DJ PMX「ON THE WAY feat. GADORO, JASMINE」― ウェストコーストの哀愁とストリートの情熱が交差する名曲
2025年3月26日、日本のヒップホップシーンに新たな名曲が誕生した。DJ PMXの最新アルバム「THE ORIGINAL V」からの先行シングルとして配信された「ON THE WAY feat. GADORO, JASMINE」は、プレミアムなコラボレーションによって生み出された哀愁ソングである。
日本のウェストコースト・ヒップホップを牽引するDJ PMX
DJ PMX(ディージェイ・ピーエムエックス)は、日本にウェストコースト・ヒップホップを広めた第一人者であり、プロデューサー、DJ、そして洗足学園音楽大学の客員教授としても活動する宮崎県出身のレジェンドである。1980年代後半、日本のヒップホップが産声を上げた黎明期から数多くのアーティストをプロデュースし、アメリカ西海岸のヒップホップの影響を受けながら、ジャパニーズ・ウェストコースト・ヒップホップというスタイルを構築してきた。
2008年に自身のプロデュースワークの集大成ともいえるアルバム「THE ORIGINAL」をヒットさせて以降、同作をシリーズ化し、時代に即した数々のアーティストをフィーチャーしてきた。また、かつての名曲「Miss Luxury」がYZERRによってカバーされ、そのリバイバルも本人がプロデュースするなど、現在も進化を続けるプロデューサーとして注目を集めている。
ストリートから武道館へ―GADOROの軌跡
GADORO(ガドロ)は、1990年11月29日生まれ、宮崎県児湯郡高鍋町出身のMCで、本名は増本一博。高校2年生の時に般若の影響でラップを始め、MCバトルの日本一を決める大会「KING OF KINGS」で2連覇を果たし、その後は音源やライブ活動を中心に躍進している。
GADOROは、KOKの連覇後は楽曲の制作に集中し、背伸びをしない等身大の歌詞が若者の共感を呼び、今ではライブオファーが殺到する大人気ラッパーにまで上り詰めた。彼の楽曲の特徴は、金のネックレスや高級車といった華やかな世界ではなく、自分の身の丈を歌い、等身大の自分をさらけ出すこと。弱いところも情けないところも、恥ずかしいところもダサいところも楽しいことも、全部投影している。
2017年1月には1stアルバム「四畳半」をリリースし、ラッパーとして本格的にデビューを果たした。DJ PMXがアルバムエンジニアも務めるGADOROは、2020年11月にリリースされた「THE ORIGINAL IV」でもフィーチャーされ、両者の信頼関係の深さを物語っている。
日本R&Bシーンを牽引するJASMINE
JASMINE(ジャスミン)は、1989年5月19日生まれ、東京都出身の女性シンガーソングライターである。父はロック好きでギターを演奏し、母はブラックミュージック好きのピアノの先生という、家族全員が楽器演奏できる家庭に育った影響で、幼い頃から音楽に親しんできた。
13歳で横田飛行場の一般開放日にゴスペルクワイアのライブを初体験し、その魅力に取り付かれゴスペルクワイア「ゴスペルコネクション」に入門する。2009年6月24日、シングル「sad to say」でメジャーデビューし、CD発売に先駆けて配信開始された着うたフルが日本レコード協会調べの「RIAJ有料音楽配信チャート」で初登場1位を獲得した。
驚異的なヴォーカルパフォーマンスと、同世代の気持ち・感情を見事に表現した歌詞ですぐにその名が噂になり、歌いだして1年あまりでメジャー契約を結ぶことになった。2019年にSony MusicからEIGHT ENTERTAINMENTへ移籍し、現在は全国各地でライブ活動をしながら、コンスタントに楽曲をリリースしている。
三者三様の個性が織りなす「ON THE WAY」
「ON THE WAY」は、ラッパーGADOROとR&BシンガーJASMINEをフィーチャリングに迎えた哀愁ソングとして制作された。DJ PMXが長年培ってきたウェストコースト・ヒップホップのプロダクションに、GADOROの等身大のリリックとJASMINEの圧倒的な歌唱力が加わることで、これまでにない化学反応が生まれている。
この楽曲がリリースされた背景には、DJ PMXの音楽的進化がある。彼は2020年11月に¥ellow Bucks、MC TYSON、ジャパニーズマゲニーズのJAGGLA、孫ゴング、AYA a.k.a. PANDA、GADORO、盟友AK-69をフィーチャーしたソロ作4作目「THE ORIGINAL IV」を発表し、常に進化するプロデューサーとしての能力を見せつけた。そして、次の時代を見据えた5作目のアルバム制作において、GADOROとJASMINEという最高のパートナーを選んだのだ。
「THE ORIGINAL」シリーズの系譜
DJ PMXの「THE ORIGINAL」シリーズは、日本のヒップホップシーンにおける重要なマイルストーンとなってきた。2008年の第1作から始まり、各作品で時代を代表するアーティストたちをフィーチャーしながら、日本独自のウェストコースト・サウンドを追求してきた。
「THE ORIGINAL V」は、シリーズの集大成となることが期待されている。DJ PMXは自身のInstagramアカウントで、アルバム「THE ORIGINAL V」が2025年末までにリリースされることを正式に発表しており、「ON THE WAY」はその第一弾シングルとして位置づけられている。
各アーティストの相乗効果
GADOROの等身大のリリックとJASMINEの情感豊かなヴォーカルは、一見すると対照的に見えるかもしれない。しかし、DJ PMXのプロダクションの下では、両者の個性が見事に調和している。GADOROが描き出すストリートのリアルと、JASMINEが表現する繊細な感情の機微が、哀愁漂うメロディーの上で交差し、聴く者の心を揺さぶる。
GADOROは、巧みなライミングとリリカルなセンスで、叙情性豊かにさまざまな情景を描き出すラッパーとして知られ、生々しく吐き出される自分自身の生き様の中にも、温かい人間性を内包させたエモーショナルなラップが特徴である。一方、JASMINEはポップスとして驚愕のクオリティーとストリートR&Bのエッセンスが見事に融合し、歌詞の鋭い言葉選びも含め、新たな世代のアーティストとして評価されている。
楽曲のプロモーションと反響
「ON THE WAY feat. GADORO, JASMINE」は、音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて配信され、Apple Music「New in Hip-Hop」、「New Music Daily」、Spotify「New Music Everyday – tuneTracks」などの主要プレイリストに選出されるなど、リリース直後から高い評価を得ている。
4月2日20時には、「ON THE WAY feat. GADORO, JASMINE」のミュージックビデオがプレミアム公開され、ファンの間で大きな話題となった。ビジュアル面でも、三者のコラボレーションがどのように表現されているのか注目が集まっている。
日本のヒップホップとR&Bの架け橋
「ON THE WAY」は、単なるヒップホップとR&Bのコラボレーションを超えた意味を持っている。それは、異なるバックグラウンドを持つアーティストたちが、DJ PMXというプロデューサーの下で一つの作品を創り上げることで、日本の音楽シーンに新たな可能性を示したということだ。
ストリートで磨き上げられたGADOROのリアルなラップスキル、ゴスペルとブラックミュージックをルーツに持つJASMINEの圧倒的な歌唱力、そして80年代から日本のヒップホップシーンを牽引してきたDJ PMXの豊富な経験とプロデューススキル。これら三つの要素が融合することで、世代を超えて愛される普遍的な楽曲が完成したのである。
まとめ
DJ PMX「ON THE WAY feat. GADORO, JASMINE」は、2025年の日本のヒップホップシーンを代表する楽曲の一つとなることは間違いないだろう。レジェンドプロデューサーの円熟した技術、MCバトルで名を馳せたラッパーの人間味溢れるリリック、そしてR&Bシーンを牽引するシンガーの圧倒的な表現力が一つになったこの楽曲は、哀愁という普遍的なテーマを通じて、多くのリスナーの心に響くメッセージを届けている。
年末にリリースが予定されている「THE ORIGINAL V」への期待も高まる中、この先行シングルは、DJ PMXが次の時代に何を提示しようとしているのかを示す重要な作品となっている。三者のケミストリーが生み出す新しいサウンドを、ぜひ体感してほしい。

 
  
  
  
  

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