GADORO – RUNNER feat. 般若 (Pro. PENTAXX.B.F)

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はじめに

2025年6月3日に先行配信され、同年7月2日リリースのアルバム『HOME』に収録された「RUNNER feat. 般若」は、GADOROが唯一無二と敬愛する般若を客演に招いた話題作です。この楽曲は、2025年3月に行われたGADOROの念願の武道館ワンマン公演で初披露され、大きな反響を呼びました。

プロデュースはPENTAXX.B.Fが担当し、ミックスはD.O.I.、マスタリングはJoe LaPortaが手掛けるという豪華布陣。ミュージックビデオの監督は、ヒップホップを中心に印象的な作品を多数手掛けるNasty Men$ahことFAN TAJIOが担当し、楽曲の熱量とスピード感をクールに描いた映像作品となっています。

楽曲のコンセプトとメッセージ

タイトルの「RUNNER」が示すように、この楽曲は長距離ランナーの如く走り続けるラッパー同士の熱い思いを描いています。最も特徴的なのは、GADOROと般若がお互いのリリックを引用しながらスピットしている点です。

冒頭の歌詞「居場所が無く 死んだ方が楽 無理だとやさぐれた 地下のカラス」というフレーズが象徴するように、かつて居場所のなかった二人が、今ではヒップホップというフィールドで確固たる地位を築き上げた軌跡が描かれています。

GADOROのヴァースには「あの頃じゃねえ」というワードが登場する一方、般若のヴァースではGADOROの楽曲『PINO』からの引用である「俺は可愛いビキニと海開き より茶割りに地鶏の炭火焼き」というフレーズが織り込まれています。また、般若のヴァースには、THE BLUE HEARTS『青空』を元ネタとする「運転手さん」リリックも登場し、NORIKIYOとの共演曲『運命 SADAME』からの系譜を感じさせます。

このように、過去の楽曲やリリックを引用し合うことで、二人のラッパーとしての歩みと、互いへのリスペクトが表現されています。

GADORO ── 底から這い上がった宮崎の希望

GADOROは1990年11月29日生まれ、宮崎県児湯郡高鍋町出身のMCです。高校2年生の時に般若の影響でラップを始めたという、まさに般若を師と仰ぐラッパーです。

MCバトル界では「KING OF KINGS」2016年・2017年の史上初2連覇を達成し、その名を轟かせました。テレビ朝日「フリースタイルダンジョン」にも3度出演し、真の日本一のバトルMCとしての実力を証明しています。

2017年1月にリリースした1stアルバム『四畳半』は、初登場ながらiTunes HIPHOPアルバムチャート1位、総合アルバムチャート4位を記録。リード曲の「クズ」は、葛藤の中で生きる自身の生きざまをさらけ出し、数多くの共感を呼びました。YouTubeでのMV再生回数は1000万回を超え、バトルMCの枠を超えてアーティストとしての立ち位置を確立しています。

GADOROの特徴は、とにかく韻を踏みまくるライミングセンスと、リスナーの心に深く突き刺さるリリックです。今でも宮崎県に住みながら全国のライブに飛び回るほど地元愛が強く、楽曲には宮崎の風景や宮崎弁が織り交ぜられています。等身大の生き様を描いた歌詞は、多くの若者の共感を呼び続けています。

そして2025年、GADOROは念願の日本武道館でのワンマンライブ「四畳半から武道館」を成功させ、さらなる高みへと到達しました。

般若 ── 日本ヒップホップの重鎮

般若は1978年10月18日生まれ、東京都世田谷区三軒茶屋出身のヒップホップMCです。日本人の母親と韓国人の父親を持つハーフで、自身のルーツを楽曲でも描いています。

高校生の頃、同級生の女性ラッパーRUMIが文化祭で披露した日本語ラップに衝撃を受け、ラッパーの道を歩み始めました。最初はDJを目指していましたが、RUMIに「韻の踏み方」を教えてもらい、わずか3ヶ月でフリースタイルのステージに挑んだという逸話があります。

当初は本名の嘉穂から「YOSHI」という名前で、RUMIとDJ BAKUと共に「般若」というグループを結成。グループ解散後、YOSHIからグループ名であった「般若」へと改名し、現在に至ります。

般若の音楽の特徴は、歯に衣着せぬストレートな物言いと、社会問題や平和をテーマにした熱いメッセージ性です。代表曲には、過去の日本の戦争と反戦をテーマとした「オレ達の大和」や「残党」などがあり、自らを「昭和の残党」と称しています。

2008年にはULTIMATE MC BATTLE(UMB)で優勝を果たし、MCバトルの実力も証明しています。テレビ朝日「フリースタイルダンジョン」では初代ラスボスとして2015年から2019年まで君臨し、その圧倒的な存在感と会場を沸かせる熱いライミングで、多くの挑戦者を退け、番組の顔として活躍しました。

そして2019年1月11日には、日本武道館で初のワンマンライブ「おはよう武道館」を開催し、ラッパーとしての頂点に到達しました。

般若は長渕剛に影響を受けており、ドラマや映画にも出演するなど、ラッパーの枠を超えた活動も展開しています。また、トレーニングにも熱心で、筋トレとヒップホップを融合させた書籍「筋トレ×HIPHOPが最強のソリューションである」を出版するなど、多方面で活躍を続けています。

私生活では、2014年にシンガーのSAYと結婚し、息子も誕生。良き父親としての一面も持ち合わせています。

アルバム『HOME』について

「RUNNER feat. 般若」が収録されるアルバム『HOME』は、GADOROの自身のレーベル「Four Mud Arrows」から3作目(通算8枚目)となる作品で、2025年7月2日にリリースされました。全14曲からなるこのアルバムには、般若のほかにハシシ、紅桜、FORK、ポチョムキン、街裏ぴんくなど豪華な客演が参加しています。

プロデュースには、PENTAXX.B.F、Kiwy、DJ PMX、Cosaqu、ikipedia、SUMIKI、DJ SHINODA、R.I.K、CHIVA from BUZZER BEATSなど、多彩なプロデューサー陣が名を連ねています。

タイトルの「HOME」には、地元宮崎への愛と、自分自身の居場所を見つけた喜びが込められているのでしょう。かつて「居場所が無く」と歌っていたGADOROが、今では確固たる「HOME」を手に入れた──そんなメッセージが感じられるアルバムです。

まとめ

「RUNNER feat. 般若」は、二人のラッパーが、長距離ランナーの如く走り続ける覚悟を示した楽曲です。互いのリリックを引用し合いながら、過去の苦悩と現在の成功、そして未来への決意を描いています。

GADOROにとって般若は、ラップを始めるきっかけを作った憧れの存在。その般若と肩を並べて楽曲を作り、共に武道館という頂点に立った今、二人は確実に日本のヒップホップシーンの重要な存在となっています。

2025年6月3日の夜19時にプレミア公開されたミュージックビデオと共に、この熱い楽曲をぜひ体感してください。走り続けることの意味、諦めないことの大切さ、そして自分の居場所を見つけることの喜びが、きっとあなたの心に響くはずです。

日本のヒップホップシーンの過去と現在、師と弟子の絆が交差するこの名曲は、すべてのランナーたちへの応援歌となるでしょう。

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