guca owl – DIFFICULT― ひねくれ者の魂が咆哮した、東大阪からの宣戦布告

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guca owl「DIFFICULT」― ひねくれ者の魂が咆哮した、東大阪からの宣戦布告

2022年10月21日。日本語ラップシーンに、一発の強烈なパンチが叩き込まれた。1年ぶりとなるニューシングルとしてリリースされた「DIFFICULT」は、強気なパンチラインが光る、ひねくれ者のブルースだ。guca owl(グカール)は1998年11月11日生まれ、大阪府東大阪市出身のラッパーで、WILD SIDE MUSICに所属する。

ユーモラスにリアルを描く若きリリシストで、社会的でコンシャスな内容を扱いながらも、どこか自由で楽観的に魅せる表現力が特徴だ。その彼が、満を持して世に放ったのがこの曲だった。「DIFFICULT」——難しい、厄介、扱いにくい。その一語の中に、guca owlというラッパーの本質がすべて詰まっている。


「ひねくれ」を武器にするということ

この曲を貫く最大のテーマは「ひねくれ」だ。しかしそれは自虐でも卑屈さでもない。リリックの全ては、周りの雑音をすべて跳ね返し、自分の信じる道を突き進むことを意味するフレーズだけで構成されている強気な曲だ。

曲の冒頭から、guca owlは自分の出自と性格を鮮やかに提示する。「マミーからもらうDNA」——それはHungry、Twisted、Musicの三語で表現される。空腹さ(Hungry)とねじれた性格(Twisted)と音楽(Music)が彼を形成したDNA。「お前じゃ無理だよ」という言葉をしつけとして受け取ってきた男の、静かな怒りと誇りが、この導入に凝縮されている。

「右向け右で左向くアホ わかるかい? 俺なら根っからそう」——この一節にguca owlの美学がすべて現れている。全員が右を向く時に左を向くことを、彼は「アホ」と自虐的に表現しながらも、「根っからそう」と誇りとともに宣言する。ひねくれていることは欠点ではなく、才能だ。周りに合わせることができないこの性質こそが、彼を唯一無二のラッパーにしている——その確信が、この曲の全編に漲っている。


「俺の夢を誰か笑え」という逆説的な強さ

「俺の夢を誰か笑え、そうすれば俺はまだ走れる」というどストレートな言い回しから、オシャレな表現まで、全てが強気でオシャレなリリックで構成されている。

この「笑われることが燃料になる」という逆説的な発想は、ありきたりに見えて、guca owlの口から語られると全く異なる重みを持つ。東大阪で生まれ育ち、フルタイムの仕事をしながら音楽を作り続けてきた男が言うからこそ、この言葉は本物だ。嘲笑を恐れるのではなく、嘲笑を求める——それはネガティブなエネルギーを完全に燃料へと変換する、アスリート的なメンタリティだ。

そして「無理と言われりゃやりたくなんの」——この一行は、guca owlのキャリアそのものを要約している。仕事をしながら音源制作、ラップスキルを磨いていたが、なかなかクオリティが上がらないため、18歳の時にWILD SIDE STUDIOを立ち上げ、音源制作に専念した。「無理」と思われる状況でスタジオを立ち上げ、「無理」と思われながら音楽を続けてきた——その実体験があるからこそ、このラインは説教くさくならず、純粋な事実の報告として響く。


ビートが体現する「ブルース」の質感

メロディアスなフロウでトラップサウンドを巧みに乗りこなしながら、心に染み入るような生々しい言葉をブルージーに聴かせる大阪出身のラッパー、guca owl。気取りのない言葉選びとリリカルなセンスが特徴で、スムーズな節回しのエモーショナルなラップにはほのかにレゲエテイストも感じさせる。

「DIFFICULT」のビートはまさにその「ブルージー」という形容が最もよく似合う。暗くはないが、明るくもない。どこか翳りを帯びながらも、どっしりと地に足のついたグルーヴ。その上をguca owlの渋い声が、一定のリズムキープで流れていく。

guca owlのすごいところは、一定の音域、リズムキープなのに飽きずに、スッとリリックが気持ちよくビートとともに入ってくるところだ。これは技術であると同時に、個性でもある。派手に変化をつけたり、感情的に叫んだりしなくても、言葉の力とフロウの精度だけで聴き手を曲の世界に引き込んでしまえる——その能力が「DIFFICULT」で最も鮮明に発揮されている。


「Difficult」という言葉の多重構造

曲のタイトル「DIFFICULT」は実に多層的な意味を持っている。表向きは「難しい人」「扱いにくい人」という意味だ。周囲からそう思われること、「君からすりゃDifficult」と言われること——それをguca owlはまったく否定しない。むしろ肯定し、「簡単なら他の誰かでもいいじゃん」と返す。

しかしもう一つの読み方もある。「DIFFICULT」はguca owlが挑戦し続ける「困難そのもの」でもある。「俺が燃えるのはDifficult」——燃えるのは、困難だから。簡単なことには燃えない。無理だと言われること、笑われること、型にはまらないこと——そういった「Difficult」な状況こそが、彼のエンジンを全開にする。

苦しい今、それでも何かに挑戦し続けることのやりがいをguca owlの実体験とともにリリックに詰め込み、イケてるビートに乗せて、渋い声で歌い上げた神曲だ。その「実体験」という部分が重要だ。フィクションとして強がっているのではない。東大阪の現実の中で、本当にそういう選択をして、本当にそういう道を歩んできた男の言葉だからこそ、「DIFFICULT」は聴くたびに背筋が伸びる。


POP YOURSで示した、ライブという証明

POP YOURS 2023での「DIFFICULT」のライブでは圧巻のスキルを見せつけ、満員の観客を沸かした。この事実は、「DIFFICULT」という曲の力を何より雄弁に語っている。録音物としての完成度はもちろんのこと、大勢の前でこの曲を叩きつけた時に何が起きるかを、guca owlは証明してみせた。

チャートの数字も曲の浸透を示している。Spotify Daily Viral Songs 日本チャートで49位を記録し、iTunes StoreのヒップホップランキングではZで24位まで上昇。さらに台湾のiTunes Storeでは15位を記録するなど、国境を越えた反響を生んだ。


guca owl「DIFFICULT」は、音楽で成り上がることの困難さを知っている人間が、その困難を真正面から受け止めた上で「だからこそ燃える」と宣言した、魂の記録だ。「ひねくれてる次男坊」を自称する東大阪の男が、今この瞬間も走り続けているのは、この曲がある限り疑いようのない事実だ。まだ聴いたことがない方には今すぐ再生を、すでに知っている方には改めて大音量で聴き直すことを、強くすすめたい。

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