ZOT on the WAVE feat. YZERR & Candee – TEIHEN

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2022年6月にリリースされた「TEIHEN」は、日本のヒップホップシーンを代表するプロデューサーZOT on the WAVEが手がけた楽曲の中でも特に印象的な作品だ。BAD HOPのメンバーYZERRと注目の女性ラッパーCandeeをフィーチャーしたこの楽曲は、リアルな体験に基づいた成り上がりストーリーを力強く描いている。

楽曲概要

基本情報

  • アーティスト: ZOT on the WAVE feat. YZERR & Candee
  • リリース日: 2022年6月30日
  • 形態: デジタルシングル
  • 楽曲時間: 約3分
  • ミュージックビデオ監督: Nasty Men$ah

「TEIHEN(底辺)」というストレートなタイトルが示す通り、この楽曲は貧困からの脱却と成功への道のりをテーマにした作品である。

参加アーティストの背景

ZOT on the WAVE – シーンを牽引するトップ・プロデューサー

栃木県宇都宮出身のZOT on the WAVE(ゾット オン ザ ウェーブ)は、現在の日本ヒップホップシーンを代表するプロデューサーの一人だ。元々はR&Bシンガーとして活動していたが、19歳頃に自身のボーカルグループのビート制作を手がけるようになったことがきっかけでビートメイカーの道に進んだ。

彼のビートメイクの特徴は、シンプルでありながら中毒性のある強力なサウンドにある。BAD HOPの「Ocean View」やFuji Taitoとのコラボ楽曲「Crayon」など、数々のヒット作を手がけ、現在は神奈川郊外に拠点を置くレーベル「SELF MADE」を運営している。

YZERR – BAD HOPの頭脳、成り上がりの体現者

本名・岩瀬雄哉として1995年に神奈川県で生まれたYZERR(ワイザー)は、日本のヒップホップグループBAD HOPのメンバーとして知られる。双子の兄弟T-Pablowと共に活動し、川崎市川崎区の母子家庭で育った壮絶な過去を持つ。

14歳で逮捕され少年院に入所した経験があり、その間も兄弟で手紙を通じてラップの歌詞をやり取りしていたという。BAD HOPでは楽曲制作の統括やプロデュースを担当する「頭脳」的存在として活動していたが、2024年2月19日の東京ドーム公演を最後にグループが解散。現在はソロアーティスト兼起業家として新たな道を歩んでいる。

Candee – 次世代を担う注目の女性ラッパー

川崎出身のラッパーCandeeは、在日韓国人として生まれ育った背景を持つ。元々はダンスをしていたが、周囲の影響でラップを始めたという。川崎という土地柄、SCARSやBAD HOPの影響もあり、ラップを始める若者が多い環境だったのかもしれない。

楽曲の内容と意味

「TEIHEN」の歌詞には、「昔は底辺でも今Rich」「買い物をする時値段を見ないで」「高級車の中刺してるキー」といったフレーズが登場し、貧困からの成功への軌跡が描かれている。

特にYZERRのバースでは「生まれ育ちは貧困」「風呂無しの家で磨いたFlow」「底辺から頂点に引っ越し」といった具体的な体験が歌われており、彼自身の実体験に基づいたリアルなストーリーテリングとなっている。

Candeeのパートでも「0歳から住んでる川崎」「SouthSideの在日韓国人」「このバースで抜けるGhetto」といった歌詞で、自身のルーツと現在の状況を対比させながら成り上がりの物語を紡いでいる。

音楽的特徴とプロダクション

ZOT on the WAVEが手がけるビートは、現代的なトラップビートを基調としながらも、彼独特のメロディアスな要素が効果的に配置されている。重厚なベースラインと印象的なシンセサウンドが、ラッパーたちの力強いボーカルを支えている。

楽曲の構成も巧妙で、YZERRとCandeeそれぞれの個性を活かしながら、全体として統一感のある作品に仕上がっている。プロデューサータグ「ZOT on the WAVE」のフレーズも効果的に使用され、彼の作品であることを印象づけている。

日本ヒップホップシーンにおける意義

「TEIHEN」は、日本のヒップホップが持つ「成り上がり」というテーマを正面から取り上げた作品として重要な意味を持つ。特に川崎という地域性と、在日という背景を持つアーティストたちのリアルな体験談として、多くのリスナーに共感を与えている。

また、この楽曲は日本のヒップホップシーンにおけるコラボレーションの成功例としても注目される。異なる背景を持つアーティストたちが、共通のテーマのもとで一つの作品を作り上げることで、より深いメッセージ性を持った楽曲となっている。

まとめ

「TEIHEN」は、ZOT on the WAVEの卓越したプロデュース能力と、YZERRとCandeeのリアルな体験に基づいたラップが見事に融合した作品である。底辺から這い上がってきた体験を赤裸々に語りながらも、現在の成功を誇らしげに歌う姿は、多くの人々にとって希望のメッセージとなっている。

日本のヒップホップシーンが持つリアリティとエナジーを凝縮したような「TEIHEN」は、現代日本ヒップホップの代表的な楽曲の一つとして、長く記憶されるであろう作品だ。


この記事で紹介した楽曲「TEIHEN」は、Spotify、Apple Music、YouTubeなど各種音楽配信プラットフォームでも聴くことができます。

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