BAD HOP – 4L feat. Bark, Benjazzy, C.O.S.A. & IO

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2024年2月9日にリリースされた「4L feat. Bark, Benjazzy, C.O.S.A. & IO」は、川崎を拠点としていた8人組ヒップホップ・クルーBAD HOPと、日本のHIPHOPシーンを代表するアーティストたちが一堂に会した記念すべき楽曲です。この楽曲は楽曲時間5分22秒という壮大なスケールで展開される、まさに日本語ラップシーンの新たなマイルストーンとして位置づけられています。

アーティスト紹介

BAD HOP(バッド・ホップ)

神奈川県川崎市を拠点に活動していた8人組ヒップホップ・クルーで、2014年に結成されました。グループ名の「BAD HOP」は、「イレギュラーバウンド」を表す野球用語で、メンバーのT-Pablow、YZERR、Yellow Patoが初めて出演した川崎のヒップホップイベントの名前に由来しています。

神奈川県川崎市出身の幼なじみを中心とし、双子であるT-PablowとYZERRを中心に、8人のラッパーで構成されていました。地元である川崎市南部の京浜工業地帯、池上町は「日本で一番空気が悪い場所」とも言われており、メンバーも幼少の頃から特異な環境の中で生活を送ってきました。

2018年には日本のヒップホップアーティストとして史上最年少で日本武道館ライブを実現し、2024年には東京ドームでの解散ライブでその歴史に幕を下ろしました。

客演アーティスト紹介

Bark(バーク)

BAD HOPのメンバーの一人で、1995年生まれ。保育園時代からT-pablowやYZERRと共に過ごしてきた幼馴染です。BAD HOPメンバーでは珍しく高校まで通っていましたが、徐々に荒れてしまい少年院送致の経験を持ちます。その後、ラップに出会い現在に至っています。

Benjazzy(ベンジャジー)

BAD HOPの重要なメンバーの一人で、グループの楽曲制作において重要な役割を果たしています。「ONE PAN」や「KAWASAKI SONG」など、BAD HOPの代表的な楽曲で印象的なバースを披露しており、その独特のフロウとリリックで多くのファンを魅了しています。

C.O.S.A.(コーサ)

1987年生まれ、愛知県知立市出身のラッパー・音楽プロデューサーです。MdMのクルーに所属し、2024年までのレーベルはSUMMITでした。2025年1月に独立しMoltisanti Musicを立ち上げています。

12歳で歌詞を書き始め、16歳から名古屋市のクラブで活動を開始。一度音楽から離れるも2013年に活動を再開し、本格化しました。2015年に自主アルバム「Chiryu-Yonkers」を発表し、これがクラシックと評されるほどの実力を証明しました。

警察官の父を持つという特殊な背景を持ちながら、地元愛に溢れたリリックと深いストーリーテリングで知られています。KID FRESINOとの共作「Somewhere」をはじめ、多くのアーティストとのコラボレーションでも話題を集めています。

IO(イオ)

1990年生まれ、東京都世田谷区出身のラッパーで、2023年まで活動していたKANDYTOWNの中心的メンバーでした。BCDMG所属で、ラッパーとしてだけでなく、アートディレクター、ビジュアルクリエーター、ファッションモデルなど多方面で才能を発揮しています。

2019年にはアルバム「Player’s Ballad.」をDef Jam Recordingsからリリースし、メジャーデビューを果たしました。2025年には自身のレーベル「VERETTA SOUNDS」を設立しています。

和光学園出身で、KANDYTOWNの中心人物だったYUSHIの影響でHIPHOPを知り、中学生の頃からラップを始めました。その洗練されたスタイルと多才な活動で、日本のHIPHOPシーンにおいて独特の存在感を放っています。

歌詞の一部引用解説

Hook / Bark

LIFE 限られてる中自由な未来
LOVE 尊重の上にある犠牲と信頼
LIVE 答えはあっても正解って奴は無い
LAUGH 結局全部笑う為の話

  • LIFE → 人生は限られている。だからこそ自分の未来を自由に描きたい。
  • LOVE → 本物の愛は尊重や信頼の上に、時には「犠牲」さえも伴う。
  • LIVE → 人生に「答え」はあっても「正解」はない=人それぞれの生き方がある。
  • LAUGH → 最後は笑うための物語。それが全て。

➡︎ 「人生・愛・生きる・笑う」4つのLをテーマに、哲学的にまとめているフック。


Verse / Bark

早く過ぎたけど長い 今が昔見た将来
ダチの子供面倒見たり 溢れてくる無性の愛

  • 時間はあっという間に過ぎたけど、振り返れば濃い日々。
  • 友達の子供の面倒を見る立場になり、昔と比べて人としての愛情や責任感が増したことを語る。

生まれ育った場所は詐欺に売春が普通だった環境
無くなってく心 優しさすらも邪魔な感情

  • 川崎という厳しい環境で育った背景。
  • 生き残るために「優しさ」を捨てざるを得なかった少年時代。

だから身に付けた奪った物より抜ける方法
おかげで強くなれた 過去に手を合わせて合掌

  • ただ奪うだけでなく、「抜け出す術」を学んだことが自分を強くした。
  • 今は過去に感謝して「合掌」できるまでになった。

➡︎ Barkは、自分のルーツを見つめながら、仲間との補い合い、過去を糧に今を生きる姿勢を語っている。


Verse / Benjazzy

夢も更新させねぇと 現実に越されそうに

  • 夢を更新し続けないと、現実に追い抜かれてしまう。
  • 成功していても歩みを止めればすぐに落ちる、という危機感。

自由が故の不自由さを 勝手に感じて落ちる所まで落ちる日に

  • 成功して自由を得た分、逆に「不自由さ」も生まれる。
  • 理由もなく落ち込む夜もある、と人間らしい弱さを吐露。

レコーディングしては心電図の様な波形見て生きてる実感得てる

  • 録音の波形が「心電図」のようで、音楽を作ることで「生きている証」を実感する。

他愛もない会話が100億円動く様なプロジェクトになった今でもMobb

  • 仲間との雑談が巨大なビジネスに繋がるまでになった。
  • それでも根っこは「Mobb(仲間集団)」のまま変わらない。

➡︎ Benjazzyは、自分のメンタルの浮き沈みを赤裸々に語りつつ、音楽と仲間が自分の生きる証明であることを強調している。


Verse / C.O.S.A.

money over bitch (woo)
歌詞のbest seller (uh)
赤い列車走る (c-city)

  • 「金より女」ではなく「金を優先する」ストリートマインド。
  • 自分の歌詞は「ベストセラー」となる。
  • 「赤い列車」=名古屋市の名鉄(C.O.S.A.の地元)。

地元の友達と東京ドーム 戦って来たんだろ bad hop

  • BAD HOPが東京ドームを目指したように、自分も地元の仲間と夢を現実にしてきた。

背負ってる番号 052 044

  • 052は名古屋市の市外局番、044は川崎市。
  • C.O.S.A.とBAD HOPの出身地を繋ぐコード。

➡︎ C.O.S.A.は、自身の地元カルチャーとBAD HOPの活動を重ねて「時代が変わった」と表現している。


Verse / IO

揺り籠から墓場の道半ば それぞれ何かの為張る体

  • 「from the cradle to the grave」=産まれてから死ぬまでの人生。
  • その途中で皆それぞれの理由のために頑張っている。

正しさが全てなら今の俺はいない

  • 社会の「正しさ」だけが基準なら、自分のような生き方は許されなかった。
  • 音楽を選んだこと自体が反逆だった。

間違えた時わかる本当の仲間

  • ミスした時にこそ「本当の仲間」が誰か分かる。

覚悟決めたら後はやるだけさ

  • 道は決まっている。後は迷わず突き進むだけ。

➡︎ IOは、人生の不確かさと、それでも自分の選んだ道を信じる覚悟を描いている。

楽曲の収録アルバム

「4L」は、BAD HOPの複数のアルバムに収録されています:

  1. BAD HOP (Deluxe Edition) – 2024年2月9日リリース
  2. BAD HOP FOREVER (ALL TIME BEST) – 2024年5月29日リリース

これらのアルバムは、BAD HOPの活動の集大成として制作され、「4L」はその中でも特に重要な位置を占めています。

楽曲の意義と影響

シーンの架け橋としての役割

「4L」は、川崎を拠点とするBAD HOPと、全国各地で活動する実力派アーティストたちが共演することで、日本のHIPHOPシーンの多様性と結束力を示した重要な楽曲です。

世代を超えた共演

C.O.S.A.(1987年生まれ)からIOまで、異なる世代のアーティストが参加することで、日本のHIPHOPシーンの層の厚さと継承性を表現しています。

地域性を超えた音楽

川崎(BAD HOP)、愛知(C.O.S.A.)、東京(IO)という異なる地域出身のアーティストが一つの楽曲で共演することで、日本のHIPHOPが地域を超えた文化として成熟していることを証明しています。

BAD HOPの解散と楽曲の位置づけ

2024年にBAD HOPは東京ドームでの解散ライブをもってその活動に幕を下ろしました。「4L」は、そのような状況下でリリースされた楽曲として、BAD HOPの最終章における重要な作品として位置づけられます。

グループの解散を前にして制作されたこの楽曲は、BAD HOPがこれまで築いてきた人間関係と音楽的な遺産を次世代に引き継ぐ象徴的な意味を持っています。

まとめ

「BAD HOP – 4L feat. Bark, Benjazzy, C.O.S.A. & IO」は、日本のHIPHOPシーンにおける歴史的な楽曲として記憶されるべき作品です。川崎の不良少年たちから始まったBAD HOPの物語と、全国各地で活動する実力派アーティストたちの才能が融合することで生まれたこの楽曲は、日本のHIPHOPが到達した一つの頂点を示しています。

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