はじめに
SCARSの1stアルバム『THE ALBUM』の3曲目に収録されている「1 Step, 2 Step」は、グループの中でも特に技術力が高いと評価されるBESがソロで手がけた楽曲です。多くのファンを勇気づけ、人生の困難に立ち向かう力を与えてきたこの曲は、SCARSを代表する名曲の一つとして知られています。
楽曲の基本情報
クレジット情報
- リリックス(作詞): BES
- プロデューサー: I-DeA
- 収録アルバム: 『THE ALBUM』(2006年)
- トラック番号: 3曲目
- 収録時間: 3分58秒
この楽曲は、BESが単独でリリックを書き上げた作品であり、彼の個性とスキルが最も光る楽曲の一つです。
アルバムにおける位置づけ
BESのソロ曲「1 Step, 2 Step」、STICKYのソロ曲「YOU ALREADY KNOW」と、個性的なメンバーのソロ曲が連続する構成になっています。これにより、グループとしての統一感と同時に、各メンバーの個性も際立たせる効果を生んでいます。
BESというラッパー
BESは、SCARSのメンバーの中でも特に高い技術力で知られるラッパーです。日本語なのに英語のようなスムーズなフローと抜群のリズム感を持ち、その実力は海外のリスナーからも評価されるほどでした。
BESは池袋bedを中心にSWANKY SWIPEで活動していた経歴を持ち、2004年から2006年頃にSCARSのメンバーとして本格的な音楽活動をスタートさせました。
プロデューサーI-DeAの貢献
「1 Step, 2 Step」のプロデュースを手がけたのは、SCARSのトータルプロデューサーでもあるI-DeAです。
I-DeAは青森県出身のトラックメイカーで、90年代後半にBUDDHA BRANDとコラボしたり、鬼の名曲『小名浜』をプロデュースするなど、日本のヒップホップ界に大きな衝撃を与えた人物です。
その後もKOHH、R-指定、GOODMOODGOKUなど、様々なアーティストからの支持を得ており、日本屈指のビートメイカーとして知られています。『THE ALBUM』では、I-DeAがトータルプロデュースを担当し、アルバム全体の音楽的方向性を決定づけました。
「1 Step, 2 Step」では、I-DeAのプロダクションがBESの卓越したラップスキルを最大限に引き出し、前向きなメッセージを力強く伝えることに成功しています。
楽曲のメッセージと影響
「1 Step, 2 Step」というタイトルは、一歩一歩着実に前進していくことの重要性を示しています。ハスリングラップというジャンルの中で、この曲は単なる悪自慢ではなく、困難な状況の中でも前を向いて生きていく姿勢を歌った楽曲として多くのリスナーの心を掴みました。
多くの人を勇気づけた楽曲
作家の大田ステファニー歓人氏は、SCARSについて語る際に「今でも『よっしゃいくぞ!』というときは『1 Step, 2 Step』を聴いて自分を奮い立たせる。大好きな曲の1つです」と述べています。
この証言からも分かるように、「1 Step, 2 Step」は単なるヒップホップの楽曲を超えて、多くの人々の人生を支える応援歌としての役割を果たしてきました。疲れた帰り道に聴いて勇気づけられたり、何かに挑戦する前に自分を奮い立たせるために聴いたりと、リスナーそれぞれの人生の節目で寄り添ってきた楽曲なのです。
BESのスキルが光る楽曲
「1 Step, 2 Step」では、BESの持つ全てのスキルが遺憾なく発揮されています。
- スムーズなフロー: 日本語ながら英語のような流れるようなラップ
- リズム感: 抜群のビート感覚とグルーヴ
- 言葉の選択: 意味がハッキリと聴き取りやすく、耳に残るリリック
- メッセージ性: 前向きで力強いメッセージの伝達
これらの要素が完璧に融合し、約4分間の楽曲の中でBESというラッパーの真髄を体感できる作品となっています。
『THE ALBUM』の文脈で
『THE ALBUM』は、ハスリングラップ最高峰のアルバムとして2006年のシーンに大きな衝撃を与えました。その中で「1 Step, 2 Step」は、ストリートでのリアルな生活を描きながらも、そこから前を向いて進んでいこうとする意志を示す楽曲として、アルバム全体に希望の光を投げかける役割を担っています。
金、薬、警察といったハードな現実を描く他の楽曲と対比することで、「1 Step, 2 Step」の持つポジティブなエネルギーはより一層際立ちます。これは、SCARSというグループが単なるギャングスタラップではなく、人間の弱さと強さ、葛藤と希望を同時に描き出すアーティスト集団であることを示しています。
2019年のリイシューとその後
長らく入手困難な状況が続いていた『THE ALBUM』は、2019年6月19日にリイシューされました。これにより、「1 Step, 2 Step」を含む名曲の数々が、新しい世代のリスナーにも届けられることとなりました。
同年11月6日には、アルバム全体が2枚組仕様で初めてアナログ化。アナログレコードの温かみのある音質で「1 Step, 2 Step」を楽しむことも可能になっています。
ライブでの定番曲
「1 Step, 2 Step」は、SCARSのライブでも披露される定番曲の一つとなっています。BESの圧倒的なライブパフォーマンスと相まって、この楽曲はライブ会場でも大きな盛り上がりを見せる楽曲として知られています。
観客が一体となって「1 Step, 2 Step」のビートに乗る光景は、SCARSのライブを象徴する瞬間の一つです。
まとめ
「1 Step, 2 Step」は、BESの卓越したラップスキルとI-DeAの名プロダクションが融合した、SCARSを代表する名曲です。
ハスリングラップという枠組みの中で、単なる現実の描写にとどまらず、一歩一歩前進していく強さと希望を歌い上げたこの楽曲は、多くのリスナーの人生を支え、勇気づけてきました。
「よっしゃいくぞ!」という時に聴く曲として、疲れた日々の中で自分を奮い立たせる曲として、「1 Step, 2 Step」は時代を超えて愛され続ける、真の意味での人生賛歌なのです。
BESが単独で書き上げたリリックと、I-DeAが作り上げたビート。この完璧な組み合わせが生み出した「1 Step, 2 Step」は、日本のヒップホップ史において永遠に語り継がれるべき重要な楽曲と言えるでしょう。
コメント