Foesum「In The Wind (What Goes Around)」― 風に乗せたG-Funkの哲学

Mexican

1996年、カリフォルニア州ロングビーチから一枚のアルバムが静かに世界へと放たれた。Foesumのデビューアルバム『Perfection』がPenalty Records / Tommy Boyからリリースされたのは、1996年10月22日のことだ。そのアルバムの中でも、ひときわ風格を漂わせる一曲が「In The Wind (What Goes Around)」である。タイトルの持つ意味を噛み締めながら聴けば、この曲がただのG-Funkトラックではないことがすぐにわかる。


Foesumとはどんなグループか

FoesumのルーツはMNMstaとDJ Glazeが高校在学中の1980年代半ばに結成したDJクルー「Perfection」にまで遡る。長い下積みを経て、グループはT-Dubb、MNMsta、DJ Glazeの3人を中心に活動し、Eazy-EやWarren G、さらにはBig Beat/Atlanticなど錚々たる面々と交渉を重ねた末にAtlantic Recordsとの契約を1995年1月に勝ち取った。

また、メンバーのDJ Glazeはフィリピンにルーツを持ち、MNMstaはメキシコ系という、当時の西海岸ヒップホップシーンでは珍しい多人種のクルーでもあった。そのバックグラウンドの多様さは、彼らの音楽に独特の厚みと温度感をもたらしている。


G-Funkの美学をまとった一曲

「In The Wind (What Goes Around)」が収録されたアルバム『Perfection』は、西海岸のG-Funkスタイルを体現した作品であり、Dove ShackのBo-Roc、The Twinz、さらには若きLil Wayneといった豪華な客演陣を迎えている。

この曲そのものについて、音楽レビューサイトRapReviewsは次のように評した。「In the Wind」は見事なプロダクションを持ち、Dove ShackのBo-Rocが提供するフックが際立っている。彼は深く魂のこもったボーカリストで、複数のG-Funkクラシックに参加してきた存在だ。DJ Glazeは豊かなシンセサイザー、うねるようなファンクギター、そして力強いドラムパターンを絶妙なバランスで組み上げ、金と貧しさのはざまで生きることへの思索に理想的な音の背景を提供している。

楽曲のテーマはタイトルが示す通り、「What Goes Around Comes Around(因果応報)」だ。T-Dubb、MNMsta、DJ Glazeがそれぞれのバースで、ストリートで生きることのリアル、仲間との絆、そして自分に正直であることの大切さを淡々と、しかし力強く語りかける。流れを作り、道を切り開いてきた者たちへの敬意と、裏切り者や調子乗りへの静かな警告が共存している、ロングビーチらしいメッセージである。

浮遊感のあるシンセがゆっくりと耳の中に広がり、気づけば夕暮れのフリーウェイを流れているような感覚に引き込まれる。G-Funkというジャンルが持つ最大の魅力——危うさと穏やかさが同居する独特のムード——を、このトラックは見事に体現している。


なぜ「スリープト・オン」なのか

FoesumがなぜメインストリームでBreakしなかったかを読み解くのはそれほど難しくない。すでに確立されたサウンドを扱い、Warren Gの延長線上にあるアーティストとして売り出されたが、G-Funkブームの全盛期はすでに短い賞味期限を迎えていた。それでも『Perfection』は音楽的に最高水準のアルバムであり、Warren Gが世に広めたロングビーチのサウンドをまさしく「パーフェクション」と呼べるレベルに引き上げている。

Twinzの『Conversation』やLil 1/2 Deadの『The Dead Has Arisen』と並び、Foesumの『Perfection』は最も過小評価されたG-Funkの傑作の一つだ。時代の波に乗れなかったことは惜しまれるが、逆にそれがこのアルバムに「発掘する喜び」を与えている。初めて聴いたとき、「なぜこれが埋もれているんだ」という驚きと興奮は格別なものがある。


日本との縁、そして今

興味深いことに、Foesumは知名度こそ限られているものの、日本やヨーロッパに特に強固なファン層を持ち、今もツアーと音楽制作を続けている。西海岸のサウンドが持つ普遍的なグルーヴが、国境を越えてリスナーの心を掴んでいるのだろう。日本のリスナーにとって、このトラックはどこか懐かしさと新鮮さが入り混じった感覚で響くはずだ。

「In The Wind (What Goes Around)」はただのG-Funkトラックではない。風に乗って漂うような浮遊感のあるビートの上に、ロングビーチで生きる者たちのプライドと哲学が刻まれた、時代を超えて聴かれるべき一曲である。まだ聴いたことがない方には、ぜひ今すぐ手を伸ばしてほしい。そして一度聴いたことがある方も、改めてじっくりと向き合ってみてほしい。きっと新しい発見がある。

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