はじめに
2023年12月29日にリリースされた「JAH LION B Edition」は、岡山県津山市が誇る二人のラッパー、4PRIDEと紅桜によるコラボレーション楽曲です。本楽曲は、津山エノックリン出身の重鎮アーティストたちが、長年の絆を通じて作り上げた珠玉の一作となっています。
アーティスト紹介
4PRIDE(フォープライド)
4PRIDEは岡山県津山市出身、Party Gun Paul(PGP)所属のラッパーです。「ギャングかぶれのイリーガルじゃねえ!!背負った分だけ意地があるだけ!!」をモットーに、真っ直ぐなリリックを力強く吐き出すスタイルで知られています。
経歴のハイライト:
- 1999年:B.O.T(BLACK OF TOP)を結成
- 同時期にYAMATOとのユニット「MASTER BULLDOG」を結成
- 2006年:GHETTO 4 PRIDEとして1stミニアルバム「REAL INTENSION」をリリース
- 2013年:Party Gun Paulに正式加入
- 現在:全国のヘッズ達に絶大な支持を得ている
4PRIDEの楽曲は、自身の過去と向き合い、強い覚悟を感じさせる正統派ヒップホップ。MOBB DEEPやJADAKISSのような古き良きハードコア・ヒップホップを思わせるアティチュードを貫いています。
紅桜(べにざくら)
1987年11月17日生まれ。岡山県津山市エノックリン出身のラッパーで、その独特なフロウと津山オリジナルのスタイルで日本のヒップホップシーンに衝撃を与え続けています。
名前の由来: 友人の死を機に漫画「銀牙」の登場キャラクター「紅桜」の生き様に感銘を受け、その名を冠することを決意。単なる響きではなく、深い想いが込められた名前です。
音楽的特徴:
- RAP とBLUESが融合したような独特のフロウ
- 歌謡曲や演歌の要素を取り入れた表現
- 津山の方言を活かした唯一無二のスタイル
- dj honda Recordingsからのリリースも果たしている
紅桜は2024年にはドキュメンタリー映画「ダメな奴~ラッパー紅桜 刑務所からの再起~」の主人公となり、その壮絶な人生と音楽への情熱が全国に知られることとなりました。
津山エノックリンという地域性
両アーティストの出身地である「エノックリン」は、岡山県津山市の榎地区の通称です。この地名は、地元の住民がニューヨークのブルックリンから文字って名付けたもので、閉ざされた環境の中で育まれた強い絆とファミリー愛が、彼らの音楽の根幹を成しています。
この地域は:
- 車のナビにも登録されていないほど隔絶された場所
- 「暴力」と「ドラッグ」が身近な存在だった過酷な環境
- 同時に強い結束力とリアルなストリート文化を育んだ土地
Party Gun Paul(PGP)という系譜
4PRIDEと紅桜が所属するParty Gun Paulは、津山ヒップホップシーンの中核を成すクルーです。YAS、VOCA Luciano、HKR、DON KABACHI、YAMATOなど、錚々たるメンバーが所属し、互いにコラボレーションを重ねながら津山のヒップホップ文化を全国に発信し続けています。
楽曲「JAH LION B Edition」について
リリース情報
- リリース日:2023年12月29日
- 形態:デジタルシングル
- 収録時間:約3分
- 配信プラットフォーム:Spotify、Apple Music、Amazon Music Unlimited等
楽曲の背景
「JAH LION B Edition」というタイトルには深い意味が込められています。「JAH」はラスタファリ文化における神を表す言葉であり、「LION」は王者や強さの象徴。この二つの要素が組み合わさることで、スピリチュアルな強さと地上での覇道を表現しています。
元々4PRIDEは2014年にPGPから「JAH LION feat. 紅桜」をリリースしており、今回の「JAH LION B Edition」は、その楽曲の新たなバージョンとして位置づけられます。長年の絆を持つ二人のアーティストが、時を経て再び同じテーマで楽曲を制作したことに、深い意味があります。
音楽的特徴
楽曲では、4PRIDEの骨太なラップと紅桜の独特なフロウが見事に調和しています。津山という地域性を色濃く反映した方言を交えながら、両者の人生経験と覚悟が込められたリリックが展開されます。
プロダクション面では、Party Gun Paulと長年タッグを組むDJ KAJIらプロデューサー陣の手腕により、現代的でありながらも古典的なヒップホップの美学を感じさせるビートが提供されています。
楽曲が持つ文化的意義
地方ヒップホップの代表作
「JAH LION B Edition」は、東京中心のヒップホップシーンとは一線を画す、地方都市の等身大のリアリティを歌った作品です。津山という地方都市から発信されるメッセージは、全国の同様の環境で育った若者たちにとって、強いメッセージ性を持っています。
真正性(オーセンティシティ)の体現
両アーティストの歌詞には、見栄や虚飾のない、生の体験に基づくリアリティがあります。これは日本のヒップホップにおいて常に議論される「真正性」の問題に対する、明確な回答の一つと言えるでしょう。
継承と革新
津山のヒップホップ文化を次世代に継承しながらも、常に新しい表現を模索する姿勢は、日本のローカルヒップホップシーンにとって重要な指標となっています。
おわりに
「JAH LION B Edition」は、単なる楽曲を超えて、津山という地域のカルチャー、二人のアーティストの人生、そして日本のヒップホップの多様性を体現した作品です。現在、各種音楽配信プラットフォームで聴くことができるこの楽曲は、日本語ラップの深化と地方文化の豊かさを同時に味わえる貴重な一作となっています。
4PRIDEと紅桜、そしてParty Gun Paulの今後の活動からも目が離せません。津山から発信される本物のヒップホップが、これからも日本の音楽シーンに新たな風を吹き込んでくれることでしょう。
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