Blood Sweat & Tears feat. DJ DOPEMAN – Phobia Of Thug

JAPANESE

はじめに

名古屋ヒップホップシーンの重鎮Phobia Of ThugとDJ DOPEMANがタッグを組んだ「Blood Sweat & Tears」は、まさに日本のギャングスタラップを代表する楽曲のひとつです。この楽曲は単なる苦労話ではなく、「生きるか死ぬか」「成功か破滅か」という極限の選択の中で生き抜く覚悟を、血と汗と涙というメタファーで力強く表現した作品となっています。

アーティスト紹介

Phobia Of Thug(フォビア・オブ・サグ)

1995年結成。MC、Mr.OZとG.CUEからなる、名古屋を拠点に活動するヒップホップグループです。AK-69は当時のPhobia of Thugについて「絵に描いたような絵図で、Phobia of Thugのカッコ良さに衝撃を受けた」と語っており、名古屋052シーンの伝説的存在として知られています。

2025年、約20年の沈黙を破り”Relord”再始動を果たし、再び注目を集めています。

DJ DOPEMAN(ディージェイ・ドープマン)

DJ DOPEMANはAK-69、G.CUE、M.O.S.A.D.、DJ MOTO、Mr.OZとともに名古屋からギャングスタラップを日本に広めた男です。”052 LAST BIGMAN”として、彼がつくりだすビートはDOPE BEATS(ドープビーツ)といわれ、PHOBIA OF THUG、M.O.S.A.D.、AK-69、TWO-J、EL LATINO、KJIなどの名古屋のヒップホップアーティストから絶大な支持を受けています。

楽曲解析:「Blood Sweat & Tears」の深層

Hook部分

BLOOD SWEAT & TEARS DO OR DIE MF DO OR DIE
BLOOD SWEAT & TEARS TIL' I DIE MF TIL' I DIE
共に闘い 共に散る覚悟
迸り 流れ落ちる BLOOD SWEAT & TEARS
血と汗と涙 血と汗と涙 血と汗と涙
  • 「Do or Die」「Til’ I die」はヒップホップでよく使われる決意表現。
    →「死ぬまでやり抜く/やるか死ぬか」の精神。
  • 「共に闘い 共に散る覚悟」=仲間と運命を共にする姿勢。
  • ここでの「血と汗と涙」は、単なる苦労の比喩ではなく「命を削るリアルな生き方」。

Verse 1

チッ! ツバを吐く 石でも飲む
大or小 こう吐き出すんだ ラップ
聴く 仲間の声 合図 ギュッっと握る拳骨
ふー ため息をこぼす セッタ シケモクを着火
剥がす ベリっ スカブ 突っ込む 桜花
コレが性分 分で刻む こちとら 感情のまま 不撓不屈
  • 「ツバを吐く」や「石でも飲む」=逆境を気合で飲み込む、ハードな覚悟。
  • 「ラップは吐き出すもの」=本音・魂の発露。
  • 「仲間の声 合図」=一人ではなくクルーでの結束。
  • 「セッタ(タバコの銘柄)」や「シケモク」などストリート的な生活描写。
  • 「感情のまま 不撓不屈」=理屈よりも心意気と根性。

Verse 2

ああ 引き直したトリガー
コイツを掻き鳴らすほどに残る一人が
憐れみなら結構 もう存分に
味わった結果ならこう 成功と失くす栄光
  • 「トリガー」=銃だけでなくマイクのメタファー。
  • 「憐れみはいらない」=同情でなく実力で生き抜く。
  • 「成功と失くす栄光」=掴んだ成功は一方で失うものも多い(仲間、自由など)。

Verse 3

感傷浸りゃ甘美な ガンショット ダンスホール ターミナル
残像すら感じ合う 感じが 勘違う
干渉する程に渇く喉に流しこんだアルコール
歩こう 床にゃ残る覚悟
  • 「感傷に浸れば甘美=ガンショット」=暴力や死さえも音楽・生き様に変える。
  • 「床に残る覚悟」=血や酒をこぼした床=戦いの痕跡。

Verse 4

ああ 染み込ませたコンバス
コイツを履き潰すたびに思う独りだ
鉄格子の後ろが 面通しのムシロか
返答無く笑う現状が今の俺にゃむしろありがたい
  • 「コンバス」=コンバースのスニーカー。
  • 「履き潰すたび思う独り」=靴に刻まれた道=孤独な道の象徴。
  • 「鉄格子の後ろ」「面通し」=刑務所・逮捕を連想。
  • それでも「笑う現状がありがたい」=逆境すら受け入れる。

Verse 5

リラックス 秒で終わらす 計りなタイマー
ティッシュ このカス お前はボク
苦悩 逆境 陰でこぼした涙
見えてないのかな? 盲目
  • 「苦悩や逆境、陰で泣く姿」=強がりの裏にある本音。
  • 「盲目」=世間や他人はそうした痛みを見ようとしない。

Verse 6

血と汗と涙 それが結晶
戦場 下がれよ バウダウン
回すこのベロ いつかはダイア
グラつく訳 無いだろ 俺等
  • 「血と汗と涙=結晶」=ラップや生き様そのもの。
  • 「戦場 下がれよ」=ヒップホップを戦場にたとえ、勝負の場で退けと警告。
  • 「回すこのベロ」=ラップスキル=いつかは「ダイア(ダイヤモンド=不滅の価値)」になる。

全体解説

この曲は、Phobia Of Thugのリアルな決死の覚悟を「Blood Sweat & Tears」で表現した曲です。

  • ただの苦労話ではなく「ラッパーとして生きるか死ぬか」「成功か破滅か」という極限の選択。
  • 仲間との絆と、孤独・涙を同時に抱えながら進む姿勢。
  • ラップ=魂の吐露であり、刑務所や暴力の現実を背負ったままでも音楽に昇華する。

つまりこの曲は、**「ストリートで生き抜く=血と汗と涙そのもの」**というメッセージを強烈に打ち出しています。

名古屋ヒップホップシーンの意義

この楽曲は、名古屋052シーンの重要性を物語る代表的作品でもあります。Phobia Of ThugとDJ DOPEMANというシーンの重鎮が手を組むことで、名古屋のギャングスタラップの真髄を全国に示した記念碑的な楽曲となっています。

まとめ

「Blood Sweat & Tears」は、**「ストリートで生き抜く=血と汗と涙そのもの」**というメッセージを強烈に打ち出した楽曲です。ただの苦労話ではなく、極限状況での決死の覚悟と、仲間との絆、そして孤独・涙を同時に抱えながら進む人間の姿を描いた傑作といえるでしょう。

名古屋ヒップホップシーンの金字塔として、また日本のギャングスタラップの重要な作品として、この楽曲は今もなお多くのリスナーに強烈な印象を与え続けています。Phobia Of ThugとDJ DOPEMANによるこの不朽の名作は、ヒップホップが単なる音楽ジャンルを超えて、生き方そのものを表現するアートフォームであることを証明しています。

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