はじめに
2022年9月28日にリリースされた「POP KILLERS feat. ralph」は、日本のヒップホップシーンにおいて確固たる地位を築いているC.O.S.A.と、新世代の注目株ralphのコラボレーションが話題を呼んだ楽曲です。この記事では、両アーティストの背景から楽曲の音楽的特徴まで詳しく解説していきます。
アーティスト紹介
C.O.S.A.について
C.O.S.A.は1987年愛知県知立市出身のラッパー兼プロデューサーで、日本のヒップホップシーンにおいて重要な存在です。12歳で歌詞を書き始め、16歳から名古屋市のクラブで活動を開始したという早熟な才能の持ち主。
一度音楽から離れた時期もありましたが、2013年に活動を再開、本格化し、数々の印象的な作品をリリースしてきました。特に注目すべきは2016年のKID FRESINOとの共作「Somewhere」で、これが彼のキャリアの転機となりました。2022年1月にはキャリアを象徴するアルバム「Cool Kids」をリリースするなど、現在も精力的に活動を続けています。
C.O.S.A.自身が語ったところによると、彼は「言葉を音符として扱わない」アプローチを取っており、より深いレベルで自分の考えを自由に表現することができ、彼の音楽は「バックグラウンドミュージックとしては機能しない」とのこと。この哲学が彼の音楽の核心を成しています。
ralphについて
一方のralphは、日本のヒップホップシーンに新風を吹き込む存在として注目されています。12歳でラップに恋し、最初は日本のアーティストを見上げていたが、やがてアメリカやイギリスのラップシーンにも目を向けるようになったという背景があります。
ralphの声は深くてざらざらしており、ロンドンのHeadie Oneや故ブルックリンのラッパーPop Smokeに似ているが、より急速で密度の高いフローが特徴です。また、その大きな体格と常に身に着けている黒いバンダナとASSASSYNジーンズが彼のトレードマークとなっています。
ralphの初登場は2017年の伝説的な東京のプロデューサーデュオDouble Clapperz の楽曲「斜に構える」で、その後着実にキャリアを積み重ねてきました。2019年には100万回以上再生された「Selfish」でその地位を確立するなど、確実に実力を示してきています。
楽曲「POP KILLERS feat. ralph」の特徴
音楽的特徴
ビートはアルバム「Cool Kids」収録曲の「Feels Like Summer」を手がけたSphero Beatzによるハードなドリルビートが特徴的です。ドリルは近年のヒップホップシーンで注目されているジャンルで、攻撃的で重厚なサウンドが特徴。この楽曲でも、その硬質なビートの上で両者が堂々と自身のスタンスをラップしています。
楽曲のメッセージ性
楽曲のタイトル「POP KILLERS」が示すように、この楽曲は商業主義的な音楽への警鐘を鳴らす内容となっています。C.O.S.A.とralphは、ハードなドリルビートの上で両者が堂々と自身のスタンスをラップし、真のヒップホップとは何かを問いかけています。
歌詞の中では、音楽を軽視する態度への批判や、本物のラッパーとしての矜持が歌われており、両アーティストの音楽に対する真摯な姿勢が表現されています。
コラボレーションの意義
今回で2度目の共演となるralphを客演に迎えたとのことで、両者には以前からの繋がりがあることがわかります。ベテランのC.O.S.A.と新世代のralphという組み合わせは、世代を超えたヒップホップの継承という意味でも重要な意味を持っています。
制作陣とリリース情報
プロダクション
楽曲のプロデュースはSphero Beatzが手がけ、ミックスはDaimonion RecordingsのD.O.I.が担当しました。また、カバーイラスト&デザインはTSUNE(Nozle Graphics)が制作するなど、各分野のプロフェッショナルが集結しています。
リリース詳細
- リリース日: 2022年9月28日
- フォーマット: デジタルシングル
- レーベル: SUMMIT, Inc.
- カタログナンバー: SMMT-187
関連プロジェクトとライブ活動
EP「Reason」への収録
この楽曲は2022年11月9日にリリースされたC.O.S.A.のEP「Reason」にも収録されました。同EPには他にも注目楽曲が収録されており、C.O.S.A.の現在の音楽性を知る上で重要な作品となっています。
ライブツアー
C.O.S.A.は11月から4都市を回る自身初の全国ライブハウスツアーを開催し、この楽曲もセットリストに組み込まれました。ライブでの迫力あるパフォーマンスは、楽曲の魅力をさらに引き立てるものでした。
日本のヒップホップシーンにおける位置づけ
この楽曲は、日本のヒップホップシーンにおける重要なトレンドを象徴しています。海外のドリルやグライムといったジャンルを日本のアーティストが取り入れながらも、独自の解釈を加えることで新しい表現を生み出している点が特に注目されます。
C.O.S.A.のような経験豊富なアーティストと、ralphのような新世代のアーティストがコラボレーションすることで、シーン全体の発展と継続性が保たれているのです。
まとめ
「POP KILLERS feat. ralph」は、単なるコラボレーション楽曲以上の意味を持つ作品です。ハードなドリルビートに乗せて、真のヒップホップとは何かを問いかけるこの楽曲は、日本のヒップホップシーンの現在を映し出す鏡のような存在といえるでしょう。
C.O.S.A.とralphという異なる世代のアーティストが共演することで生まれた化学反応は、リスナーに強烈な印象を与え、日本のヒップホップの可能性を示しています。音楽性、メッセージ性、そして制作陣の高い技術力が結実したこの楽曲は、2022年の日本ヒップホップシーンを代表する一曲として記憶されることでしょう。
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