2023年12月16日にリリースされたJin Doggのアルバム『Blood & Bones (BLOOD)』の冒頭を飾る楽曲「PRADA」は、大阪を拠点に活動するラッパーDADAをフィーチャーし、プロデューサーデュオOVER KILLによるハードなビートが特徴的な注目曲です。約3分という短い尺の中に、両アーティストの生き様とストリート感覚が凝縮されています。
アルバム『Blood & Bones (BLOOD)』について
本作はJin Doggの2部作プロジェクトの第1弾として制作されました。全10曲、約24分という構成で、リリース直後にiTunes StoreのHip-Hop/Rapチャートで1位を獲得するなど、高い評価を得ています。アルバムタイトルの「Blood & Bones」は、血と骨という人間の本質的な要素を表現しており、暴力性と感傷性という二面性をテーマにした作品です。
続編となる『Blood & Bones (BONES)』は2024年2月17日にリリースされ、全11曲約35分の作品として2部作が完結しました。
フィーチャリングアーティスト DADA
DADAは日本のヒップホップアーティストで、NokeyBoyzのメンバーとしても知られています。2015年から活動を開始し、現代的なヒップホップサウンドと独自のスタイルで注目を集めてきました。
2024年には、日本のラップシーンがグローバルに注目される中、Gen-Zラッパーとして存在感を示しています。GRAMMYの記事では、DADAが一人親家庭で育った経験を率直にラップしている点が取り上げられ、Neneの楽曲「Heavy」では母親への感謝を表現するヴァースが高く評価されました。
DADAの音楽は、ヒップホップに電子音楽やその他のジャンルを融合させた独特なサウンドが特徴で、「High School Dropout」「No Holidays」「Welcome to Nokey」などの楽曲が人気を博しています。彼の作品は、内省的でありながらもエネルギッシュな要素を持ち、現代社会における若者のリアルな姿を映し出しています。
プロデューサー OVER KILL
OVER KILLは、日本のDJ/プロデューサーFUJI TRILLとアメリカ出身で日本を拠点に活動するプロデューサーKNUXによるデュオです。二人はメタルコアにインスパイアされたアプローチでヒップホップを制作し、SoundCloudのスクリーモラップのサブジャンルと通じる要素を持っています。
OVER KILLのサウンドは、エレキギターのサンプル、速いドラム、そして轟くベースが特徴で、Jin Doggのようなハードコアなラッパーとの相性が抜群です。彼らの音楽は、攻撃的で妥協のないスタイルで、ラウドで内臓に響くようなサウンドを生み出しています。
過去には、Red EyeやD.Oなどのアーティストとも制作を重ねており、日本のヒップホップシーンにおいて、よりヘビーでダークなサウンドを追求するプロデューサーとして知られています。
楽曲のテーマとメッセージ
タイトルの「PRADA」は、高級ブランドを象徴しながらも、単なる物質的な成功を追い求めるのではなく、自分らしさを貫くことの重要性を表現しています。歌詞の中では、やりたいことだけをやり、書きたい歌詞を書き、思っていることを歌うという、アーティストとしての自由と誠実さが強調されています。
Jin Doggは、周囲の雑音や無駄な干渉を拒絶し、本当に大切な仲間たちと共に道を切り開いていく姿勢を示しています。「なりたい自分になる」という冒頭のフレーズは、外部からの期待や社会的なプレッシャーに屈することなく、自分の信念を貫くという強いメッセージとなっています。
DADAのヴァースでは、若い世代が直面する現実や葛藤が表現され、二人のラッパーが異なる視点から「本物であること」の価値を訴えかけています。
サウンドプロダクション
OVER KILLによるプロダクションは、ハードなドラムとヘビーなベースラインを基調とし、そこにエレキギターの要素を加えることで、ラップとロックの境界線を曖昧にする攻撃的なサウンドを構築しています。このアプローチは、Jin Doggの荒々しいエネルギーとDADAの現代的なフロウを完璧に補完しており、楽曲全体に緊張感と爆発力を与えています。
約3分という短い尺ながら、無駄な要素を一切排除した密度の高いトラックは、リスナーに強烈な印象を残します。
『Blood & Bones』プロジェクトの意義
このアルバムシリーズは、Jin Doggのアーティストとしての成熟を示す重要な作品となりました。『Blood & Bones (BLOOD)』では、WATSONやTAKABOなどのアーティストとのコラボレーションも収録されており、大阪のヒップホップシーンの現在を映し出す作品となっています。
「PRADA」は、そのオープニングトラックとして、アルバム全体のトーンを設定する重要な役割を果たしており、Jin DoggとDADAという二人の才能あるアーティストの化学反応が、日本のヒップホップシーンに新たな可能性を示しています。
まとめ
Jin Dogg「PRADA」feat. DADA (Prod. OVER KILL) は、ストリートのリアリティと野心、そして本物志向を貫く姿勢が凝縮された楽曲です。OVER KILLの攻撃的なプロダクション、Jin Doggの荒々しいエネルギー、DADAの若い世代の視点が融合し、現代の日本ヒップホップシーンにおける重要な一曲となっています。
『Blood & Bones (BLOOD)』というアルバムの扉を開く本作は、妥協のない音楽性と強烈なメッセージで、リスナーに深い印象を残す作品です。日本のヒップホップが持つ多様性と深さを体感できる楽曲として、ぜひチェックしてみてください。
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