Dr. Dre「Xxplosive」

BLACK

はじめに

1999年、ヒップホップ界の巨匠Dr. Dreが7年ぶりにリリースした傑作アルバム「2001」の中でも、特に際立った輝きを放つ楽曲がある。それが「Xxplosive」だ。Nate Dogg、Kurupt、Six-Two、Hittmanをフィーチャーしたこの楽曲は、正式なシングルとしてリリースされることはなかったにもかかわらず、アーバンラジオで絶大な人気を博し、後のヒップホッププロデューサーたちに計り知れない影響を与えた。とりわけKanye Westが「自分のサウンド全体をこの楽曲から得た」と公言するほど、「Xxplosive」は音楽史における重要な転換点となった作品である。

アルバム「2001」の歴史的背景

Dr. Dreの復活プロジェクト

「2001」(The Chronic 2001またはThe Chronic IIとも呼ばれる)は、Dr. Dreの2枚目のスタジオアルバムで、1999年11月16日にAftermath EntertainmentとInterscope Recordsから、1992年のデビューアルバム「The Chronic」のフォローアップとしてリリースされた。

このアルバムは、Dr. Dreにとって音楽界への本格的な復帰作品として位置づけられる。数年間にわたって大きな音楽的声明を発表していなかった後の、ラップ界の復活エキスパートの一人による大作カムバックとして、業界内外から大きな注目を集めた。

商業的成功と批評家の評価

アルバムは米国Billboard 200チャートで2位でデビューし、初週に51万6000枚を売り上げた。チャート成功を収めた3枚のシングルを生み出し、Recording Industry Association of America(RIAA)によって6倍プラチナの認定を受けている。2015年8月の時点で、このアルバムは米国で780万枚を売り上げている。

「Xxplosive」の制作過程と複雑な経緯

楽曲の起源と変遷

「Xxplosive」の制作過程は、現代のヒップホップ制作の複雑さを物語る興味深いストーリーに満ちている。「Xxplosive」のインストゥルメンタルは、もともとラッパーのKing Tが彼のデビューAftermath Entertainmentアルバム「The Kingdom Come」で使用するために作られたものだったが、このアルバムのリリースが数年間延期され、最終的にKing TがレーベルからPulverizer Agentを去ったため未使用となった。

プロダクションの詳細分析

Dr. DreとMel-Manの共同プロダクション

「Xxplosive」はDr. DreとMel-Manによってプロデュースされた。楽曲の制作過程において、Royce da 5’9″は当時の制作環境について「Mel-Manがそこにいて、私がそこにいるときはいつもタイトな感じだった。Mel-Manがアイデア、ビートのアイデアを始めて、Dreが彼のDre的なことをそれに加える。もしMarshall(Eminem)が何かを思いつかなければ、私が何かを思いつく。私たちの誰かがビートのアイデアを持っていれば、それは自由に流れる創造的なタイプのものだった」と回想している。

サンプリングソースの詳細

「Xxplosive」はSoul Mann & the Brothersの「Bumpy’s Lament」をサンプルし、Snoop Doggの「Ain’t No Fun (If the Homies Can’t Have None)」をインターポレートしている。

Dr. DreとMel-Manは、Soul Mann and the BrothersによるIsaac Hayesの「Bumpy’s Lament」カバーを初めてサンプリングしたわけではない。その栄誉はFabian Hamiltonに属し、彼がLil Kimの「Drugs」のためにそれをフリップした。しかし、Blaxploitationの名曲の官能的で大気的な再構築を背骨を硬直させるトラップドラムリズムの上に設定した「Xxplosive」を、Erykah Baduの「Bag Lady」や他の数え切れないほど多くのトラックが後に模倣した。

制作上の争議

楽曲の制作には興味深い論争も存在する。2012年のAllHipHopとのインタビューで、元Dr. DreのコラボレーターであるChris Taylorは、「Xxplosive」のプロダクション制作を手助けしたが、Dr. Dreが彼の貢献をクレジットしていないと主張した。Taylorは、Dr. Dreがトラックでの彼の作業に対する基本的な1,500ドルの報酬を支払わなかった後、法的措置を取ったと申し立てた。Taylorは依然として公式クレジットを受けていないが、この争議によってDr. DreがMel-Manを2001での彼のプロダクション作業に対して適切にクレジットすることを余儀なくされたと主張した。

アーティストたちの貢献

Nate Doggの伝説的パフォーマンス

Nate Doggのボーカルは彼の以前の代表作である「Ain’t No Fun」を思い起こさせ、楽曲全体に独特の魅力を与えている。LL Cool Jは「Nate Doggを少し称賛できないか?彼のリズムを聞いてくれ。このジョイントはここでクレイジーだ」と彼のパフォーマンスを絶賛している。

各アーティストの役割分担

楽曲はKurupt、Nate Dogg、Six-Twoがヴァースを担当し、Hittmanがコーラスを歌っている。テキサス出身の新人で「freakaholic」のSix-Twoがlascivousness(好色さ)を加えている。

Kanye Westへの決定的影響

「Xxplosive」からの音楽的DNA

「Xxplosive」の最も重要な遺産の一つは、次世代のプロデューサーたちへの影響、特にKanye Westのキャリアに与えた決定的な影響である。

Rolling Stoneの2005年のリスト「The Immortals: The Greatest Artists of All Time」でのDr. Dreのプロファイルにおいて、Kanye Westは「Xxplosive」から「自分のサウンド全体を得た」と主張し、Jay-Zの楽曲「This Can’t Be Life」のプロダクションでドラムを直接コピーしたことを認めた。

「しかし、2001の『Xxplosive』から、私は自分のサウンド全体を得た—もしあなたがそのトラックを聞けば、それはソウルビートを持っているが、それはそれらの重いDreドラムで行われている。Jay-ZのDynastyアルバムのために私が作った『This Can’t Be Life』を聞いて、それから『Xxplosive』を聞いてみてほしい。それは直接的なバイトだ」と彼は記している。

「This Can’t Be Life」への直接的影響

Jay-Z feat. Beanie SigelとScarfaceの「This Can’t Be Life」は、Dr. DreとHittman feat. Kurupt、Six-Two、Nate Doggの「Xxplosive」をサンプルしている。このビートはHarold MelvinとBluenotesの1972年の楽曲「I Miss You」を中心に構築されている。ドラムはDr. Dreの1999年の楽曲「Xxplosive」からサンプリングされている。

楽曲の文化的遺産と影響

ヒップホッププロダクションへの長期的影響

「Xxplosive」は、ヒップホッププロダクションの進化において重要な節目となった。楽曲の「官能的で大気的な再構築」と「背骨を硬直させるトラップドラムリズム」の組み合わせは、後に数え切れないほどの楽曲によって模倣された。

次世代プロデューサーへの影響

Kanye West以外にも、多くのプロデューサーたちが「Xxplosive」からインスピレーションを受けている。楽曲が示した「ソウルサンプルと重いドラム」の組み合わせは、2000年代初頭のヒップホッププロダクションの主要なトレンドとなった。

アルバム「2001」における位置づけ

G-Funkサウンドの進化

2001はDreのデビューG-Funkサウンドの拡張を示し、暴力、犯罪、乱交、セックス、薬物使用、ストリートギャングなどのギャングスタラップのテーマを含んでいる。「Xxplosive」は、これらのテーマを洗練されたプロダクションと組み合わせた代表例として機能している。

プロダクションスタイルの革新

アルバムのプロダクションは「冷ややかなキーボードモチーフが腸を殴るベースラインの上を滑り、ストリングスとシンセが ミックスの内外を急降下し、うっとうしいほど馴染みのあるギターリックが内臓的な句読点を提供する」と描写され、「特許取得済みの地殻変動ファンクビートと悲しげな雰囲気」として評価された。

楽曲の商業的成功とラジオでの人気

非公式シングルとしての成功

「Xxplosive」は正式にシングルとしてリリースされなかったが、ラジオでの放送を受け、Hot R&B/Hip-Hop Singles & Tracksでチャートインした。これは楽曲の質とアピールの強さを証明している。

「Xxplosive」は公式シングルリリースを受けていないDreの別のカルトクラシックだが、とにかくアーバンラジオでユビキタスになった。

現代への影響と継続的なレガシー

サンプリング文化への貢献

「Xxplosive」は、現代のサンプリング文化において重要な位置を占めている。楽曲が確立したプロダクション手法は、現在に至るまで多くのプロデューサーたちによって研究され、応用され続けている。

ヒップホップ教育における重要性

楽曲は、ヒップホッププロデューサーを志す者たちにとって、必修科目とも言える存在となっている。Kanye Westのような成功したプロデューサーが公然と影響を認めていることからも、その教育的価値の高さがうかがえる。

スタジオでの制作エピソード

Royce da 5’9″の証言

Royce da 5’9″は当時の制作過程について「誰よりも早く『Xxplosive』を初めて聞くことを想像してみてほしい。私はEmが『Forgot About Dre』をやったときにそこにいた。私は彼らがビートを作ったときにそこにいた。あの楽曲が特別になることがわかっていた」と振り返っている。

まとめ

Dr. Dreの「Xxplosive」は、ヒップホップ史において単なる楽曲以上の意味を持つ作品である。複雑な制作過程、複数のアーティストとの幻のコラボレーション、そして何より次世代への決定的な影響力を考慮すると、この楽曲はウエストコーストヒップホップの完璧なる結晶として位置づけることができる。

Kanye Westが「自分のサウンド全体」を得たと公言するほどの影響力、多くのプロデューサーたちが模倣した革新的なプロダクション手法、そしてNate Doggの伝説的なパフォーマンスは、「Xxplosive」を時代を超越した傑作として確立させている。

正式なシングルとしてリリースされることはなかったにもかかわらず、アーバンラジオでの絶大な人気とプロデューサーたちへの教育的影響を通じて、この楽曲は現代ヒップホップの基礎を築いた重要な作品として、今後も語り継がれていくだろう。

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