はじめに
2025年1月10日にリリースされた「HOME」は、Dezzy Hollowをフィーチャーしたアーティストとして、ベイエリアとロサンゼルスのヒップホップ界の重鎮たちが集結した注目の一曲です。この楽曲は、西海岸ヒップホップの伝統を現代に継承する象徴的なコラボレーション作品として話題となっています。
楽曲詳細
楽曲名: HOME
アーティスト: Dezzy Hollow feat. Keak Da Sneak, Joe Moses, G Perico
リリース日: 2025年1月10日
プロデューサー: PRODBYKAYZ
ミックス・マスタリング: Jrolz
楽曲時間: 5分25秒
アルバム: 「Oceanside」から収録
アーティスト紹介
Dezzy Hollow(メインアーティスト)
1993年1月17日生まれ(本名:Andrew Earl Vandereb)のDezzy Hollowは、カリフォルニア州オーシャンサイド出身のメキシコ系アメリカ人ラッパーです。The Gap BandやParliament Funkadelicなど60年代・70年代のファンクアクトに影響を受け、2008年にオーシャンサイドで音楽制作を始めました。
彼の代表作には「Nothing Easy」「O.E.」「EBT Boi」などがあり、「Beyond Reach」(2016年)や「Stay Current」(2017年)などのフルレングス作品をリリースしています。2017年の楽曲「EBT Boi」は340万回再生を記録し、貧困をテーマにしながらも希望のメッセージを込めた作品として注目されました。
Keak Da Sneak(ベイエリアの伝説)
1977年10月21日生まれ(本名:Charles Kente Williams)のKeak Da Sneakは、オークランド出身のラッパーで、1994年に「hyphy」という用語を作り出したことで知られています。彼は3X Krazyのメンバーとして1995年にデビューし、1997年のアルバム「Stackin’ Chips」で全米的な注目を集めました。
2005年の「Super Hyphy」でBillboard Top 40 Rhythmic airplay chartにランクインし、E-40との「Tell Me When To Go」での客演で全国的な知名度を獲得しました。San Jose Mercuryから「ベイエリアのヒップホップの声」と評されるなど、その影響力は計り知れません。
G Perico(ロサンゼルスの新星)
本名Jeremy Nashの G Pericoは、1988年4月3日生まれのサウスセントラル・ロサンゼルス出身のラッパーです。ストリートライフから音楽に転身した彼は、ギャングライフに関わっていた若い頃の経験を糧に、現実的でありながら映画的な物語を音楽で紡ぎ出します。
2016年の突破作「Shit Don’t Stop」で一躍注目を集め、DJ QuikやToo $hort、Eazy-Eに似た独特のデリバリースタイルで90年代初期のG-funkサウンドを現代に蘇らせています。
Joe Moses(多才なコラボレーター)
本名Josephの Joe Mosesは、サウスロサンゼルス出身のラッパーで、Waka Flocka FlameのBrick Squad Monopolyレーベルに所属しながら、自身もAll Out Bosses Entertainmentの CEOを務めています。
2011年のアルバム「The Streets」と シングル「Go Girl」で地域的な成功を収め、2013年にはMigosの「Versace」をカバーしたことで全国的な注目を集めました。Ty Dolla $ign との協力でも知られ、「Paranoid」などで全国メディアの注目を集めています。
楽曲の意義と文脈
「HOME」は、Dezzy Hollowの最新アルバム「Oceanside」に収録された楽曲として、彼の故郷オーシャンサイドへの愛情を表現した作品です。この楽曲は、異なる世代と地域のアーティストが一堂に会したことで、西海岸ヒップホップの多様性と継続性を象徴しています。
地域性とルーツの表現
オーシャンサイドはロサンゼルスとサンディエゴの間に位置するカリフォルニア沿岸の都市で、Dezzy Hollowにとっては音楽的なアイデンティティの源泉です。この楽曲では、ベイエリア(Keak Da Sneak)、ロサンゼルス(G Perico、Joe Moses)、オーシャンサイド(Dezzy Hollow)という西海岸の主要なヒップホップシーンが結集しています。
世代を超えたコラボレーション
Keak Da Sneakのようなヒップホップ界の重鎮から、G Pericoのような現在進行形で活躍するアーティストまで、異なる世代が共演することで、西海岸ヒップホップの伝統の継承と革新を同時に表現しています。
音楽的特徴
プロデューサーPRODBYKAYZによる楽曲制作は、各アーティストの個性を活かしながら統一感のあるサウンドを構築しています。G-funkの伝統を受け継ぎながらも、現代的なプロダクションテクニックを駆使した仕上がりとなっています。
歌詞の一部引用解説
Hook: Dezzy Hollow
Know I had to bring it (Home home, home home)
絶対に持ち帰らなきゃならないんだ(ホームへ、ホームへ)
If she bad, I take her (Home home, home home)
もし彼女がイケてるなら、俺が連れて帰る(ホームへ、ホームへ)
Bring that thang or leave it (Home home, home home)
そのヤバいもんを持って来るか、置いていくか(ホームへ、ホームへ)
In the streets it feel like (Home home, home home)
ストリートにいるとまるで家みたいに感じる(ホームへ、ホームへ)
解説:
「Home」というフレーズが繰り返されることで、地元(カリフォルニアのストリート)が彼らの原点・居場所であることを表現しています。同時に「女を連れて帰る」「稼ぎや仲間を持ち帰る」などのダブルミーニングも含まれています。
Verse 1: Dezzy Hollow
Don’t you know we got players, pushers, gangstas, riders, homies
俺たちにはプレイヤーも、売人も、ギャングも、走り屋も、仲間もいるんだ
From the land of the colors, turn up, hustle, active, rolling
色分けされた土地(ギャングカラーの街)から来て、盛り上がり、稼ぎ、動き回る
Make a plan, wanna make a flip / Get off your ass and make some money quick
計画立てて、一発逆転したいなら / ケツを上げてさっさと金を稼げ
解説:
西海岸ヒップホップ特有の「地元のリアルなストリートライフ」を描写。ギャングカルチャーの中でも、ただ暴れるだけじゃなく「 hustle(稼ぎ)」を重視する姿勢が強調されています。
Verse 2: Keak Da Sneak
Californ-I-A, O-A-K, a city by the Bay
カリフォルニア、オークランド、湾岸の街
I’m from East Oakland, boy you from the Bay / Decades later, boy still on that hyphy
俺はイースト・オークランド出身、ベイエリアの男だ / 何十年経ってもまだハイフィだ
解説:
Keak Da Sneakは「Hyphyムーブメント(2000年代にベイエリアで流行した音楽スタイル)」の立役者。自分がそのカルチャーを今も体現していることを誇示しています。
🎵 Verse 3: Joe Moses
Back in the day, I would’ve pissed on the snow
昔は雪の上でションベンしてたようなもんだ(=寒さや困難も気にしなかった)
38,000, bet my wrist gon’ glow
3万8千ドル、俺の腕時計は輝いてる
Really from the city man, these other niggas claiming
俺は本当にこの街出身だ、他の奴らは偽物だ
解説:
Joe MosesはLAサウスセントラル出身。自分が「本物のストリート出身」であり、金も名声も手に入れたことを誇る一方で、偽物をディスしています。
🎵 Verse 4: G Perico
Ain’t no city like the one I’m from, it’s love if you a crip or a blood
俺の街みたいな場所は他にない、クリップでもブラッズでも愛があるんだ
Gang bangers, red flags, blue rags, it’s the (Home)
ギャングたち、赤い旗、青いバンダナ、それが「ホーム」だ
解説:
G PericoはLAのサウスセントラルを代表するラッパー。ギャング文化(Crip=青、Blood=赤)を象徴として示しながらも、そこに愛や帰属意識があると語っています。
🎵 Verse 5: Dezzy Hollow (Closing)
Outside in the streets, south side, catch the breeze / Outside where it’s dangerous underneath the palm trees
ストリートの外側、サウスサイドの風を感じる / ヤシの木の下、危険が潜む場所
From the Bay to LA, from LA to the O / It’s revenge of the west, credibility’s go
ベイからLAへ、LAからオークランドへ / これは西海岸の逆襲、信頼が広がっていく
解説:
最後は「西海岸全体(ベイエリア~LA)」を結ぶ統一感と誇りを歌い上げています。「Home=ストリート」であり、危険もあるがそこが自分たちの居場所であり、力の源泉。
まとめ
「HOME」は、単なるコラボレーション楽曲を超えて、西海岸ヒップホップの現在と未来を示す重要な作品です。ベイエリアとロサンゼルスの「カリフォルニア・コネクション」を体現したこの楽曲は、地域のアイデンティティを大切にしながらも、より広い世界に向けてメッセージを発信する現代ヒップホップの良例と言えるでしょう。
各アーティストの個性が融合したこの作品は、ヒップホップファンにとって必聴の一曲であり、西海岸ラップの新たな章の始まりを告げる記念すべき楽曲として記憶されることでしょう。
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