はじめに
SEEDAのアルバム『親子星 (Deluxe)』に収録された「WOLF CHILDREN」のミュージックビデオが、プロデューサーBardin BeatzのYouTubeチャンネル「Link up with Bardin」で公開されました。この楽曲は、レジェンドSEEDAと新世代の若手ラッパーSiero、そして気鋭のプロデューサーBardin Beatzという三者のコラボレーションによって生まれた、世代を超えた化学反応を感じさせる一曲です。
楽曲の基本情報
収録アルバム
「WOLF CHILDREN」は、SEEDAが2024年12月10日にリリースした『親子星 (Deluxe)』に収録されています。このデラックス版は全23曲、総再生時間65分13秒という大ボリュームで構成され、オリジナル版からさらに多彩なアーティストとのコラボレーションが追加されています。
「WOLF CHILDREN」はトラック5として収録され、再生時間は3分09秒です。作詞はSEEDAとSiero、作曲はBardin Beatzが担当しています。
Link up with Bardinとは
この楽曲は「Link up with Bardin」というコンセプトの下で公開されました。これはBardin Beatzが主催する新しい企画で、ビートメーカーとして様々なアーティストと繋がり、唯一無二の化学反応を生み出すことを目的としています。
Bardin BeatzはYouTubeチャンネル「+81 Sessions」の運営でも知られており、SEEDAからアドバイスを受けながら、新進気鋭のアーティストたちのパフォーマンスの場を提供してきました。「Link up with Bardin」はその発展形として、より本格的なコラボレーション楽曲を生み出すプラットフォームとなっています。
タイトルの意味
「WOLF CHILDREN」に込められたメッセージ
「WOLF CHILDREN」(狼の子供たち)というタイトルは、複数の解釈が可能です。細田守監督のアニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』を知る人にとっては、人間社会と異なる存在として生きる子供たちの物語を連想させるでしょう。
ヒップホップの文脈では、「WOLF」は単独で狩りをする孤高の存在、あるいは群れで行動する団結の象徴として使われます。ストリートから這い上がってきたラッパーたちを「狼の子供たち」と表現することで、システムの外側で生きる者たちの誇りと野性、そして次世代へと受け継がれていく精神を表現しているのではないでしょうか。
SEEDAとSieroという世代の異なる2人のラッパーが共演するこの楽曲において、タイトルは彼らが同じ「狼の血統」を受け継ぐ者であることを示唆しています。
アーティスト紹介
SEEDA
1980年生まれ、東京都出身。幼少期をロンドンで過ごしたバイリンガルラッパーです。バイリンガルスタイルのキレのあるラップでストリートの詩情を切り取り、2006年発表の「花と雨」をはじめとする数多くのクラシックを生み出してきました。
2012年の『23edge』以来、約13年ぶりとなる通算11作目のアルバム『親子星』を2025年3月にリリース。デラックス版には全23曲が収録され、R-指定、STUTS、JJJ、BES、VERBALなど豪華アーティストが参加しています。
2006年から若手の楽曲を集めたミックスCD「CONCRETE GREEN」シリーズをDJ ISSOと制作し、日本のヒップホップシーンのイノベーターとして活躍。2017年からはYouTube番組「ニートtokyo」を主宰し、楽曲以外のクリエイションでも高い評価を得ています。
Siero(シエロ)
東京を拠点に活動する若手ラッパー。2023年1月4日、自身の誕生日に活動を開始しました。
海外のアンダーグラウンドシーンで盛り上がりを見せているNew JazzやGloといった新しいジャンルに共鳴し、独特のフローと自らの欲望や葛藤を生々しく書き殴ったリリックを音楽に昇華させることで、唯一無二の衝撃を残す作品を生み出しています。
Sieroの代表作
- 2024年9月『THE GOAT TAPE 3』 – 収録曲「2am in Tokyo」がアンセムとなり注目を集める
- 2025年2月『Not In Streets』 – 自身のルーツを綴ったアルバム。「Kidori Aruki」がバイラルヒット
- 2025年8月『DON’T PLAY WITH US』 – jellyyとのWネームEP。BATICAで開催されたリリースパーティは超満員
- 2025年12月『THE GOAT TAPE 4』 – 16曲入りの最新ミックステープ
Sieroの音楽的ルーツ
Sieroのラップとの出会いは小学6年生の頃。ゲーム友達との通話中に流れてきたKOHHの「Dirt Boys」と「貧乏なんて気にしない」が衝撃的だったといいます。母子家庭で育ち、小さい頃から貧乏を理由にナメられてきた経験から、KOHHのリリックが深く刺さったそうです。
「ラップって『チェケラッチョ』だと思ってた」というSieroが、トラップというジャンルを通じてラップの本質に触れ、「こういうこと言えるようになりたい」と思ったことが、現在の彼の嘘をつかないスタイルの原点になっています。
Sieroの特徴
Sieroのラッパーとしての魅力は、華やかな未来を語る情熱と、その同じ夜に枕を濡らすセンチメンタルが同居しているところにあります。あるいは、その嘘の吐けなさにあります。地下から地上への垂直方向の物語を強く信じており、その言葉が夜の闇や地下の闇を貫いていくと信じて、多弁に語るスタイルが特徴です。
Bardin Beatz(バーディン・ビーツ)
2002年生まれ、東京出身のプロデューサー/ビートメーカー。現在23歳という若さながら、様々なアーティストに楽曲を提供しており、ドリルからトラップまで多様なジャンルのビートを作っています。
主な楽曲提供
- Lil Jap – 「人生の先生」(YouTubeで12万回以上再生)
- Vega KfK – 「Chedder Cheese」(約4万回再生)
- SHO – 「法政大学中退」「Yellow Kanye」
- AIRIE – 「Close」
- Whoopee Bomb – 「SNDR STROKE」
- Loud Santana – 「Headache」
- JETG – 「jersey racer」
- TOKYO世界 – 「Aitsu」(RAPSTAR 2024出場者とのコラボ)
Bardin Beatzの活動
Bardin BeatzはYouTubeチャンネル「+81 Sessions」を開設し、自身のビートで様々なアーティストがパフォーマンスを披露する場を提供しています。このチャンネルでは日本ヒップホップのレジェンドSEEDAがアドバイスをしており、過去にSEEDAがマイクを渡した際に「ありがとうBardin」と言ってくれたことが嬉しかったとBardin本人がSNSで語っています。
また、Bardin Beatzは「ニートtokyo」、「Ray Blog」、SEEDAのYouTubeチャンネルのビデオエディターとしても活動しており、プロデューサーとしてだけでなく映像制作の面でもシーンに貢献しています。
楽曲の制作背景
世代を超えたコラボレーション
SEEDAは1980年生まれ、Sieroは2023年に活動を開始した新世代、Bardin Beatzは2002年生まれと、3人の年齢差は約20年以上にも及びます。しかし、彼らは「地下から這い上がってきた本物」という共通点で繋がっています。
SEEDAが2006年から「CONCRETE GREEN」シリーズで若手を発掘し続けてきたように、この楽曲もまた次世代へのバトンパスの意味合いを持っています。レジェンドが新世代の才能を認め、共に作品を作ることで、日本のヒップホップシーンの連続性と進化を示しているのです。
プロダクションの特徴
Bardin Beatzによるプロダクションは、ドリルやトラップの要素を取り入れながらも、SieroのNew Jazz的な感性とSEEDAのバイリンガルスタイルを両立させる懐の深さを見せています。
楽曲のクレジットを見ると、録音はOzzyOtakiとwxstepainが担当し、ミックス・マスタリングはHiroshi Shiotaが行っています。これらのスタッフもまた、現代の日本のヒップホップシーンを支える若手技術者たちです。
『親子星 (Deluxe)』における位置づけ
「WOLF CHILDREN」は、アルバムのトラック5として、デラックス版で追加された楽曲の中でも重要な位置を占めています。
アルバム全体のテーマが「親子」であることを考えると、この楽曲における世代間のコラボレーションは、まさに音楽における「親子関係」を象徴していると言えるでしょう。SEEDAという「親」世代が、Sieroという「子」世代と共に作品を作り、それをBardin Beatzという若きプロデューサーが支える構図は、アルバムタイトルの『親子星』というコンセプトを体現しています。
デラックス版には他にも、R-指定との「ちょっちゅね!!!」、VERBALとの和解ソング「L.P.D.N.」、Jinmenusagi、Lunv Loyal、Sieroとの「G.O.A.T. (Remix)」など、多様なコラボレーションが収録されており、「WOLF CHILDREN」はその中でも特に次世代との繋がりを強調した楽曲となっています。
楽曲の意義
シーンの継承
日本のヒップホップシーンにおいて、世代間の断絶は常に課題となってきました。「WOLF CHILDREN」は、レジェンドと新世代が対等な立場でコラボレーションすることで、シーンの継承がスムーズに行われることを示しています。
SEEDAが「CONCRETE GREEN」や「ニートtokyo」で若手を育ててきたように、この楽曲もまた教育的な意味合いを持ちながら、同時に対等なアーティスト同士としてのリスペクトが感じられる作品です。
新しいヒップホップの形
SieroのNew Jazz的なアプローチとSEEDAのクラシックなスタイル、そしてBardin Beatzのモダンなプロダクションが融合することで、過去と現在、そして未来を繋ぐ新しいヒップホップの形が提示されています。
これは単なる「懐古」でも「革新」でもなく、両者が自然に共存する、成熟したシーンの姿を示しているのです。
「Link up with Bardin」の意義
この企画は、プロデューサーが単にビートを提供するだけでなく、アーティスト同士を繋ぐハブとしての役割を果たすことの重要性を示しています。Bardin Beatzは自身のYouTubeチャンネルやプロダクションを通じて、アーティスト同士の化学反応を生み出す場を提供しており、これは日本のヒップホップシーンの発展に大きく貢献する活動と言えるでしょう。
まとめ
「WOLF CHILDREN」は、レジェンドSEEDA、新世代の若手Siero、そして気鋭のプロデューサーBardin Beatzという三者が生み出した、世代を超えた傑作です。
「狼の子供たち」というタイトルが示すように、システムの外側で生きる者たちの誇りと野性、そして次世代へと受け継がれていく精神を体現した楽曲となっています。『親子星 (Deluxe)』というアルバムのコンセプトを考えると、この楽曲は音楽における「親子関係」、すなわちシーンの継承を象徴する重要な位置を占めています。
Bardin Beatzの「Link up with Bardin」という企画を通じて公開されたこの楽曲は、プロデューサーがアーティスト同士を繋ぐハブとしての役割を果たすことの重要性も示しており、日本のヒップホップシーンの新しい可能性を感じさせる一曲となっています。
SEEDAのファンはもちろん、Sieroの躍進を追っている人、そしてBardin Beatzのプロダクションに注目している人にとって、必聴の楽曲と言えるでしょう。



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