錬と成長へのメッセージを込めたこの楽曲は、リスナーに「ワックス・オン、ワックス・オフ」の精神を思い起こさせる。基礎の反復、日々の積み重ね、そして決して諦めない姿勢。それこそが、アーティストとしての、そして人としての成長への道なのだ。

360 Reality Audioバージョンで体験する立体音響も含め、この楽曲は技術的にも芸術的にも、2026年を代表する作品として記憶されるだろう。

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