2025年1月11日にリリースされたアルバム『sanctuary』に収録された「隠れ里~sanctuary~」は、神奈川県川崎大師出身のラッパーJunior Hsusとスウェーデン出身のプロデューサーISIDORによるコラボレーション作品の表題曲です。この楽曲は、盛り上がりを見せる川崎のヒップホップシーンに花を添える重要な一曲として注目されています。
アルバム『sanctuary』について
『sanctuary』は全13曲で構成され、DA’AT RECORDSからリリースされました。アルバムタイトルである「sanctuary」は聖域を意味し、許された人のみが入ることができる特別な場所という概念が込められています。
トラックリストは以下の通りです:
- 無原罪壊胎
- 軛
- 隠れ里~sanctuary~
- 白詰草
- 魂呼ばい
- skit
- 恋焦がれ
- skit 被昇天
- グランベリー
- 大師河原〜中瀬/昭和町/御利益通り表参道厄除門脇
- ×ラ×××イ×第×の女
- 巣 larga noche
- 日々に無理矢理ありがと
アルバムのプロモーションとして、2024年12月27日に「日々に無理矢理ありがと」が先行デジタルリリースされました。
Junior Hsus – 川崎大師が育んだ表現者
Junior Hsus(ジュニア・ヘスス)は神奈川県川崎大師出身のラッパーで、DA’AT RECORDSに所属しています。彼の特徴は抜きん出た表現力にあり、スペイン語と日本語を織り交ぜながら独自の世界観を構築しています。
2016年9月にリリースしたミニアルバム『sick bed』で頭角を現し、2019年3月20日には1stフルアルバム『Serpent Temptation』を発表。このアルバムには「神奈川は川崎大師 ここで育って ここで恥を覚え ここで踏ん張って Voy a morir aqui(ここで死ぬ)」という彼の強い地元愛が刻まれています。
Junior Hsusの音楽は、川崎南部の「見えない」部分から人類がどの方向へ向かっているのか、正しい思想や正義はどこにあるのかを問いかけています。彼の経験した出来事を独自のPOPへと昇華し、聴く者の脳へとこびりつくような叫びを放っています。
ISIDOR – スウェーデンからの奇才
ISIDORはスウェーデン出身のプロデューサーで、本作で Junior Hsusの世界観を彩る重要な役割を担っています。ISIDORのプロダクションは、Junior Hsusが話す風景に真体を与え、聴く人の「目」の裏に情景を浮かび上がらせる力を持っています。
御遊戯的なジャンルとはかけ離れた情景描写が特徴で、13在るトピックをどう受け止めるかはリスナーに委ねられています。スウェーデンと川崎という地理的に離れた場所から生まれた化学反応が、このアルバムの大きな魅力となっています。
「隠れ里~sanctuary~」の世界観
楽曲タイトルの「隠れ里」は、日本の伝統的な概念で、外界から隔絶された秘密の場所を意味します。それを英語の「sanctuary(聖域)」と重ね合わせることで、精神的な避難所や心の拠り所という普遍的なテーマを表現しています。
現代社会において、人々は日々様々なプレッシャーや葛藤に直面しています。この楽曲は、そんな中で自分だけの「聖域」を見つけることの重要性を訴えかけているのでしょう。Junior Hsusが描く川崎の風景は、単なる地理的な場所ではなく、彼にとっての精神的な拠り所、まさに「隠れ里」なのです。
DA’AT RECORDSと川崎のヒップホップシーン
DA’AT RECORDSは川崎を拠点とするレーベルで、個性溢れるメンバーが揃っています。レーベルメイトには、YAGIやビートメイカーの山崎貴史などがおり、重厚感と疾走感の交差するビートで川崎のヒップホップシーンを牽引しています。
川崎のヒップホップシーンは近年、盛り上がりを見せており、BAD HOPなどの著名なクルーも川崎を拠点に活動してきました。Junior Hsus & ISIDORの『sanctuary』は、そんな川崎シーンに新たな彩りを加える作品として位置づけられています。
楽曲が持つメッセージ
「隠れ里~sanctuary~」は、アルバムの表題曲として、作品全体のテーマを象徴する重要な役割を果たしています。許された人のみが入ることができる聖域という概念は、単に排他的な空間を意味するのではなく、真摯に音楽と向き合い、アーティストの世界観を理解しようとする者だけが到達できる境地を表しているのかもしれません。
Junior Hsusの言葉選びは独特で、彼が「話す風景は真体を得ており」と評されるように、抽象的でありながらも確かな実在感を持っています。ISIDORのプロダクションがその言葉に命を吹き込み、聴く者の心の中に鮮明なイメージを描き出します。
まとめ
Junior Hsus「隠れ里~sanctuary~」は、川崎という土地に根ざしながらも、普遍的なテーマを扱った深い作品です。スウェーデン出身のISIDORとのコラボレーションによって、ローカルとグローバルが融合した独自の音楽世界が構築されています。
御遊戯的なジャンルとはかけ離れた情景描写と、聴く人の「目」の裏に浮かび上がる風景は、日本のヒップホップシーンにおいて唯一無二の存在感を放っています。盛り上がりを見せる川崎のヒップホップシーンから放たれたこの作品は、聖域への道標として、多くのリスナーに新たな音楽体験を提供するでしょう。
アルバム『sanctuary』全体を通して、Junior Hsusは13のトピックを提示し、リスナーに問いかけます。「君はどう向き合うか」と。この問いに対する答えは、一人一人の心の中にある「隠れ里」で見つけることができるのかもしれません。
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