CJ Mac「Come and Take a Ride Pt. 2 feat. B.G. Knocc Out」── 90年代ウェッサイの伝説が日本をまたいで蘇る

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楽曲について

「Come and Take a Ride Pt. 2 feat. B.G. Knocc Out」は2025年リリースのシングルで、収録時間は3分11秒。制作はIITIGHT MUSICが担当し、プロデュースはDJ DEEQUITEとXL Middletonの共同名義。リリース後、XL Middletonのタルクボックスが際立つウェストコースト・ファンクの音像に乗せて、二人のレジェンドが往年の存在感そのままにラップを届ける一曲として大きな話題を呼んだ。

ラベルのIITIGHT MUSICを率いるのが、後述するDJ DEEQUITEだ。この曲には、南カリフォルニアのストリートで育ち、90年代ウェッサイシーンを体現してきた二人のMCと、本場の音を愛し続けてきた日本のDJという三者が交差する。その組み合わせ自体が、このトラックの持つ意味を物語っている。


CJ Mac── サウスセントラルから這い上がった男

本名Bryan Rossとして知られるCJ Macは、ロサンゼルスのサウスセントラルで生まれ育った。ローリン60s・ネイバーフッド・クリップスのメンバーであり、1991年に「CJ Mack」名義でデビューEP「Color Me Funky」をリリース。その後1995年、Rap-A-Lot Recordsから制作者のMadとデュオ名義「Mad CJ Mac」として1stアルバム「True Game」を発表した。

1999年にはMack 10のレーベルHoo-Bangin’ Recordsから「Platinum Game」をリリース。同作にはMack 10、WC、Too Short、TQらが参加し、R&B/ヒップホップアルバムチャートで77位を記録した。

映画「Thicker Than Water」にMack 10やFat Joeと共演し、ドラッグディーラーのGatorを演じたほか、自身でドキュメンタリー「On the C-Walk」を監督し、クリップスのメンバーだった過去を明かした。2000年代以降もDeath Row Recordsとの関わりや、C-Bo、Dresta、Scarface、WCら西海岸のラッパーとのコラボレーションを重ね、インディペンデントシーンで存在感を保ってきた。


B.G. Knocc Out── Eazy-Eが認めた、コンプトンの申し子

本名Arlandis Tremel Hintonとして1975年1月23日に生まれたB.G. Knocc Out(現名:Al Hasan Naqiyy)は、カリフォルニア州コンプトン出身のウェストコースト・ラッパーだ。兄Drestaとともにナティ・ブロック・コンプトン・クリップスの一員として育ち、Eazy-Eに見いだされてシーンに登場した。

1993年、Eazy-EとDr. Dreの抗争の最中、当時その場で即興でリリックを書き上げた伝説のディストラック「Real Muthaphuckkin G’s」に参加。同曲はBillboard Hot 100で42位を記録し、90年代ウェストコースト・ヒップホップの歴史的一幕として語り継がれている。

1995年には兄Drestaとのデビューアルバム「Real Brothas」をリリース。同作はBillboard 200で128位、R&Bアルバムチャートでは15位に達した。しかし1998年に関連する事件で服役し、その10年間の収監中にイスラム教に改宗。2008年に釈放後もラップへの情熱は衰えず、2011年に「Eazy-E’s Protege」をリリースし、師Eazy-Eへのリスペクトと自身の復活を示した。


XL Middleton── パサデナが生んだモダンファンクの旗手

XL Middleton(本名Matthew T. Hudgins、1982年3月1日生まれ)はカリフォルニア州パサデナを拠点とするプロデューサー・DJ。レコードレーベルMoFunkの共同創設者でもあり、ブギーやファンクの作品を精力的にリリースしている。

2000年代初頭から本格的に活動を開始し、ウェストコースト・ファンクとヒップホップのアイコンたちの影響を色濃く受けながら、ディープサウスのラップのエッセンスも加えた、メロディアスでアップビートなサウンドを確立。自身のレーベルCrown City Entertainmentを立ち上げ、アルバムをリリースし続けた。その「カリフォルニアサウンド」は日本でも強く支持され、2006年には日本ツアーも実現している。

L.A.のモダンファンク・シーンにおける中心人物として、MoFunkレーベルの楽曲プロデュースをこなす傍ら、2017年にはロサンゼルスのチャイナタウンにファンク専門のレコードショップ「Salt Box Records」をオープン。年次イベント「Modern Funk Fest」の主催者としても知られる。


DJ DEEQUITE── 神奈川から世界へ発信するミックステープ・キング

DJ DEEQUITE(ディークワイト)はIITIGHT LLC所属。1996年にLAへ渡米したことでブラックミュージックカルチャーに深く影響を受け、帰国後DJとしてのキャリアをスタートさせた。

幼少期からのピアノ経験を活かし、DJにとどまらずトークボックスプレイヤー、ビートメイカーとしても活動。DJ BATTLECAT、DJ YELLA(N.W.A)、DAZ DILLINGER、WC、MC EIHTらUSの著名アーティストの来日公演バックDJを務めてきた実績を持つ。また「BAY BOUND」「G’D UP」といった自身がレジデントを務めるDJイベントは全国から来場者が集まる人気を誇る。

累計100作以上のミックステープをリリースしており、「THA MIXTAPE MONEY GANG」の異名を取る。MACK 10率いるHOO BANGINやXL MIDDLETONのオフィシャルミックスも担当。2018年にはラッパーNORIKIYOの8thアルバムにトークボックスで客演参加するなど、ビートメイカーとしての活動も旺盛だ。

今回の「Come and Take a Ride Pt. 2」制作について、DJ DEEQUITEは自身のXアカウントで「CJ MACとB.G. KNOCC OUTの曲に俺のTALKBOXが入るなんてマジ夢みてーだ。WORLD WIDE IITIGHT」と歓喜のコメントを投稿した。その一言に、この楽曲が単なるコラボを超えた、彼にとっての長年の夢の実現であることが凝縮されている。


まとめ

南カリフォルニアのストリートで90年代を生き抜いたCJ MacとB.G. Knocc Outが再び会し、パサデナのG-ファンク職人XL Middletonのビートと、神奈川からウェストコーストを愛し続けてきたDJ DEEQUITEのトークボックスが絡み合う──「Come and Take a Ride Pt. 2」はそのクロスオーバー自体がひとつのドラマだ。ウェッサイ・ヒップホップという文化が国境を越えてどれだけ深く根を張っているか、この一曲がそれを証明している。

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