Jin Dogg – ” OMG ” (Prod. Homunculu$ & Mvdmvry)

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イントロダクション

2023年、日本のヒップホップシーンに衝撃を与えた一曲が誕生した。大阪を代表するラッパー・Jin Doggによる「OMG」は、クラブでの喧嘩を彷彿とさせるアンセムとして2024年を通じて人々の記憶に刻まれることになった楽曲だ。Homunculu$とMvdmvryという2人のプロデューサーによって制作されたこのトラックは、Jin Doggのキャリアにおいても重要な位置を占める作品となっている。

Jin Doggとは何者か

1990年9月10日、大阪府大阪市生野区で生まれたJin Dogg(本名:Jake Yoon)は、在日韓国人3世のラッパーである。彼のアーティスト名は、Snoop Doggと韓国原産の犬種である珍島犬(Jindotgae)を組み合わせたものだ。

壮絶な生い立ちとアイデンティティの葛藤

Jin Doggは韓国人の両親を持つ在日3世として生まれたが、生まれた時から父親は一緒に住んでおらず、母親の意向で大阪市内を転々としながら育った。10歳の時に家族とともに韓国に移住したものの、日韓の関係性から差別的な扱いを受けることになる。日本では韓国人と言われ、韓国では日本人と言われる日々に苦悩した経験は、ラッパーJin Doggに少なくない影響を与えている。

ヒップホップとの出会い

中学時代、韓国のアメリカンスクールに通っていたJin Doggは、友人がフリースタイルをしているのを見てラップを始めるきっかけを得た。最初に購入したヒップホップアルバムは、アトランタのラッパーLUDACRISのメジャー1stアルバム「Back For The First Time」で、当初はUSメインストリームのヒップホップを好んで聴いていた。

アメリカンスクールをサボりすぎて退学となったJin Doggは日本の高校に編入し、そこで出会った友人にレコーディングに誘われたことでラップにのめり込んでいく。

音楽キャリアの確立

2015年頃、イベントで紹介されたスタジオオーナーのYoung Yujiro(当時の名義はRadoo)と意気投合し、Jin DoggはYoung Yujiroのスタジオに通うようになった。ファーストミックステープ『1st High ~抱腹絶倒~』をリリースするにあたり、レーベル「Hibrid Entertainment」を共同設立した。

この頃、キース・エイプやOkasianを通してトラップに触れることになり、それまでGファンクの影響が強かったJin Doggの音楽性はトラップに近づいていった。

2019年には二面性をテーマにした待望の1stアルバム「SAD JAKE」・「MAD JAKE」をダブルリリースし、ラッパーとして確かな地位を築いた。

「OMG」の詳細

リリース情報

「OMG」は2023年12月16日にリリースされたアルバム『Blood & Bones (BLOOD)』に収録されている。全10曲で構成されたこのアルバムの3曲目に位置し、楽曲の長さは2分5秒となっている。

プロデューサーについて

この楽曲を手がけたHomunculu$とMvdmvryという2人のプロデューサーは、日本のトラップシーンにおいて重要な役割を果たしているビートメイカーだ。彼らが作り上げたビートは、Jin Doggの攻撃的なフロウを完璧に支えている。

楽曲の特徴とテーマ

Jin Doggの得意分野は、スキーマスク、中指を立てるジェスチャー、そしてクラブで殴り合いが始まるようなアンセムである。「OMG」はこの公式に完璧に当てはまる作品だ。

この日本人MCは、エネルギーに満ち溢れた楽曲を作ることに長けている。「OMG」は、まさにその真骨頂を示す一曲となっている。

楽曲のテーマは、ストリートで生き抜いてきた自身の経験、仲間への忠誠心、そして成功への執念だ。Jin Doggは押韻をあまり重視せず、関西弁を生かした、話しているようなスタイルのラップを得意としており、「OMG」でもその特徴が存分に発揮されている。

ミュージックビデオと文化的背景

「OMG」のミュージックビデオの撮影地は、大阪の韓国系教会の前となっている。これは、Jin Doggのルーツである大阪・生野区の韓国人コミュニティへのオマージュでもある。

Jin Doggの代表曲の一つである「街風」の冒頭が「こちら大阪生野区朝鮮人部落」というフレーズで始まるように、彼は自身のアイデンティティと出身地を音楽の中で常に表現し続けている。

「OMG」ブランドの展開

Jin Doggは「OMG」を単なる楽曲タイトルにとどめず、自身が主宰するブランド名としても使用している。2024年には、米ミリタリーウェアブランドのAVIREX(アヴィレックス)とコラボレーションを発表し、象徴的なバーシティジャケットを制作した。

このジャケットには、1980年代から使用されている象徴的なロゴがフロントに配置され、背面には「OMG」のシグネチャーグラフィックが施されている。

Jin Doggの音楽スタイルと影響

リリックの書き溜めはあまりせず、基本的にはスタジオで全てを仕上げるスタイルを取っている。楽曲制作のときには感情を重視しており、音楽を自分なりのストレス発散方法であるとしている。

好きなアーティストとしてBones・Smokepurpp・Ghostemaneを挙げており、影響を受けたアーティストとしてANARCHY・MACCHO・漢・メシアTHEフライ・Gizmo・Baneを挙げている。

Jin Doggの音楽は、生々しく狂気じみた叫び声を上げながら荒々しく動き回るハードコアの影響を受けた爆発的なナンバーから、より落ち着いたメランコリックなヒップホップソングまで、突然飛躍することができる。

現在の活動と今後

2024年は「SONICMANIA」や「OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2024」への出演など、ヒップホップ以外のフィールドにも活躍の場を広げている。

また、2024年8月にはNetflix全世界独占配信アニメ『ケンガンアシュラ』のエンディング主題歌『NANI?』をリリースするなど、アニメ音楽の分野でも活躍の幅を広げている。

Jin Doggは窪塚洋介が主演を務める映画「Sin Clock」(2023年2月公開)に初出演し、半グレの男・ヤスを演じた。圧倒的な存在感と狂気を感じさせる演技に驚きと絶賛の声が続出した。

まとめ

「OMG」は、Jin Doggというアーティストの本質を凝縮した楽曲である。在日韓国人3世として日本と韓国の間で揺れ動いた経験、大阪・生野区という環境で培われたストリートの感覚、そして音楽を通じて自分自身を表現し続ける姿勢。これらすべてが、2分5秒という短い時間の中に詰め込まれている。

「OMG」は2024年を通じて多くの人々に影響を与え続けた楽曲として記憶されるだろう。Homunculu$とMvdmvryによる重厚なトラップビートと、Jin Doggの生々しいリリックの組み合わせは、日本のヒップホップシーンにおいて一つの到達点を示している。

日本語、韓国語、英語の3ヶ国語を自在に操るトリリンガルラッパーとして、Jin Doggは日本のヒップホップシーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。「OMG」は、そんな彼のキャリアにおける重要なマイルストーンの一つとなる楽曲だ。

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