Watson「Fashion Week feat. Benjazzy」

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2025年6月6日、Watsonが約7ヶ月ぶりとなる新曲を世に放った。2024年11月の2ndアルバム『Soul Quake 2』リリース以来およそ7ヶ月ぶり、2025年初となる新作として「Fashion Week feat. Benjazzy」がリリースされた。タイトルだけ見れば華やかなファッションの世界を描いた曲のように聞こえるが、実際に再生した瞬間、その軽やかで跳ねたビートとともに、二人の個性が真っ正面からぶつかり合うケミストリーに思わず耳を奪われる。これは単なるシングルリリースを超えた、2025年の日本語ラップにおける重要な一枚だ。


リリース前に披露された特別な舞台

この曲には、音源としてリリースされる前にすでにライブ初披露という”前史”がある。5月24日・25日に千葉・幕張メッセにて開催された日本最大級のヒップホップフェス『POP YOURS 2025』で披露され、今回待望のリリースとなった。

POP YOURSとは、日本語ラップシーンのトップアーティストたちが一堂に会する、年に一度の祭典だ。その最大規模のフェスの舞台で初めてオーディエンスの前に現れた「Fashion Week」は、リリース前からすでに話題となっていた。フェスで聴いた人間がSNSで反応し、「あの曲はいつリリースされるのか」という声が広がる中、6月6日に正式にリリースされた——その流れ自体が、この曲の持つ熱量を証明している。


Watsonという徳島発の現象

まずWatsonというアーティストの現在地を確認しておきたい。WatsonはプロデューサーのKoshyを迎えた1stアルバム「Soul Quake」を2023年12月にリリースし、翌2024年11月には2ndアルバム「Soul Quake 2」を発表した。そして2026年には三部作完結となる『Soul Quake 3』とともに自身初の武道館単独公演を成功させる——その異次元の速度でスターの座を駆け上がってきた若者が、2025年の夏に放ったのがこの曲だ。

軽やかな2Stepのビートの上で、数多のブランド名をネームドロップしている。ファッションウィークという舞台設定は、そのブランドの羅列と完璧に噛み合っている。着るものへの執着、スタイルへのこだわり、自分を見せることへの意識——そういったテーマをWatsonは得意の倍速ラップで軽やかに、しかし密度濃く詰め込んでいく。


Benjazzyという”スキルモンスター”の来歴

一方のBenjazzy(ベンジャジー)は、日本語ラップファンにとってその名を知らない人はいないほどの存在だ。1994年生まれ、神奈川県川崎市出身のラッパー。地元の幼馴染たちと結成したヒップホップクルー・BAD HOPのメンバーとして2014年に活動を開始し、メンバー随一のラップスキルで人気を集めてきた。

呂布カルマやSEEDAといった実力派からも”スキルモンスター”と称されるほど、ラップの技術と存在感は別格だ。そのBenjazzyが2024年2月19日に東京ドームで開催されたワンマンライブ「THE FINAL」をもってBAD HOPが解散したのち、ソロアーティストとして本格的に活動を開始した。

BAD HOP解散後初となるソロアルバム『UNTITLED』には、Chaki Zulu、Koshy、ZOT on the WAVE、dubby bunny、KMといった豪華プロデューサー陣が集結。客演なしの全12曲が収録された。このアルバムが昨年末に待望の1stアルバム『UNTITLED』としてリリースされた。川崎の幼馴染クルーから始まり、東京ドームを経て、ソロアーティストとして新たな章を歩み始めたBenjazzyが、WatsonとともにPOP YOURSの舞台で新曲を披露した——その事実だけで、この曲の重みはすでに十分に伝わる。

さらにBenjazzyが最も重きを置いているのがリリックだ。聴き取れるギリギリの速度でのラップを心がけているだけあって、韻を踏んでないように聴こえてもフローで踏んでいたり、パワー系かと思いきやテクニカルなことをする器用なラッパーだ。Watsonの倍速かつウィットに富んだスタイルと、Benjazzyのテクニカルでリリック優先のスタイル——この二つが同じトラックに乗った時に何が起きるか、「Fashion Week」はその答えを鮮やかに示してみせた。


Koshyというプロデューサーの絶頂

この曲を語る上で、プロデューサーのKoshyの存在は欠かせない。かねてからWatsonとタッグを組んでおり、千葉雄喜「チーム友達」やMegan Thee Stallion「Mamushi (feat. Yuki Chiba)」で注目を集めるKoshyがプロデュースした。

国内のヒップホップシーンにおいて2024年最大のバイラルヒットとなっている千葉雄喜の「チーム友達」、そしてその千葉雄喜も参加したMegan Thee Stallionの「MAMUSHI」、さらにWatsonの1stアルバム『Soul Quake』やNENEの2ndソロアルバム『激アツ』——その全てのプロデュースを手がけているのがKoshyだ。

Koshyはかつて「日本じゃ売れないよ」と言われたようなビートを好きに作り続けてきたが、千葉雄喜との仕事を通じて「全然いけんじゃん」という確信を得た。「日本人はこうだから」と気にせず好きに作っていいんだと。その覚悟の上に作られた「Fashion Week」のビートは、軽やかな2Stepのビートでありながら、日本語ラップのビートとしては異質なほど洗練された質感を持っている。UKガラージやハウスの空気を纏いながら、WatsonとBenjazzyのラップが乗ることで初めて完成する——そのフィット感の精度が、Koshyというプロデューサーの真骨頂だ。


元ネタが持つ奥行き

この曲のビートには、もう一つ掘り下げるべき側面がある。「Fashion Week (feat. Benjazzy)」のサンプルソースとして、Lost Astronautの「Quiver」が使用されている。「Quiver」はMorphosis Recordsから2024年5月30日にリリースされたアルバム「Was It All A Dream」に収録された楽曲だ。リリースから1年も経たない新しいエレクトロニックミュージックのトラックを、いち早く掘り起こしてヒップホップのビートに転用するその嗅覚——それがKoshyというプロデューサーを、時代のど真ん中に立たせている理由の一つだ。


チャートが証明した本物の強さ

リリース直後の反応もこの曲の充実度を裏付けている。Apple Musicのヒップホップ/ラップ トップソング・日本チャートで80位、iTunes Storeのヒップホップ/ラップ トップソング・日本チャートで99位を記録。SpotifyのDaily Viral Songs・日本チャートでは21位を記録した。さらに台湾のiTunes Storeヒップホップチャートにも99位でランクインするなど、国境を越えた反響を生んでいる。

「Fashion Week feat. Benjazzy」は、徳島生まれの新星と川崎生まれのスキルモンスターが、日本最高峰のプロデューサーのビートの上で邂逅した、2025年前半を代表する一曲だ。ファッションウィークはパリやミラノだけで開催されるわけではない——2025年の夏、その最も熱いランウェイは、WatsonとBenjazzyが並ぶこのトラックの上にあった。

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