はじめに:アルバム「トウカイXテイオー」を締めくくる傑作
TOKONA-Xの「Do U Want it again ~OUTRO~ feat. Ia」は、彼の代表作「トウカイXテイオー」アルバムの最終トラック(16曲目)として収録されている名曲です。アルバムの締めくくりとして相応しい壮大なアウトロであり、TOKONA-Xの才能が遺憾なく発揮された楽曲として、今なお多くのファンに愛されています。
この曲は、アルバム全体を通して披露されたTOKONA-Xの多彩な音楽性を集大成として凝縮した作品で、彼の独特のフロウとリリックセンスが光ります。イントロから続くメロディアスな展開と、フィーチャリングアーティストIaとの絶妙な調和が特徴的です。
楽曲の特徴:洗練されたビートと強烈なフロウ

「Do U Want it again ~OUTRO~ feat. Ia」の最大の魅力は、そのリラックスした雰囲気と同時に漂う力強さにあります。曲はゆったりとしたテンポで始まり、TOKONA-Xの特徴的なローテンションながらも説得力のあるラップが展開されます。バックトラックには、西海岸G-Funkの影響を感じさせるシンセサイザーのメロディラインとゆったりとしたドラムパターンが使用されており、90年代のヒップホップへのオマージュが感じられます。
後半に進むにつれて曲調は徐々に変化し、Iaのコーラスが加わることで、楽曲全体に不思議な浮遊感と叙情性が加わります。エレクトロニカの要素も取り入れたこの曲は、当時の日本のヒップホップシーンでは革新的な試みであり、ジャンルの壁を超えた音楽性が高く評価されています。
リリックの内容は、TOKONA-Xが得意とする都市生活や人間関係についての洞察に満ちており、時に直接的で、時に暗喩に富んだ表現が織り交ぜられています。特に印象的なのは、曲名の「Do U Want it again」(もう一度欲しいか)というフレーズが繰り返される部分で、リスナーに問いかけるような形で楽曲が展開していきます。
アルバム「トウカイXテイオー」における位置づけ
「トウカイXテイオー」は、TOKONA-Xが2004年にリリースした唯一のソロアルバムであり、日本のヒップホップシーンに大きな衝撃を与えました。このアルバムには全16曲が収録されており、「Do U Want it again ~OUTRO~ feat. Ia」はその締めくくりとして配置されています。
アルバム内の他の楽曲には「They Want T-X ~INTRO~」「Nexxxt Big Thing」「HOW We Roll ~who tha finest. who tha biggest~ feat. DABO, BIGZAM, Mr. OZ」「Let Me Know ya. feat. Kalassy Nikoff」「New York New York」「Where’s my hood at? feat. MACCHO」などがあり、多彩なゲストアーティストとのコラボレーションも特徴となっています。
「Do U Want it again ~OUTRO~ feat. Ia」は、アルバム全体を通して展開されてきたTOKONA-Xの音楽性とメッセージを、最後に集約し昇華させる役割を担っています。アウトロという位置づけながらも、単なる締めくくりではなく、一つの完成された楽曲として強い存在感を放っています。
TOKONA-X:日本ヒップホップシーンの伝説
TOKONA-X(本名:古川竜一)は、横浜市神奈川県出身の日本人ラッパーで、後に愛知県の常滑市(Tokoname)に移住しました。実は彼の芸名「TOKONA-X」は、この常滑市の名前に由来しており、「トコナ」と「X(メ)」を組み合わせたものです。
彼は若い頃からレコード店でアルバイトをしながら、様々な日本と米国のヒップホップ音楽に触れ、1996年に「ILLMARIACHI」という名前で音楽シーンにデビューしました。その後「Master of Skillz」というグループに加入し、2002年には同グループは「M.O.S.A.D.」と改名します。
2003年、彼はDef Jam Japanと契約を結び、2004年1月14日に初のシングル「Let Me know and tell you SHOW」をリリース。その2週間後にはファーストアルバム「トウカイXテイオー」をリリースし、日本のヒップホップシーンで大きな注目を集めました。しかし、同年11月22日、このアルバムがヒットした数ヶ月後に、TOKONA-Xは26歳の若さで急逝してしまいます。
TOKONA-Xは、独特の声と個性的なMCスタイルで知られ、セックス、ドラッグ、ロックンロールをテーマにした作風は、当時の日本の他のラッパーとは一線を画するものでした。特に西日本や名古屋地域からの人気ラッパーが少なかった時代に、彼の存在は大きな意味を持っていました。
「Do U Want it again ~OUTRO~ feat. Ia」の現代における評価
TOKONA-Xの死後も、この曲は日本のヒップホップファンの間で高い評価を受け続けています。特に注目すべきは、この曲がリリースされてから約20年近く経った現在でも、その魅力が色あせることなく、むしろ時間を経るごとに新たな価値が見出されていることです。
音楽制作面での先進性はもちろんのこと、TOKONA-Xのラップスタイル自体が、今なお多くの若手ラッパーたちにインスピレーションを与え続けています。「Do U Want it again ~OUTRO~ feat. Ia」は、単なるアウトロトラックという枠を超え、日本のヒップホップ史に残る重要な一曲として認識されるようになりました。
また、近年のヒップホップとエレクトロニカの融合という流れを先取りしていた点でも、この曲は再評価されています。Iaとのコラボレーションという形式も、異なるジャンルやアーティスト間の架け橋となり、日本の音楽シーンにおいて新たな可能性を示したと言えるでしょう。
まとめ:日本ヒップホップ史に残る名曲
「Do U Want it again ~OUTRO~ feat. Ia」は、TOKONA-Xの音楽的才能と先見性が結実した傑作です。アルバム「トウカイXテイオー」の締めくくりとして相応しい深みと広がりを持ち、彼の遺した数少ない作品の中でも特に印象的な一曲となっています。
ヒップホップの基本要素を忠実に守りながらも、新たな音楽的可能性に挑戦したこの楽曲は、TOKONA-Xの短くも濃密な音楽キャリアを象徴するものと言えるでしょう。彼の急逝から約20年が経った今なお、この曲は多くのリスナーの心を捉え続けています。
KAZUNリスナーの皆さんにも、日本ヒップホップ史に残るこの名曲をぜひ体験していただきたいと思います。TOKONA-Xの独特の世界観と、彼が遺した音楽的遺産の豊かさを感じ取っていただければ幸いです。
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