はじめに
2013年にリリースされたAK-69の代表曲「START IT AGAIN」は、単なる楽曲を超えて、多くの人々の人生に影響を与え続けるアンセムとして愛され続けています。レーシングカーのメタファーを用いて「何度でもやり直すことができる」というメッセージを力強く歌ったこの楽曲は、リリースから12年が経った今でも色褪せることのない輝きを放っています。
楽曲の背景とリリース情報
アルバム「The Independent King」収録
「START IT AGAIN」は2013年1月にリリースされたAK-69の2年ぶりとなるオリジナル・フル・アルバム「The Independent King」に収録されました。このアルバムでは、THE GAME、Lloydなど著名アーティストを手掛けてきたKING DAVIDなど海外アーティストの楽曲も起用されており、AK-69の国際的な視野を示した作品となっています。
楽曲制作の経緯
この楽曲は2012年、AK-69がニューヨークで武者修行を行っていた際にレコーディングされました。興味深いことに、この時期に偶然ニューヨークのSOHOでAK-69を目撃していた当時中学生のYZERRとの運命的な出会いが、後に2025年のREMIXバージョンへと繋がっていくことになります。
楽曲のテーマと意味
イントロ・Verse 1:再始動のメタファー
履く Nike 外は雪 / 真っ白い息 挿せないkey / 消せない火 消す前に / そのエンジン修理開始
ここで描かれているのは「寒い冬のガレージで車を再び動かそうとする姿」。
実際の“車”を指すと同時に、一度止まりかけた自分の夢やキャリアを再び動かすことを意味しています。
「消せない火」とは情熱であり、どんな逆境でも完全には消えなかった炎を指しています。
いつの間にかしてた弁解 / 夢の在処に見えた限界
成功を目指す中で、言い訳をしていた自分や、夢の実現に壁を感じた過去を振り返っています。
しかし、そこで立ち止まらずに「またセルを回してエンジンをかける=挑戦を続ける」という決意を語っています。
◆Chorus(サビ):炎は消えない
一度燃え尽きようとも 再起不能でも / こいつの火は消えない
「燃え尽きた」「再起不能」というのは、キャリアの停滞や心の折れそうになった瞬間を意味します。
しかしそれでも、内に宿る炎は消えない。ここにAK-69の強烈な自己信念が表れています。
さあそのセルを回せ all right? / くだらねぇ意地を捨てたshow time
再出発に必要なのは、“くだらないプライド”を捨てること。
セルを回す=挑戦を始める合図であり、ショータイム=ステージへ再び立つ瞬間を象徴しています。
◆Verse 2:苦悩と栄光の記憶
忘れちゃねぇあの興奮 / 夢ん中であの日辿る / 覚めたくねぇあと5分
これは過去の栄光を思い出している場面。夢の中で味わった成功の感触を、現実にもう一度取り戻したい気持ちがにじんでいます。
でも開けるガレージ 夜中の零時 / 甦るあの頃のアベレージ / 火を入れろ きしむ V8
疲れても壊れても、再びガレージを開けて挑戦する姿勢。
「V8エンジン」は自分の魂や心臓であり、再び火を入れることで“レース=人生”を続けようとする姿勢を示しています。
◆Bridge:栄光と挫折の対比
負けなしの頃は 浴びる鳴り止まねぇ歓声 / 勝てなくなれば そうただの鉄くず それでも
全盛期には喝采を浴びても、勝てなくなれば忘れられてしまう。
それでも「I run forever」と歌うのは、勝敗や世間の評価に左右されず、自分の証を残すために走り続ける決意を意味します。
社会的インパクト
スポーツ界への影響
2014年9月23日には、親交のある野球選手谷繁元信が兼任監督に就任した中日ドラゴンズとの関係で、ナゴヤドームのグラウンドでライブを行い、同年のチームスローガンのヒントになった「START IT AGAIN」を披露しました。この出来事は、楽曲がプロスポーツの世界にも影響を与えた象徴的な瞬間として記憶されています。
アスリートからの支持
AK-69の楽曲は多くのアスリートから愛用されており、特に「START IT AGAIN」は挫折から立ち上がる力を与える楽曲として、様々なスポーツ選手の入場曲や応援歌として使用されています。
武道館ライブ「START IT AGAIN in BUDOKAN」
伝説の武道館公演
2022年4月23日、AK-69はソロラッパーとしては最多タイとなる5度目の日本武道館ライブ「START IT AGAIN in BUDOKAN」を開催しました。このライブは楽曲名を冠したタイトルで行われ、AK-69にとって初のセンターステージでの挑戦となりました。
豪華ゲスト陣
このライブにはAI, ANARCHY, ¥ellow Bucks, CITY-ACE, Xin, ちゃんみな, DJ RYOW, RIEHATA, Yo-Seaという豪華客演アーティストが出演し、まさにAK-69の人脈と影響力を示すライブとなりました。
楽曲の普遍的価値
自己啓発書としての楽曲
実際に、AK-69は2025年に楽曲と同タイトルの自伝的書籍「START IT AGAIN」を出版しており、「挑戦・失敗・再起を経て『何度でも立ち上がる』勇気をくれる一冊」として多くの読者から支持されています。
日本語ラップ史における位置づけ
社会的メッセージ性
「START IT AGAIN」は、日本語ラップの楽曲が単なるエンターテインメントを超えて、社会に対する強力なメッセージを発信できることを証明した作品です。楽曲がスポーツチームのスローガンになったり、多くの人々の人生の転機に影響を与えたりした事例は、音楽の持つ力を象徴しています。
アーティストの成長の軌跡
この楽曲は、AK-69というアーティストの成長の軌跡を示す重要なマイルストーンでもあります。2013年のオリジナル版から2025年のREMIXバージョンまで、12年間にわたって愛され続けていることは、真の名曲の証明とも言えるでしょう。
まとめ
AK-69の「START IT AGAIN」は、単なる楽曲を超えた文化的現象として日本の音楽史に刻まれています。レーシングカーのメタファーを通じて表現された「再起」のメッセージは、リリースから12年が経った今でも多くの人々に勇気と希望を与え続けています。
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