IO – Recognize feat. C.O.S.A. (Prod. C.O.S.A.)

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はじめに

2025年7月にリリースされたIOの5thアルバム『JUST ALBUM』。その6曲目に収録されている「Recognize feat. C.O.S.A. (Prod. C.O.S.A.)」は、東京と愛知を代表する二人のラッパーが、本物の誇りと成功への道のりを力強く描いた楽曲だ。

楽曲の基本情報

  • アーティスト: IO feat. C.O.S.A.
  • 収録アルバム: JUST ALBUM
  • リリース日: 2025年7月
  • : 2分51秒
  • 作詞: IO & C.O.S.A.
  • 作曲・プロデュース: C.O.S.A.
  • エンジニア: G.O.K (SENSEI)
  • 録音: IO – The Anticipation Illicit Tsuboi @ RDS Toritsudai / C.O.S.A. – C.O.S.A. @ STUDIO MOLTISANTI
  • ミックス: The Anticipation Illicit Tsuboi @ RDS Toritsudai
  • マスタリング: Colin Leonard at SING Mastering, Atlanta, GA

アーティストについて

IO

元KANDYTOWNのメンバーとして知られる東京生まれのラッパー。2023年3月に日本武道館でのソロパフォーマンスでKANDYTOWNの活動に幕を閉じた後も、ラッパー、アート/フィルムディレクター、モデルとして多方面で活躍。本作『JUST ALBUM』は、『Soul Long』(2016)、『Mood Blue』(2017)、『Player’s Ballad.』(2019)、『four』(2023)に続く5作目のアルバムとなる。

C.O.S.A.

1987年生まれ、愛知県知立市出身のラッパー/プロデューサー。12歳で歌詞を書き始め、16歳から名古屋のクラブで活動を開始。2013年に活動を本格化させ、2016年にKID FRESINOとの共作「Somewhere」で注目を集める。2021年には楽曲「PAID IN FULL」が映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の挿入歌に起用されるなど、ラッパーとしてだけでなくプロデューサーとしても高い評価を得ている。2025年には自身のレーベル「Moltisanti Music」を立ち上げ、新たなステージへと進んでいる。

楽曲の魅力

1. 本物の誇りを語るリリック

冒頭から「隙は見せないぜ決めるバッチリ / 時計まわりで回してる仲間と」というラインで始まる本曲は、成功を手にしてもなお走り続ける二人の姿勢を表現している。

特に印象的なのは、IOのヴァースにおける「Hatersが俺を走らせる / 落ち着くには若すぎる / ジョーダンは足元だけにしろよ」というライン。批判者さえも原動力に変える強さと、まだ満足せずに前進し続ける姿勢が表れている。「何回でもTry like Yuki Kawamura」という一節では、NBAでチャレンジを続ける日本人選手への敬意も込められている。

2. C.O.S.A.の洗練されたプロダクション

本作のビートを手がけたC.O.S.A.は、ジャズの要素を巧みに取り入れたトラックを制作している。「コルトレーン聴いてゴールドを眺めると / このサックスはBallad」というラインが示すように、ジョン・コルトレーンの影響を感じさせるサックスのサンプリングが、楽曲に上質な雰囲気を与えている。

トラップとジャズの融合は、現代のヒップホップにおいて重要なトレンドだが、C.O.S.A.のプロダクションはそれを愛知県知立市という地方都市の視点から再解釈している点でユニークだ。

3. 過去と現在を結ぶストーリーテリング

「手持ちのコインで凌いでた日 / Usedのヌプシで歩いた街 / あの頃よりはいくらかまし / けど忘れてないまだ始めの日」というラインは、二人が苦労しながら道を切り開いてきた過去を振り返りつつ、その原点を決して忘れない姿勢を示している。

「俺ら無名の頃から一目置かれて来たぜ yeah / そうやって自分自身で道 I show you 切り開いて来た」というフックは、誰かに与えられた成功ではなく、自らの力で掴み取った成功であることを力強く宣言している。

4. 仲間への敬意

「Respect仲間に欠かさず / 本物は黙って働く」「並んだ料理を仲間と分ける」といったラインからは、成功を独り占めせず、共に歩んできた仲間を大切にする姿勢が伝わってくる。「今でも仲間が俺の鏡」という一節は、仲間が自分を映し出す存在であり、互いに高め合う関係性を表現している。

5. 細部へのこだわり

C.O.S.A.のヴァースにある「細部に注意 / 変化を産み出すその時ならふい」というラインは、彼のプロデューサーとしての姿勢をも反映している。実際、C.O.S.A.は自身のスタジオでACOUSTIC REVIVE製のケーブルを導入するなど、音質にこだわり抜いたレコーディング環境を整えていることで知られている。

『JUST ALBUM』における位置づけ

アルバム『JUST ALBUM』は、YZERR、Ryohu、3House、Crystal Kay、Shurkn Papといった豪華ゲストを迎えた11曲入りの作品。その中で「Recognize」は、IOと同世代のラッパー/プロデューサーとのコラボレーションとして、アルバムの中盤に重要な役割を果たしている。

アルバムは日本のヒップホップチャートで好成績を収め、iTunes Storeのヒップホップ/ラップ部門で1位を獲得。「Recognize」自体も、Apple MusicのヒップホップチャートでTOP 24に入るなど、リスナーからの支持を集めている。

サウンドの特徴

G.O.K (SENSEI)によるIOのエンジニアリングと、C.O.S.A.自身による録音・プロダクションの組み合わせは、東京と愛知という異なる地域のサウンドを見事に融合させている。The Anticipation Illicit Tsuboi @ RDS Toritsudaiでのミックスは、二人のボーカルの特徴を際立たせながらも、全体として統一感のある仕上がりとなっている。

Colin Leonardによるアトランタでのマスタリングは、国際的な視点から日本のヒップホップを磨き上げ、世界水準のサウンドクオリティを実現している。

まとめ

「Recognize feat. C.O.S.A.」は、東京と愛知を代表する二人のアーティストが、それぞれの道を切り開いてきた経験と、今なお前進し続ける姿勢を表現した楽曲だ。

成功を手にしてもなお謙虚さを失わず、仲間を大切にし、批判をエネルギーに変えて走り続ける——そんな本物のアーティストの姿勢が、洗練されたプロダクションとリリックによって描き出されている。

「本物は刹那 儚き」というラインが示すように、真の輝きは一瞬であるからこそ美しい。だからこそ、二人は今この瞬間を全力で生きている。それが「Recognize」という楽曲が持つ、最大のメッセージなのだ。

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