Chino Grande「Under The Sun」── ストリートの現実と、それでも消えない光

CHICANO

楽曲について

「Under The Sun」は2019年リリースのアルバム「Thirteen Hundredth Block Boys」に収録された楽曲で、2015年制作・2016年2月25日にシングルとしても先行リリースされている。レーベルはUrban Kings Music Group。シングルとして世に出た後、アルバムという形でより大きな文脈の中に組み込まれたことで、楽曲の持つメッセージはさらに深みを増した。

タイトルの「Under The Sun」──「太陽の下で」という言葉には複数の意味が重なっている。まずはカリフォルニアという土地そのもののイメージ。カラッとした陽光が降り注ぐロサンゼルスの街路は、チカーノ文化の象徴的な舞台であり、チカーノ・ラップの歌詞に繰り返し登場するモチーフだ。と同時に、「太陽の下に隠せるものは何もない」という剥き出しのリアルも同語に宿っている。「この世に存在するあらゆること」を指す英語の慣用句「nothing new under the sun」とも響き合いながら、生きることの普遍的な重さを静かに問いかけてくる。

チカーノ・ラップにおいて「太陽」は単なる自然の描写ではない。ストリートという暗闇の中からいつか届くはずの希望の光であり、もがきながら生き抜く魂が差し伸べる先の象徴でもある。Chino Grandeがこのタイトルを選んだことには、そうした文脈の重さが確かに込められている。


Chino Grande── Charlie Row Campoを率いる男

Chino Grandeは長年にわたってストリートラップのシーンで活動を続けてきたアーティストで、自身のグループ「Charlie Row Campo」を結成し、同じ境遇で育った仲間たちとともにチカーノ・ゲームに本物の息吹を吹き込んできた。Charlie Row Campoは、ストリートで生き抜いてきたリアルな仲間たちがその生き様を音楽に乗せるというコンセプトで立ち上げられたグループだ。

Thump RecordsやUrban Kings Music Groupといったレーベルがチカーノ・ラップの新世代アーティストを世に送り出していった時代に、Ms. Krazie、Mr. Knightowlらと並んで、Chino Grandeはその中心的存在として台頭した。

ディスコグラフィは着実に積み上げられてきた。2008年の「Still Active」では、Ms. Krazie、Fingazzら仲間を呼び込んだソロ作としての基盤を固め、2013年の「Trust Your Struggle」ではSpanky Loco、Carolyn Rodriguez、Glasses Malone、Cuete Yeska、Ms. Krazie、MC Magic、Chingo Blingらチカーノ・ラテン系シーンの重要アーティストを総動員し、キャリアの頂点とも言える作品を完成させた。同作は2013年8月13日にUrban Kings Music Groupからリリースされ、アンダーグラウンドながら全米各地のチカーノ・ヒップホップファンから広く支持を集めた。

現在もSpotifyで月間リスナー32万人超を誇り、インディペンデントのアーティストとしては異例の広がりを持つ存在感を発揮し続けている。


チカーノ・ラップという文化の中で

Chino Grandeの音楽を語るうえで、チカーノ・ラップという文化そのものへの理解は欠かせない。

チカーノ・ラップはメキシコ系アメリカ人(チカーノ)の文化的側面を体現するヒップホップのサブジャンルだ。1990年のKid Frostのデビューアルバム「Hispanic Causing Panic」とシングル「La Raza」が広く認知された最初のチカーノ・ラップ作品とされており、同曲はイースト・ロサンゼルスのアンセムとなった。チカーノ・ラップはオールディーズ(doo-wopやR&B)、ファンク、後にはコフント(conjunto)やバンダの要素も取り込みながら独自の音楽的アイデンティティを確立している。

チカーノ・ラップの共通テーマには、愛、アメリカにおけるメキシコ人としての経験、政治的問題、不平等、薬物使用や金銭が含まれ、また多くの楽曲がギャングのバイオレンスとバリオ(地元の街区)での生活を語り、スパングリッシュ(スペイン語と英語の混在した表現)を使うことでその文化的リアリティを体現している。

Chino Grandeはまさにその系譜の中にある。スペイン語のスラング、ストリートへのロイヤルティ、そして生き抜くことへの誇りと痛み──「Under The Sun」に流れるそのすべてが、Kid Frost以来脈々と受け継がれてきたチカーノ・ラップの精神そのものだ。


アルバム「Thirteen Hundredth Block Boys」── 帰属の宣言

2019年リリースの「Thirteen Hundredth Block Boys」は全16曲を収録した意欲作で、Chino Grandeが自らのルーツへ正面から向き合った作品として位置づけられる。

タイトルの「Thirteen Hundredth Block」とは、彼の地元に実在するブロックの名であり、それを冠したアルバムタイトルは「どこから来たか」を決して忘れないという宣言そのものだ。華やかなメインストリームに迎合することなく、自分が育った1300番地の空気感を音楽に刻み続けるという姿勢が、このアルバム全体に貫かれている。

アルバムにはBaby Jokesら長年の仲間に加え、G Pericoや Richard Cabral(Baby Jokes名義)といったウェストコーストの若い世代との共演も実現しており、チカーノ・ラップの縦の連帯感と横の広がりが同時に感じられる一枚だ。そしてその中に「Under The Sun」が置かれていることで、2016年にシングルとして発表されたこの楽曲は、アルバムという物語の一ページとして新たな意味を帯びた。


「Under The Sun」が語ること

「Under The Sun」という曲の核心にあるのは、どんな状況に置かれていても「この太陽の下で生きている」という事実への執着だ。それは単純な楽観ではなく、ストリートの現実を全身で受け止めながら、それでも立ち続けようとする意志の表明だ。

先にリリースされた「Shine On Me」(feat. Carolyn Rodriguez)が「いつか太陽が差し込む日を待ちわびる孤独」を描いたとすれば、「Under The Sun」はすでにその太陽の下に立っている者の視点から語られる。嘆くのではなく、宣言する。その変化は、Chino Grandeが「Trust Your Struggle」から「Thirteen Hundredth Block Boys」へと歩んだ6年間の成熟を映してもいる。

ファンのコメントにも、この楽曲のリアリティへの共鳴が見て取れる。「本当にこの生き方をしているとき、この曲は胸に刺さる。これが剥き出しの真実だ」「こういうリアルな音楽が必要だ」といった声は、Chino Grandeの音楽がインディペンデントのフィールドで長年愛され続けてきた理由を雄弁に物語っている。


まとめ

「Under The Sun」は、Chino Grandeというラッパーが何者で、どこから来て、何に向けて音楽を作り続けているかが凝縮された一曲だ。カリフォルニアの太陽、ストリートで生きることの誇りと重さ、地元「Thirteen Hundredth Block」という具体的な場所への帰属意識──それらが3分という時間の中で有機的に結びつき、聴く者を引き込む。

デビュー以来一貫してインディペンデントのフィールドで戦い続け、メインストリームに媚びることなく自分のストーリーを語り続けてきた男が「太陽の下で」何を見てきたか。その問いに耳を傾けるように、ぜひアルバム「Thirteen Hundredth Block Boys」全体とあわせて聴いてほしい。

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