SEEDA, Junkman, kZm「BUSSIN」

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はじめに

2015年10月30日にリリースされたSEEDA, Junkman, kZm「BUSSIN」は、日本のヒップホップシーンにおいて世代を超えた重要なコラボレーションとして記録される楽曲です。YENTOWNレーベルからリリースされたこの楽曲は、プロデュースをChaki Zuluが手がけ、伝説のラッパーSEEDAと、YENTOWNを立ち上げたJunkman(JNKMN)、そして当時最年少メンバーだったkZmという三世代のラッパーが共演した、まさに奇跡的な作品です。

2015年にはSEEDA, Junkman & kZm名義による「BUSSIN」が人気ミックスCDシリーズ「CONCRETE GREEN Vol. 13」に収録され、若手ラッパーたちの知名度を一気に押し上げました。

Junkman(JNKMN) – YENTOWNの創設者

JNKMN(ジャンメン)は青森県の藤崎町出身で、実家はりんご農家という異色の経歴を持つラッパーです。90年代後半、16歳よりラッパーとして活動を始め、4649dz名義、Tokarev名義を経て、現在のJNKMN名義に至ります。

2015年の正月頃、Chaki Zuluとともに「イケてる奴らをピックアップしてクルーを作ろう」と本格的に後のYENTOWN設立に動き出しました。古着屋JUNKMANIAにてkZmがアルバイトを始め、そこにMonyHorseがKOHHとともに度々遊びに来ており、次第にメンバーが集まっていったのです。

2017年、MONYPETZJNKMNによる1stアルバム『磊』リリースパーティーの前日に大麻取締法違反(所持)で逮捕され、服役し、2018年12月(クリスマス頃)に出所という波乱も経験しましたが、現在も精力的に活動を続けています。

kZm – 渋谷生まれの新世代

kZm(カズマ、1993年生まれ)は日本のラッパーで、YENTOWNのメンバーです。1994年渋谷生まれ、渋谷育ちで、父親の音楽好きという環境もあり、幼少期からUSのファンクやソウルに親しんでいました。

小学校高学年の時、代々木公園でバスケをするようになり、バスケットコートでは外国人がスピーカでHIPHOPを流しており、本格的にラップに興味を持ちました。kZmが初めて買ったCDはEminemの日本版アルバムだったそうです。

2015年にdiZZyら友人たちとkiLLaを結成し、並行してYENTOWNに加入。2016年にはバウアーやBCDMGらの楽曲参加を経て、kiLLa脱退を表明し、YENTOWNでの活動に専念しました。

Chaki Zulu – YENTOWNの黒幕

Chaki Zulu(チャキズールー)は、静岡県沼津市出身の音楽プロデューサー、作曲家、レコーディング・エンジニアです。エレクトロ・デュオ「THE LOWBROWS」に所属していましたが、2015年にDJを引退し、レーベル『YENTOWN』を創立しました。

名前の由来は、アフリカのズールー族で、当時あだ名で”Chaki”と呼ばれていたそうですが、シャカ・ズールーと似ているので友人がチャキ・ズールーと呼び出したとのことです。

Chaki Zuluの特徴は、ビートメイクだけでなく、リリックやボーカルのディレクションも行い、楽曲のクオリティを高め続けている点です。YENTOWNのメンバーに関しては、必ずスタジオに来てもらい、「そう歌うならビートもこう変えるわ」という形で、アーティストと共に作り上げていくスタイルを貫いています。

「BUSSIN」が持つ意味

「BUSSIN」というタイトルは、スラングで「最高」「イケてる」といった意味を持ちます。この楽曲は、まさにYENTOWNの「最高」な瞬間を切り取った作品と言えるでしょう。

1980年生まれのSEEDA、90年代後半からラップを始めたJunkman、そして1993年生まれのkZm——約15歳の年齢差がある三人が、Chaki Zuluのプロデュースの下で一つの楽曲を作り上げた。これは単なるコラボレーションを超えて、日本のヒップホップシーンにおける世代間の継承を象徴する出来事でした。

YENTOWNという新しいムーブメント

YENTOWNは、従来のヒップホップクルーとは一線を画す存在です。特定の地域(フッド)に縛られず、年齢も出身も国籍もバラバラのメンバーが、純粋に音楽性と人間性で繋がったクルー——それがYENTOWNの本質です。

「BUSSIN」は、そんなYENTOWNの初期を象徴する楽曲の一つです。伝説のラッパーSEEDAを迎えることで、YENTOWNは単なる新興クルーではなく、日本のヒップホップの歴史と繋がる存在であることを示しました。

CONCRETE GREEN Vol. 13への収録

「BUSSIN」が人気ミックスCDシリーズ「CONCRETE GREEN Vol. 13」に収録されたことは、この楽曲にとって大きな意味を持ちました。CONCRETE GREENは、SEEDAとDJ ISSOによる伝説的なミックスCDシリーズで、若手の未発表楽曲を収録し、新しい才能を世に送り出してきました。

そのシリーズに「BUSSIN」が収録されたことで、JunkmanとkZmの名前は一気に広まり、YENTOWNへの注目度も高まったのです。

楽曲の音楽性

Chaki Zuluがプロデュースしたトラックは、ダークでヘヴィな雰囲気を持ちながらも、三人のラッパーそれぞれの個性を引き立てる絶妙なバランスを保っています。

SEEDAの落ち着いた大人のフロウ、Junkmanの独特なかすれた声とハードなリリック、そしてkZmのフレッシュで文学的なリリック——三者三様のスタイルが、一つのトラックの上で見事に調和しています。

2015年という時代背景

2015年は、日本のヒップホップシーンにとって重要な年でした。インターネットとSNSの普及により、従来のメディアを介さずとも音楽を発信できる時代が到来し、新しいスタイルのラッパーたちが続々と登場していました。

YENTOWNは、まさにそんな新時代を象徴するクルーとして誕生しました。「BUSSIN」は、その始まりを告げる重要な一曲だったのです。

その後の展開

「BUSSIN」のリリース後、YENTOWNは急速に成長を遂げました。kZmは2018年に1stアルバム『DIMENSION』、2020年には2ndアルバム『DISTORTION』をリリースし、Apple Musicアルバム総合ランキング1位を獲得。

Junkmanも2020年に1stソロアルバム『JNKMN NOW』をリリースし、ソロアーティストとしての地位を確立しました。

まとめ

SEEDA, Junkman, kZm「BUSSIN」は、YENTOWNの黎明期を象徴する重要な楽曲です。伝説のラッパー、クルーの創設者、そして最年少メンバー——三世代が交わることで生まれた化学反応は、日本のヒップホップシーンに新しい風を吹き込みました。

Chaki Zuluのプロデュースの下で作り上げられたこの楽曲は、単なるコラボレーションを超えて、世代間の継承と、新しいムーブメントの始まりを告げる歴史的な一曲となったのです。

「BUSSIN」——まさに「最高」な瞬間を切り取ったこの楽曲は、今も多くのヒップホップファンの心に残り続けています。


楽曲情報

  • タイトル: BUSSIN
  • アーティスト: SEEDA, Junkman, kZm
  • プロデュース: Chaki Zulu
  • リリース日: 2015年10月30日
  • 時間: 3分44秒
  • レーベル: YENTOWN
  • 収録: CONCRETE GREEN Vol. 13

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