はじめに
2023年11月6日にリリースされた「STICKY ICKY」は、日本のヒップホップシーンを代表する3人のベテランラッパー、GOMA.、BES、MEGA-Gによる追悼アンセムです。
この楽曲は、2021年1月に自死により亡くなった伝説的ラッパーSTICKY(SCARS)への鎮魂歌であり、同時にCBDブランド「Dr. GREEN LABS」の新商品発売を記念した作品でもあります。
今なきフッド・スターへの想いを込めた、魂のスモーク・アンセムを徹底解説します。
楽曲の意義と背景
STICKYへの追悼
この楽曲の核心は、今は亡き川崎が産んだフッド・スター、SCARSの主要メンバーだったSTICKYへの追悼です。
**GOMA.**は《ミスターハスラー いつかまたな 夕陽が沁みるぜ終わりなき道》とSTICKYの不朽の名作「終わりなき道」をリリックに落とし込みました。
BESは《忘れねぇ満期で咥えたブラント 静岡 東京 川崎のジョイント》と、今回のメンツとのセッションをダブル・ミーニングで表現しています。
そしてMEGA-Gは《忘れ形見置き旅立たれ 川崎に降り注ぐ涙雨》とヴァースの頭からSTICKYと近しい存在であったことをラップしています。
Dr. GREEN LABSとの関わり
CBDトップセラーのドメスティック・ブランド「Dr. GREEN LABS」が立ち上げたレーベル「GREEN LABS RECORDS」からの最新リリースとなる今作。
医療大麻薬局という次世代のジャンルへの挑戦を試みる同ブランドが、2023年秋より展開するオリジナル品種「STICKY ICKY」の発売記念を兼ねた作品でもあります。
STICKY(スティッキー)- 追悼されるレジェンド
プロフィール
- 出身地:神奈川県川崎市
- 所属:SCARS
SCARSでの活動
STICKYは、A-THUG、SEEDA、BESらが名を連ねる伝説的グループSCARSの主要メンバーでした。
リーダーのA-THUGとは幼稚園からの幼馴染であり、川崎サウスサイドを拠点とするグループの中核を担っていました。
SCARSは日本で初めて「ハスリングラップ」を始めたグループといわれており、ストリートのリアルを赤裸々に描写する楽曲で2000年代中期のシーンに衝撃を与えました。
2006年の1stアルバム『THE ALBUM』は音楽雑誌「blast」の『Blast Award 2006』で2位という評価を得た名盤です。
STICKYの音楽性
STICKYの最大の特徴は、他のメンバーとは異なる「弱さ」の表現方法にありました。
ラッパーといえばマッチョイズムで、イケイケドンドンの不良的なアティチュードが主流ですが、STICKYは違いました。メンバーの中でも一際クールに冷めた視点で、淡々と、世の中にツバを吐くように言葉をスピットするスタイルが多くのリスナーの心を打ちました。
代表曲「終わりなき道」では、塀の中で自分と向き合い、ペンを取ってラップを始めた経緯や、日々の生活に追われながらも一歩ずつ前進していく姿が描かれています。
苦悩を抱えながらも光を見据える彼のリリックは、同じように苦しむ多くのリスナーに勇気を与えました。
逝去と追悼
2010年に大麻取締法違反で逮捕されるなど、波乱に満ちた人生を送ったSTICKY。
2021年1月13日、41歳という若さでこの世を去りました。
訃報に際し、メンバーのSEEDAは「シャイで男気がある 俺のHomie」、A-THUGは「一緒にいる時は、誰よりも気を使ってくれたよな」、同郷・川崎のラッパーFUNIは「君のお父さんは宇宙一のラッパーだった」と追悼のメッセージを送っています。
STICKYは、ラップの見た目や雰囲気とは異なり、実は面倒見が良く、プライベートでも付き合いのあった友人たちから愛された人物でした。
楽曲の魅力
3人のベテランが紡ぐ追悼の言葉
静岡のGOMA.、東京のBES、そしてMEGA-Gという、それぞれ異なる地域とスタイルを持つ3人のベテランラッパーが集結。
STICKYの作品を数々手がけてきたI-DeAがプロデュースを担当することで、STICKYへの追悼という共通のテーマが見事に昇華されています。
I-DeAのプロダクション
I-DeAは、STICKYの作品を数多く手がけてきたプロデューサーです。SCARSの名盤『THE ALBUM』や、STICKYのソロアルバム『LOYALTY CHECK』など、STICKYの音楽キャリアに深く関わってきました。
今回の「STICKY ICKY」でも、I-DeAならではの重厚なトラックメイキングが光ります。
ダブル・ミーニングの巧みさ
特にBESのバース《忘れねぇ満期で咥えたブラント 静岡 東京 川崎のジョイント》は、「ジョイント」という言葉に「大麻の巻きタバコ」と「共演・セッション」という二つの意味を込めたダブル・ミーニングの妙技です。
静岡(GOMA.)、東京(BES、MEGA-G)、川崎(STICKY)という三つの地域をつなぐ今回のコラボレーションを見事に表現しています。
ミュージックビデオの世界観
MVは、Keigo Mochizukiが監督を務めました。
3人のラッパーが、STICKYとの思い出や彼の音楽への敬意を込めてラップする姿が描かれています。
まとめ
「STICKY ICKY」は、単なる追悼曲を超えた、日本のヒップホップカルチャーの重要な一曲です。
今は亡きSTICKYへの想いを込めて、GOMA.、BES、MEGA-Gという異なるバックグラウンドを持つ3人のベテランラッパーが集結。そしてSTICKYと深い関わりのあったI-DeAがプロデュースを担当することで、STICKYの精神が見事に受け継がれています。
《ミスターハスラー いつかまたな 夕陽が沁みるぜ終わりなき道》
STICKYが歩んだ「終わりなき道」は、彼の音楽と共に、これからも多くの人々の心の中で生き続けるでしょう。
そして、弱さを抱えながらも前を向いて生きていくというSTICKYのメッセージは、今もなお多くのリスナーに勇気を与え続けています。
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