DADA & AZU「Whatever」

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はじめに

福岡・野芥を拠点に活動する幼馴染のラッパーデュオ、DADA & AZU。2022年7月30日にリリースされた共同アルバム『Changes』の4曲目に収録された「Whatever」は、誹謗中傷やネガティブな声に対して真正面から向き合い、それでも生きていく強さを歌った楽曲だ。

タイトルの「Whatever(どうでもいい)」という言葉には、周囲の雑音に惑わされず、自分たちの道を突き進む決意が込められている。

アルバム『Changes』における位置づけ

「Whatever」は、アルバム『Changes』の中盤に配置された楽曲。アルバム全体が2人の成長と変化をテーマにしている中で、この曲は外部からの批判や妬みという避けられない試練と、それに対する2人の姿勢を表現している。

プロデュースを手がけたのは、NokeyBoyzに所属するビートメイカー・Y-POLO。クルー内部のプロデューサーが制作に参加することで、より密接な関係性が楽曲に反映されている。

楽曲のテーマとメッセージ

ネットの誹謗中傷への応答

「Whatever」の核心にあるのは、SNS時代における誹謗中傷という現代的な問題だ。楽曲は「戦えない そのくせに 顔を隠し 書く悪口 人の愚痴が生きる糧」という痛烈な批判から始まる。

匿名で他人を攻撃する人々への直接的な言及は、現代のラッパーが直面するリアルな問題を浮き彫りにする。成功すればするほど増える批判的な声に対して、DADAとAZUは明確な立場を示している。

「それでも生きる」という強いメッセージ

「俺らは生きる それでも生きる 誰に何を言われても生きる」という繰り返されるフレーズは、この曲の中心的なメッセージだ。批判や妬みに屈せず、自分たちの道を進み続けるという強い意志が表現されている。

成功への道のりと貧困からの脱却

「言っときゃいいよ けどお前は貧乏 俺らはRichになってる途中やしね」というラインは、単なる煽りではなく、彼ら自身が経済的困難を乗り越えつつある現実を反映している。批判する人々との経済的な立場の違いを明確にしながらも、傲慢にならず、努力の過程を強調している点が重要だ。

共感と励まし

注目すべきは、この曲が単なる反撃の歌ではないということだ。「意地張って認めれない気持ちも わかる俺だって だからがんばれ 大丈夫」「お前が寂しくならない様に歌う」という部分に、批判する側への理解と共感が表れている。

DADAとAZU自身も過去に同じような立場にいた経験から、批判する人々の孤独や不安を理解している。そのため、この曲は単なる対立を生むのではなく、「お前も1人じゃないはず周り見て 俺の曲聴いて 話そうぜ」という呼びかけで終わる。

音楽性とプロダクション

Y-POLOのプロデュース

プロデューサーのY-POLOはNokeyBoyzのメンバーであり、ビートメイカーとして活動している。「Whatever」では、エモーショナルなメロディと力強いドラムが特徴的なビートを制作。DADAとAZUのボーカルを引き立てる洗練されたプロダクションに仕上がっている。

クルー内部のプロデューサーが手がけることで、2人のラップスタイルや意図を深く理解したビート作りが可能になっている。実際、アルバム『Changes』では、Y-POLOは「Whatever」と「Different」の2曲でプロデュースを担当しており、クルーにとって重要な役割を果たしている。

メロディアスなアプローチ

「Whatever」は、DADAとAZUの両者がメロディアスなアプローチを取っている点が特徴だ。激しいドリルビートではなく、より情緒的なサウンドスケープの中で、2人のボーカリティが際立っている。

キャッチーなフックと、エモーショナルなヴァースのバランスが絶妙で、メッセージ性の強い歌詞を聴きやすく仕上げている。

アルバム『Changes』のコンテクスト

豪華プロデューサー陣

『Changes』には、Young CocoやOnly Uの楽曲を手がけてきた10pm、韓国のCozin、NokeyBoyzのY-POLO、Internet Money所属のNick Miraなどが楽曲のプロデュースで参加している。

「Whatever」はこの豪華なプロデューサー陣の中で、あえてクルー内部のY-POLOが手がけることで、よりパーソナルで内省的な雰囲気を醸し出している。

アルバム全体のストーリー

『Changes』は全12曲で構成され、タイトルが示す通り「変化」がテーマ。「Whatever」は4曲目に配置され、成功への道のりで直面する批判や妬みという試練を描くことで、アルバムのストーリーに深みを与えている。

アルバムの流れの中で、「Whatever」は内省的な楽曲として機能しながらも、後半へ向けての強いメンタリティを構築する重要な役割を担っている。

現代のヒップホップシーンにおける意義

SNS時代のリアリティ

「Whatever」は、SNS時代のラッパーが直面する現実を正直に描いた楽曲だ。匿名での誹謗中傷、成功への妬み、ネット上での人格攻撃——これらは現代のアーティストが避けて通れない問題だ。

DADAとAZUは、これらの問題を避けるのではなく、真正面から向き合い、それを乗り越える姿勢を示している。

エンパワーメントとしてのヒップホップ

この曲は、批判や困難に直面している全ての人へのエンパワーメント・アンセムとして機能している。「俺らは生きる それでも生きる」というメッセージは、音楽を通じた励ましであり、ヒップホップが持つ本来の力を体現している。

特に若い世代のリスナーにとって、成功を掴み始めた同世代のアーティストからのこのメッセージは、大きな意味を持つだろう。

地方からの発信

福岡・野芥という地方都市から発信されるこのメッセージは、東京中心ではない日本のヒップホップシーンの多様性を示している。地方で活動しながらも全国規模で成功を掴みつつある彼らの姿勢は、多くの地方在住のアーティストに希望を与えている。

DADAとAZUの関係性

幼馴染だからこその説得力

DADAとAZUは幼少期からの幼馴染で、小・中学校時代から一緒に過ごしてきた。この長年の信頼関係が、「Whatever」のメッセージに説得力を与えている。

「お前も1人じゃないはず」という呼びかけは、彼ら自身が常に互いを支え合ってきた経験から生まれた言葉だ。批判に晒されても、変わらない仲間がいるという安心感が、この曲の底流に流れている。

NokeyBoyzという家族

「Whatever」では直接的な言及はないものの、楽曲の背景にはNokeyBoyzというクルーの存在がある。プロデューサーのY-POLOもクルーメンバーであり、この曲は単なるデュオの楽曲ではなく、クルー全体の価値観を反映している。

批判や困難に対して、クルーという家族が一丸となって立ち向かう姿勢が、楽曲全体から感じられる。

楽曲の影響と反響

リスナーからの共感

「Whatever」は、リリース後多くのリスナーから共感を得た。特にSNSでの誹謗中傷に悩む若者や、夢を追いかける中で批判に直面している人々にとって、この曲は大きな支えとなった。

「誰に何を言われても生きる」というシンプルで力強いメッセージは、様々な状況に置かれた人々の心に響いている。

ヒップホップの社会的役割

「Whatever」は、ヒップホップが単なる娯楽ではなく、社会的なメッセージを持つ音楽であることを改めて示した。批判や困難に立ち向かい、それでも前進し続ける姿勢は、ヒップホップの根源的な精神そのものだ。

日常生活の描写

「毎日金土 遊ぶNintendo」

「毎日金土 遊ぶNintendo 自分の好きな様に生活描いてる」という部分は、成功を掴んだ後の日常生活を描いている。高級品を買い漁るのではなく、ゲームを楽しむといった等身大の姿が描かれることで、リスナーとの距離を縮めている。

この何気ない日常描写が、「俺らは俺らでやってるだけ」という主張をより説得力のあるものにしている。

まとめ

DADA & AZU「Whatever」は、現代のヒップホップシーンにおいて重要な意味を持つエンパワーメント・アンセムだ。SNS時代の誹謗中傷という現代的な問題に真正面から向き合いながら、それでも生きていく強さと、批判する人々への理解を両立させている。

タイトルの「Whatever」は、単なる無関心を意味するのではない。批判や雑音に惑わされず、自分たちの信じる道を進むという強い意志の表明だ。そして同時に、批判する人々へ「お前も1人じゃない」と手を差し伸べる優しさも持ち合わせている。


楽曲情報

  • タイトル:Whatever
  • アーティスト:DADA & AZU
  • アルバム:Changes
  • トラック:4曲目
  • リリース日:2022年7月30日
  • 作詞・作曲:DADA, AZU
  • プロデュース:Y-POLO
  • レーベル:NokeyBoyz

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