平和への願いを紡ぐ3人の才能 – LEX「WORLD PEACE (feat. OZworld & JP THE WAVY)」

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2020年8月26日、LEXの3rdアルバム『LiFE』の8曲目として収録された「WORLD PEACE (feat. OZworld & JP THE WAVY)」は、その普遍的なテーマと3人のアーティストが織りなす独特な世界観で、多くのリスナーに深い印象を与えた楽曲である。タイトルが示す通り「世界平和」という壮大なテーマを、18歳のLEXが心情を落とし込んで表現したこの作品は、コロナ禍という特殊な時代背景の中でリリースされたことも相まって、特別な意味を持つ楽曲として記憶されている。

楽曲の制作背景とアルバム『LiFE』での位置づけ

「WORLD PEACE」が収録されたアルバム『LiFE』は、LEXにとって重要な転換点となった作品である。このアルバムは、オンラインを駆使したリモート環境で多彩なアーティストと共作された記念すべき作品であり、JP THE WAVY、OZworld、MIYACHI、C.O.S.A.、ACE COOL、Fuji Taitoなど、様々な世代から個性豊かな15組のアーティストたちが参加している。

特に「WORLD PEACE」において、OZworldとJP THE WAVYという両者を客演に迎えたことは、単なる楽曲制作を超えた深い意味を持っている。この3人のコラボレーションは、それぞれ異なるバックグラウンドと音楽的アプローチを持つアーティストが、平和というテーマのもとに集結した象徴的な出来事でもあった。

アーティストたちの背景と音楽的個性

LEXは2002年生まれの神奈川県湘南出身のラッパーで、天性のメロウボイスと大胆なほどに攻撃的な楽曲でティーン世代から絶大な支持を集める存在である。SoundCloudから楽曲を発表し始め、2019年4月にアルバム「LEX DAY GAMES 4」を発表するとたちまち注目を集めた彼にとって、『LiFE』は音楽的成熟を示す重要な作品となった。

一方、JP THE WAVYは1993年12月15日生まれの神奈川県湘南出身で、2017年の「Cho Wavy De Gomenne」のバイラルヒットで一気に知名度を上げ、新ジャンルな音楽性とハイセンスなファッションで国内外問わず注目を集めるラッパーである。LEXと同じ湘南を拠点とする先輩として、この楽曲でも重要な役割を果たしている。

そしてOZworldは1997年11月17日生まれの沖縄県嘉手納町出身のラッパーで、独特の感性とトリッピーな世界観から飛び出すリリックと変幻自在のフロウを巧みに操る存在である。元々R’kuma(レオクマ)として活動していたが、2018年にOZworldに改名し、より独自のアーティスト性を追求している。

歌詞の深層分析と込められたメッセージ

楽曲の歌詞は「晴れの日も 雨の日も la la la la 歌えりゃ良いね 差別も 価値も いらないのにね」という冒頭から始まり、平和に対する純粋な願いが表現されている。この部分は、日常の中で感じる小さな幸せと、それを阻害する社会的な構造への疑問を同時に歌ったものである。

「luv my fans i love my men’s so la la la la i don’t need クーペ 皆 欲しいmoney why? 俺いらないや」という部分では、物質的な成功よりも人とのつながりや愛情を重視する価値観が示されている。これは従来のヒップホップが持つ物質主義的な側面を意識的に否定し、より本質的な豊かさを追求する姿勢を表している。

「We needed “4” real love 目を覚ます今 確かめる I & 愛 見るeyes No need to be afraid」の部分では、真実の愛の必要性と、現在の状況への覚醒を促すメッセージが込められている。恐れる必要がないという力強い宣言は、若い世代が抱く不安や迷いに対する励ましとしても機能している。

特に印象深いのは「どんだけ金があっても買えない信用ができるbestie 俺ら制限無い余計な事はしたくないな別に OZとWAVYとLEXY 濡れるneckと手首 なんだか世界が暗いな まるで嘘みたい」という部分で、ここには3人の友情と結束、そして現実世界への複雑な感情が表現されている。

音楽的構成とプロダクションの特徴

「WORLD PEACE」の音楽的な特徴として、3人の異なる声質とフロウが絶妙に配置されていることが挙げられる。LEXの作詞・作曲による楽曲に、JP THE WAVYとOZworldそれぞれの個性が自然に融合している構成は、楽曲全体の統一感を保ちながらも各アーティストの特色を活かしている。

サウンド面では、前作『!!!』に引き続きKMがボーカルのミックスやマスタリングで貢献しており、3人の声の特徴を最大限に活かすプロダクションが施されている。特に「la la la la」というコーラス部分では、平和への願いが込められたメロディラインが印象的に配置されている。

ミュージックビデオの映像的表現

2020年10月21日に公開されたミュージックビデオは、これまでにLEXの「ALIEN」や「HAPPY (feat. Young Dalu)」のMVも手がけているNasty Men$ahが監督を務めている。このビデオは、アルバム『LiFE』から4本目となる映像作品として制作された。

映像では、楽曲のテーマである平和への願いを視覚的に表現しており、3人のアーティストがそれぞれの個性を活かしながら統一された世界観の中で表現されている。Nasty Men$ahの映像センスとアーティストたちの表現力が組み合わさることで、楽曲のメッセージをより深く伝える映像作品となっている。

時代背景とコロナ禍での意味

「WORLD PEACE」がリリースされた2020年は、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中が混乱に陥った年であった。LEXの「STAR TOUR 2020」も多くの公演をソールドアウトさせていたにも関わらず、COVID-19の影響でツアーが中止となるなど、音楽業界全体が大きな困難に直面していた。

そのような状況の中で制作された「WORLD PEACE」は、文字通り世界平和への願いを歌った楽曲として、特別な重みを持って受け取られた。リモート環境での制作という制約の中でも、3人のアーティストが結束してメッセージを発信したことは、音楽の持つ結束力と希望を伝える力を示している。

3人の音楽的化学反応と相互作用

LEX、JP THE WAVY、OZworldという3人の組み合わせは、それぞれの音楽的バックグラウンドの違いが生み出す化学反応という点でも興味深い。LEXの等身大の感情表現、JP THE WAVYの洗練されたメロディーセンス、OZworldの独特な世界観とフロウが組み合わさることで、単独では表現できない豊かな音楽的表現が実現されている。

特にOZworldは独特のニュアンスで繰り出すフロウやスキルフルなラップで世界中にファンを持つアーティストであり、JP THE WAVYは新ジャンルな音楽性で国内外から注目される存在である。この2人がLEXの楽曲に参加することで、楽曲の表現力と訴求力が大幅に向上している。

日本のヒップホップシーンにおける意義

「WORLD PEACE」は、日本のヒップホップシーンにおいて世代を超えたコラボレーションの重要性を示す作品としても評価できる。18歳のLEXが主導し、異なる地域出身の先輩アーティストたちと対等に音楽を作り上げたことは、従来のヒエラルキーや地域性を超えた新しいクリエイティブな関係性の可能性を示している。

また、平和というテーマを選択したことも重要である。従来のヒップホップが扱ってきた成功、お金、名声といったテーマから一歩踏み出し、より普遍的で本質的なテーマに取り組んだことは、日本のヒップホップの表現領域を拡張する試みとして評価できる。

楽曲の持続的影響と評価

リリースから数年が経過した現在でも、「WORLD PEACE」は多くのファンに愛され続けている。その理由は、楽曲の持つ普遍性とメッセージの力強さにある。平和への願いという永遠のテーマを、若いアーティストたちの等身大の表現で歌い上げたことで、世代を超えて響く作品となった。

また、この楽曲をきっかけとして3人のアーティスト間の関係性も深まり、その後もさまざまなコラボレーションが生まれている。OZworldのアルバム「SUN NO KUNI」にも「VOiCE feat. JP THE WAVY」として両者の共演が実現するなど、継続的な創作関係が築かれている。

現代的な平和観の提示

「WORLD PEACE」が特筆すべき点は、従来の反戦歌や平和を訴える楽曲とは異なるアプローチを取っていることである。政治的なメッセージや説教臭さを排除し、日常的な幸せや人とのつながりの中に平和の本質を見出そうとする姿勢は、現代の若い世代の平和観を反映している。

「Every time now まぶたの裏 答えはいまここなう縛られない 俺ら遊ぶ 地球 超 beautiful」という歌詞に表れているように、平和とは遠いどこかにあるものではなく、今ここにある美しさを認識し、自由に生きることの中にあるという現代的な平和観が提示されている。

まとめ:音楽が持つ結束と希望の力

LEX「WORLD PEACE (feat. OZworld & JP THE WAVY)」は、単なるコラボレーション楽曲を超えて、音楽が持つ結束力と希望を伝える力を体現した作品である。2020年という困難な時代の中で、3人の若いアーティストが平和への願いを歌い上げたことは、音楽の持つ社会的な意義を改めて示している。

楽曲の普遍性、アーティスト間の化学反応、時代背景との相関、そして現代的な平和観の提示という複数の要素が組み合わさることで、この楽曲は日本のヒップホップシーンにおける重要な作品として位置づけられている。LEX、JP THE WAVY、OZworldという3人の才能が結集したこの楽曲は、音楽を通じて平和への願いを共有することの重要性を、聴く者の心に深く刻み込んでいる。

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